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2019年5月2日【トピックス】

日産、新型軽自動車「ディズ」にプロパイロットを初搭載

松下次男

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 日産自動車は、直近の体力測定で国内販売59万台・2%増となったものの、北米144万台・9%減を筆頭に欧州64万台・15%減と、2018年度の世界市場は、前年度比4.6%減・552万2548台となり6年ぶりに販売減となっている。

 

 

但しこの数値は、単純に事業上の販売力減少を示しているというより、同社を含め多くの日系自動車メーカー各社が、これまでの販売増をテコに収益を計上するという戦略から、やみくもに台数を追わずに1台当たりの利益を確保する「量から質の向上」への転換を急いでいるためである。

 

そして日産は、この戦略を現時点で好調の国内市場でも浸透させたい意向のようだ。

 

 このため同社は、三菱自工の合弁会社NMKVが開発し、かつて三菱重工の水島航空機製作所として発足した水島製作所で製造を担う新型デイズに於いて、自動車用変速機大手のジヤトコに依頼して初めて軽自動車に開発特化させた無段変速機「Jatco CVT-S」を搭載。軽自動車の特性に合わせて、燃費の大幅改善を狙う戦略を打ち出した。

 

 

このJatco CVT-Sは燃費改善効果を大きく加速させるため、従来タイプの変速機から重量をおよそ6%(約4.2キログラム)減らした他、摩擦抵抗を約8%低減させ、軽自動車市場での日産の技術力の高さをアピールする。

 

またそもそもこの結果から生まれた新型ディズは、主要部品の9割を確保する倉敷市や総社市を含む水島製作所を取り巻く地域全体の体力を維持すること。さらに自動車メーカーとして自らの将来戦略を確かなものとしていくためにも欠かせない鍵のひとつでもあるのだろう。

 

それゆえにセレナやリーフで定評を得たプロパイロットを、今回遂にディズへも投入した。これはとりもなおさず「先進技術」を掲げる同社の事業戦略が、軽自動車セグメントでもようやく一貫化されたことを表している。

 

 

 そんな軽ハイトワゴンの新型デイズは実に6年ぶりのフルモデルチェンジを果たした訳だが、先の通り、前モデルと大きく異なるのは開発主体が三菱自動車から日産へと全面的に移行したことにある。

 

これに伴い、プラットフォーム、パワートレインの一新だけでなく、日産の自動運転技術の一つであるプロパイロットを初めて軽自動車に搭載した。実際に高速道路を走行してみると、システムが作動し、同機能搭載の登録車と遜色のない安定した走行性能を発揮する。

 

 

 同車の発売は一昨月の3月28日。日産と三菱自動車の軽自動車企画合弁会社会社NMKVがマネジメントし、日産が初めて初期段階から開発を手掛けた軽自動車である。このため、日産が持つ技術をふんだんに軽自動車に投入し、軽初搭載という多彩な機能、システムが目立つ。

 

パワートレインでは、ハイウェイスターに搭載したスマートシンプルハイブリッドも注目される新機能のひとつだ。これはセレナなどの登録車にも既に採用されているシステムではあるのだが、今回の軽自動車への搭載にあたり、モーターを小型化するとともに、電池を従来の鉛からリチウムイオン電池へと変更した。

 

 

これにより新開発CVTと併せ、動力性能を進化させると共に、燃費向上との両立を図った。この結果、出力を同等にしながら、回生エネルギーで約2倍、モーターアシスト時間で約10倍の性能アップを実現した。

 

試乗でハイウェイスターのGターボとXグレードを体験したが、特にGターボについてはスタート時や高速走行での追い越しに際し、加速は申し分なく、力強さを発揮した。Xについても、スムーズな走行性能ではあったが、ターボ付き車のあとに試乗した分、加速性能などに差を感じた。

 

 

 一新されたプラットフォームでは、広い室内空間が印象的だ。旧型デイズに比べて、ホイールベースを65ミリメートル伸ばしており、フーガ並みの後席を確保。

 

大人がゆったり座れる、スペースを保つ。踏みやすいペダル、操作しやすいシフトレバー、さらに前席周りの収納スペースにも工夫を凝らす。足回り部品、ショックアブソーバーの角度、剛性などの機能面でも細部から改良されている。

 

このほか、新型デイズでは「プロパイロット」をはじめ、「インテリジェント・エマージェンシーブレーキ」、「踏み間違い衝突防止アシスト」、意図せず走行車線を逸脱しそうな場合に警報でドライバーの注意を喚起する「インテリジェントLI & LDW」、軽自動車初の「SOSコール」などの先進、運転支援機能を搭載する。

 

 

 実際に、高速道路を走行してみると、アクセルとブレーキ、ハンドルの操作をアシストしてくれる運転支援機能のひとつであるプロパイロットが働いているのよくわかる。パワートレインの動力性能と相まって、長時間の高速道路走行や渋滞時の負担軽減に役立つ。プロパイロットはこれまでにセレナ、日産リーフ、エクストレイルなどに搭載されている先進機能だ。

 

新型デイズは発売から約1か月になるが、ユーザーの評判は良く、とくにプロパイロット搭載車への関心が高い。日産自動車の日本マーケティング部によると、プロパイロットはハイウェイスター以上のグレードに搭載されているが、受注の7割が同グレードで、そのうちの半数がプロパイロット搭載車という。

 

販売目標の月間8000台に対し、受注残が1万台を超える。軽自動車の主力市場であるハイトワゴン分野にインパクトを与える一車種といえるだろう。(佃モビリティ総研・松下次男)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。