新型コロナの影響の響き、世界各地で新車販売が大幅減、2856億円の最終赤字
日産自動車が7月28日発表した2021年3月期第1四半期(4~6月期)連結決算(日本基準)は、2856億円の最終赤字(前年同期64億円の黒字)となった。新型コロナウイルス感染症の影響で全需が大きく減少し、同社の販売台数が半減(中国除く)したことなどが響いた。同時に発表した2020年度通期業績見通しは営業損益4700億円、当期純損益6700億円それぞれの赤字を見込んでいる。(佃モビリティ総研・松下次男)
オンラインで決算発表会見した内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は中期計画の日産ネクストで示した固定費の削減など「妥協することなく事業改革に取り組む」ことで再生は十分に可能と強調。今年度はコロナ対策の在庫削減などに注力し、来期以降の回復に備えるとした。
新型コロナの影響で傷んだマーケットについては、徐々に回復し、「第4四半期には前年を上回るだろう」との見方を示した。ただし、市場回復には地域差があり、それぞれ「地域ごとに対応が求められるだろう」とし、とくに欧米の回復が鈍いのに懸念を示した。
生産状況については、急回復した中国を除くと、全般に低い稼働率にとどまった。6月からは回復に向かい、米国工場では6割前後の稼働率まで高まったが、欧州では6月も約20%の稼働率という。
販売店への来店も6割前後とまだ十分に戻っていないが、新型コロナ感染症に伴ってニューノーマルが叫ばれる中、オンラインによる販売が増えていることに言及。直近では、デジタルで新車を購入する比率が11%に高まったことを明らかにした。
米国を中心に拡販を目指さず、事業構造改革に注力。固定費削減も着実に進める
2020年度第1四半期の連結業績は売上高が1兆1742億円で前年同期比50・5%の減収、営業損益が1539億円(前年同期16億円の黒字)の赤字だった。すべての市場で販売台数が激減したのが響いた。
第1四半期のグローバル全需は前年同期に比べ44・5%減の落ち込み。これに対し、同社の販売台数は64万3千台と同47・7%減となった。中国を除けば、同50・8%減と前年実績から半減した。
地域別にみると、日本が8万4千台で同33・7%減、北米が22万2千台で同50・8%減、中国が20万7千台で同39・9%減、欧州が5万4千台で同60・1%減、その他市場が7万7千台で同55・9%減となった。
これについて「日本と中国は市場の伸びを上回ったが、その他は市場の伸びを下回った」と分析。その理由について、拡販を目指すのではなく「販売適正化」など米国を中心に事業構造改革に取り組みに力を入れていることを要因に掲げた。
また、固定費削減についても着実に進行しているとし、「これがなければ赤字幅はさらに膨らんでいた」と述べた。財務面でも販売台数減で厳しさが増している。前期の第1四半期末は1兆円超あったネットキャッシュ(自動車事業)が今第1四半期末は2352億円にまで減少した。
課題は、今季を乗り越えて来期以降の黒字回復にどうつなげるかにある
これについて「サプライヤーなどの支払いために減少した」と述べたうえで、生産台数が高まれば回復するとの見通しを示した。また、新型コロナ対策でも資金調達しており、手元資金は確保済みと強調。未使用コミットメントラインが約1・9兆円(2020年6月末時点)に達するなど、資金繰りに問題はないとの見方を示した。
同時に発表した2020年度の通期業績見通しは、売上高7兆8000億円(前期9兆8789億円)を予想。営業利益、当期純利益も前期に続き2期連続の赤字を見込む。販売台数は、新型コロナの感染拡大に伴う第2波の到来がないことを前提に、412万5千台と前期比16・3%減を予想。
主要地域別にみると、日本52万台で同2・7%減、北米123万5千台で同23・8%減、中国147万5千台で同4・6%減、欧州40万台で同23・2%減を見込む。
課題は、今季を乗り越えて来期以降の黒字回復にどうつなげるかだが、内田社長は「生産能力を最適化し、3000億円の固定費削減を着実に実施する。18か月以内に12車種を投入することで、平均車齢が4年になれば収益力が格段に高まる」と強調。売上高営業利益率を22年度末に2%、23年度末に5%を達成するのは十分可能との見方を示した。