日産自動車は、直近の体力測定で国内販売59万台・2%増となったものの、北米144万台・9%減を筆頭に欧州64万台・15%減と、2018年度の世界市場は、前年度比4.6%減・552万2548台となり6年ぶりに販売減となっている。
但しこの数値は、単純に事業上の販売力減少を示しているというより、同社を含め多くの日系自動車メーカー各社が、これまでの販売増をテコに収益を計上するという戦略から、やみくもに台数を追わずに1台当たりの利益を確保する「量から質の向上」への転換を急いでいるためである。
そして日産は、この戦略を現時点で好調の国内市場でも浸透させたい意向のようだ。
このため同社は、三菱自工の合弁会社NMKVが開発し、かつて三菱重工の水島航空機製作所として発足した水島製作所で製造を担う新型デイズに於いて、自動車用変速機大手のジヤトコに依頼して初めて軽自動車に開発特化させた無段変速機「Jatco CVT-S」を搭載。軽自動車の特性に合わせて、燃費の大幅改善を狙う戦略を打ち出した。
このJatco CVT-Sは燃費改善効果を大きく加速させるため、従来タイプの変速機から重量をおよそ6%(約4.2キログラム)減らした他、摩擦抵抗を約8%低減させ、軽自動車市場での日産の技術力の高さをアピールする。
またそもそもこの結果から生まれた新型ディズは、主要部品の9割を確保する倉敷市や総社市を含む水島製作所を取り巻く地域全体の体力を維持すること。さらに自動車メーカーとして自らの将来戦略を確かなものとしていくためにも欠かせない鍵のひとつでもあるのだろう。
それゆえにセレナやリーフで定評を得たプロパイロットを、今回遂にディズへも投入した。これはとりもなおさず「先進技術」を掲げる同社の事業戦略が、軽自動車セグメントでもようやく一貫化されたことを表している。
そんな軽ハイトワゴンの新型デイズは実に6年ぶりのフルモデルチェンジを果たした訳だが、先の通り、前モデルと大きく異なるのは開発主体が三菱自動車から日産へと全面的に移行したことにある。
これに伴い、プラットフォーム、パワートレインの一新だけでなく、日産の自動運転技術の一つであるプロパイロットを初めて軽自動車に搭載した。実際に高速道路を走行してみると、システムが作動し、同機能搭載の登録車と遜色のない安定した走行性能を発揮する。
同車の発売は一昨月の3月28日。日産と三菱自動車の軽自動車企画合弁会社会社NMKVがマネジメントし、日産が初めて初期段階から開発を手掛けた軽自動車である。このため、日産が持つ技術をふんだんに軽自動車に投入し、軽初搭載という多彩な機能、システムが目立つ。
パワートレインでは、ハイウェイスターに搭載したスマートシンプルハイブリッドも注目される新機能のひとつだ。これはセレナなどの登録車にも既に採用されているシステムではあるのだが、今回の軽自動車への搭載にあたり、モーターを小型化するとともに、電池を従来の鉛からリチウムイオン電池へと変更した。
これにより新開発CVTと併せ、動力性能を進化させると共に、燃費向上との両立を図った。この結果、出力を同等にしながら、回生エネルギーで約2倍、モーターアシスト時間で約10倍の性能アップを実現した。
試乗でハイウェイスターのGターボとXグレードを体験したが、特にGターボについてはスタート時や高速走行での追い越しに際し、加速は申し分なく、力強さを発揮した。Xについても、スムーズな走行性能ではあったが、ターボ付き車のあとに試乗した分、加速性能などに差を感じた。
一新されたプラットフォームでは、広い室内空間が印象的だ。旧型デイズに比べて、ホイールベースを65ミリメートル伸ばしており、フーガ並みの後席を確保。
大人がゆったり座れる、スペースを保つ。踏みやすいペダル、操作しやすいシフトレバー、さらに前席周りの収納スペースにも工夫を凝らす。足回り部品、ショックアブソーバーの角度、剛性などの機能面でも細部から改良されている。
このほか、新型デイズでは「プロパイロット」をはじめ、「インテリジェント・エマージェンシーブレーキ」、「踏み間違い衝突防止アシスト」、意図せず走行車線を逸脱しそうな場合に警報でドライバーの注意を喚起する「インテリジェントLI & LDW」、軽自動車初の「SOSコール」などの先進、運転支援機能を搭載する。
実際に、高速道路を走行してみると、アクセルとブレーキ、ハンドルの操作をアシストしてくれる運転支援機能のひとつであるプロパイロットが働いているのよくわかる。パワートレインの動力性能と相まって、長時間の高速道路走行や渋滞時の負担軽減に役立つ。プロパイロットはこれまでにセレナ、日産リーフ、エクストレイルなどに搭載されている先進機能だ。
新型デイズは発売から約1か月になるが、ユーザーの評判は良く、とくにプロパイロット搭載車への関心が高い。日産自動車の日本マーケティング部によると、プロパイロットはハイウェイスター以上のグレードに搭載されているが、受注の7割が同グレードで、そのうちの半数がプロパイロット搭載車という。
販売目標の月間8000台に対し、受注残が1万台を超える。軽自動車の主力市場であるハイトワゴン分野にインパクトを与える一車種といえるだろう。(佃モビリティ総研・松下次男)