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2020年5月28日【トピックス】

日産自動車、2020年3月期連結決算/事業構造改善計画

松下次男

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11期ぶりに最終赤字、拡大路線失敗や新型コロナの感染拡大が響く

 

 日産自動車は5月28日、オンラインによる2020年3月期連結決算(日本基準)および2020-2023年度事業構造改善計画発表会見を開いた。20年3月期の連結業績では、これまでの拡大路線の失敗や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、最終損益が11年ぶりに赤字に転落した。これを踏まえ、グローバル生産能力を20%削減し年間540万台体制とするなどの事業構造改善計画を策定、事業再生に乗り出す方針を表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

 内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は事業構造改善計画発表に当たり「従来の拡大路線の失敗を認め、正しい軌道へと修正する。2年間で戦略的な対策を終了し、着実な成長を取り戻す」と強調した。具体的な数値目標として2023年度末に売上高営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルを達成することを掲げた。

 

 事業構造改善計画の柱となるのが「最適化」と「選択と集中」だ。最適化では、インドネシア工場を閉鎖、スペイン・バルセロナ工場を閉鎖に向けて準備を進めることなどにより、グローバルの生産能力を通常シフトで年間540万台体制にスリム化する。欧州の生産は英国、ASEAN(東南アジア諸国連合)の生産はタイに集約する。

 

事業構造改善計画では、インドネシア工場とバルセロナ工場の閉鎖で生産体制をスリム化

 

 内田社長は拡大路線で「グローバルの生産能力が年間720万台に膨らんでいたが、実際の販売は500万台強」と述べ、需給のバランスが崩れていたことを収益悪化の要因の一つに掲げた。

 

 グローバルの商品ラインナップもスリム化。現在の66車種を55車種に減らす。前日のルノー、日産、三菱自動車の3社合同のアライアンスの中期計画に沿って、パートナとリソースをシェアし、コスト削減、効率向上を目指す方針を示した。
 これらにより固定費を3000億円削減する。ただし、需要が拡大すれば、「600万台可能な生産体制だ」とした。

 

 「選択と集中」では、コアマーケットを日本、中国、北米に集中する。韓国マーケットやロシアのダットサン事業から撤退し、ASEAN地域の一部事業も縮小する。
 商品展開では、C、Dセグメント、電気自動車(EV)、スポーツカーをグローバルなコアセグメントとして集中投資する。

 

 

日本はEV・e‐パワー搭載車を追加、販売に占める電動化比率を60%以上へ

 

 一方で、これまで手薄だった新型車については投入を積極化する方針。今後18ヵ月で12の新型車を投入し、うちモーターショーに参考出品した「アリア」を主力車種として展開するという。日本でもEV2車種、「e‐パワー」搭載車4車種を追加し、販売に占める電動化比率を60%以上に高める。

 

 ルノーなどとのアライアンスについて内田社長は、新型コロナ感染症の影響が広がる有事の中だからこそ「活用し、それぞれ成長軌道に戻すことが重要という考えで一致している。各社の得意分野でないところがカバーできる」と強調し、推進する考えを示した。
 共通化部分をプラットフォームからボディにまで広げる取り組みでは「例えば、ドアを共通化することでコスト削減できる。ただ、(姉妹車などのような)バッジを変えることは考えていない」と述べた。

 

 2019年度の連結業績は売上高が9兆8789億円で前期比14・6%の減収。営業損失が405億円、当期純損失が6712億円それぞれの赤字となった。当期純損失には構造改善費用および減損損失分の6030億円を含む。

 

21年3月期の業績見通しはコロナ禍の影響が精査できずに公表見送りへ

 

 グローバル販売台数は493万台と前年度比10・6%減となった。中国はほぼ前期並みの154万7千台だったが、日本、北米、欧州では二けた台の落ち込み幅となった。
 日本は53万4千台で前年度比10・3%減、北米は162万台で同14・6%減、欧州は52万1千台で同19・1%減、その他市場が70万8千台で同13・1%減の実績。

 

 世界的な新型コロナの感染拡大により、懸念となっている資金調達などの流動性については、現状、自動車事業手元資金が1兆4946億円、自動車事業ネットキャッシュが1兆646億円のほか、未使用コミットメントラインが約1・3兆円となっている説明。また、新型コロナウイルス感染症対策資金として4~5月に7126億円を調達したとして、当面「問題ない」とした。

 

 2021年3月期の業績見通しについては、新型コロナの感染拡大の影響により全体需要が前年比15~20%減少すると予想しているものの、事業に及ぼす影響が十分に精査できていないとして公表を見送った。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。