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2019年7月25日【政治経済】

【詳報】日産自動車、事業改革。規模追求を変更し、収益重視へ

松下次男

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2022年度までに14拠点で生産ラインを停止し、1万2500人を削減。生産能力を660万台レベルへ

 

 日産自動車の西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)は7 月25 日、2019年度第1四半期(4~6月)決算発表にあわせ横浜市の本社で記者会見し、リストラ策を中心にした2022年度までの事業改革を公表した。

 柱となるのがゴーン元会長が進めてきた規模の追求から決別し、事業および投資効率の適正化を図ること。具体的には、海外工場を中心に14拠点で生産ラインを停止し、人員を1万2500人削減。グローバルの生産能力を2018年度の720万台から2022年度660万台へ縮小し、稼働率を69%から86%の水準へ高める。これら不採算事業を選択することにより、「2~3年で適正な事業収支が達成できるかたちに戻す」と述べた。

 

 

 公表した事業改革は2019年3月期決算発表時に表明していた2022年度までの中期計画見直しの実行版だ。当初の拡大路線を見直し、2022年度末までに売上高営業利益率、6%台(当初計画8%。2019年度見通しは3%)を達成するための最適な事業配置プラン。売上高(中国合弁会社比例連結ベース)も当初計画の16・5兆円から14・5兆円(2019年度見通し13兆円)へ引き下げ、安定的な収益性を確保できる事業基盤の再構築を目指す。

 

 そのための具体的な施策となるのが「事業及び投資効率の適正化」と米国事業のリカバリーを中心にした「着実な成長」。西川社長は「事業及び投資効率の適正化で3000億円、着実な成長で1800億円それぞれ利益を上積みし、2022年度8700億円(2019年度見通し3900億円)の営業利益を目指す」考えを示した。

 このうち、事業及び投資効率の適正化については「9割方めどがついている」と述べ、生産ライン削減などの取り組みと説明した。具体的には、2018~2019年度8拠点で生産ラインを停止し、6400人を削減。さらに2020年度から2022年度の間に追加で6拠点で生産ラインを停止し、6100人を削減する計画だ。

 

 

構造改革に伴う人員削減は、2022年度までに世界の14拠点で計1万2500人。国内では福岡、栃木両県の工場の計880人が対象となる見込みであるとしている。

構造改革に伴う人員削減は、2022年度までに世界の14拠点で計1万2500人。国内では福岡、栃木両県の工場の計880人が対象となる見込みであるとしている。

 

2019年度第1四半期連結決算は営業利益が98・5%減、しかし、2~4Qで挽回可能と表明

 

 生産ライン削減は、新興国向けの「ダットサン」ブランド、小型車の生産工場で、これらはゴーン元会長が拡販戦略として進めた中期計画「パワー88」で投資した海外拠点が主体とした。この中には、一つの生産ライン停止だけでなく、一部は2ライン停止し「工場全体に及ぶ」ところもあるという。一例として「インドネシアやスペインの工場で1ラインを停止している」ことを掲げた。

 

 また、不採算商品を打ち切り、2022年度までにモデル数を2018年度比で10%以上削減する。2022年度のグローバル販売台数は600万台(2019年度見通し550万台)を計画する。
 着実な成長では、米国事業のリカバリーが主体になるとし、増販を目標にしたフリートから利益重視のリテールへと販売方法を切り替え、収益性を高める。西川社長は「今年度ピュアなリテールの販売台数を10万台ふやす」とし、これにより総販売台数が増えなくても高い収益性を実現する。これにより米国事業の利益率6%台を目指したいとした。

 このほか、着実な成長では「ニッサン インテリジェント モビリティ」を軸にした新商品、新技術の推進を掲げた。
 自らの責任問題について、西川社長は今回の「事業改革を計画し、責任がある」と当面、推移を見守る意向を示した。一方で、ブランド価値向上などの積み残された課題やCASEへの対応については「若い次の世代に委ねたい」と述べ、経営をバトンタッチする考えを示唆した。具体的に「新たに動き出した委員会で決めることになるだろう」とした。

 

 2019年度第1四半期連結決算は需要の低迷や販売正常化に向けた取り組みの継続などから営業利益が16億円と前年同期比98・5%減の大幅な減益となった。当期純利益は64億円で同94・5減。売上高は2兆3724億円で前年同期比12・7減となった。西川社長は第1四半期決算について「当初から厳しい見通しをしていたが、想定よりさらに下振れした」とた一方で、構造改革は着実に進んでおり「第2四半期以降、挽回は可能だ」と述べた。(佃モビリティ総研・松下 次男)

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。