日本のEV普及牽引役を目指すアリア、本格販売へ
日産自動車が電気自動車(EV)普及の牽引役に位置付けるクロスオーバーSUV「アリア」を本格的に投入する。これに合わせ、プレス向けに実施した試乗会に参加し、その滑らかな走りを体験した。(佃モビリティ総研・松下次男)
新型EVのアリアは2020年夏にグローバル発表し、2022年1月から予約注文の限定モデルを発売した。これに続き、5月12日からいよいよ一般販売を開始する。
新型アリアの商品バリエーションは、66キロワットアワー・バッテリーを搭載し一充電当たりの航続距離が470キロのベーシックモデルである「B6 2WD(二輪駆動)」と四輪駆動の「B6 e―40RCE」(航続距離250キロ)。
それに91キロワットアワー・バッテリーを搭載し一充電当たりの航続距離が640キロと長い「B9 2WD」とその四輪駆動の「B9 e―40RCE」(航続距離580キロ)を合わせた4タイプが用意されている。
好調な予約注文で、クラブ アリア登録者も2万人超へ
このうち、まず販売を開始するのはB6のベーシックモデルだが、当初は3月下旬の発売予定だった。だが、半導体の供給不足から5月以降へと延期せざるを得なくなり、他のグレードは夏以降の販売となる。
担当者は先進技術を搭載したアリアは「半導体の塊ともいえる」と述べ、車両供給の遅れを残念がっていた。
一方で、オンラインで受け付けた限定販売の「アリアB6 リミテッド」はすでに納入を始めており、5月初旬にかけて予約分を手渡ししたいとしていた。
このB6 リミテッドの予約は好調で、予約獲得件数は6800件にのぼる。予約状況をみると、高所得世帯や他銘柄車からの予約がそれぞれ4割を超え、また6割が購入を決定済みだ。アリアの最新情報が得られる「クラブ アリア」の登録者も2万人と突破したという。
ガソリン車からも違和感なく乗り換えられる滑らかな走り
新開発EV専用プラットフォーム搭載車の第1弾となるアリアはMクラスのコンパクトな全長に、Lクラス並みの室内広さを実現したのが特色。
中嶋光チーフビークルエンジニアはその要因として、バッテリー・フロアの一体化構造や薄型バッテリーを採用、e―パワートレインをコンパクトしたことなどを掲げた。
加えて、様々な先進機能も搭載。先進の運転支援技術のプロパイロット2・0や音声で情報交信できるコネクテッドサービスのほか、運転に必要な機能を集約した電動コンソールを備え、スマートフォンのワイヤレス充電も可能だ。
こうしたアリアのプレス向け試乗会に4月14日参加した。実施場所は東京・大田区の羽田空港近隣で、試乗したのは「アリアB6 2WD」。
実際に運転してみると、素早い加速と滑らかな走行が印象的だった。開発担当者は、モーター走行の特色である急発進、急加速を抑え、「上質な走りにした」と述べ、ガソリン車などから違和感なく乗り換えできるようにした。EV普及に向け、「馴染みやすい」仕上がりにしたといえよう。
ドライブモードも「エコ」「ノーマル」「スポーツ」、それに減速力をオン、オフできるeペダルが用意されており、シーンに合わせた走りが楽しめる。
広々とした車内に静かな室内空間、先進デバイスが快適区間を実現
静かな室内も特色の一つ。もともとEVはエンジンがなく、駆動音は静かだったが、アリアは高遮音ボディで外部からの騒音も遮る。
さらに広い室内が実際に乗ってみると実感できる。前席と後部座席の間に、かなりのスペースがあり、大きめの男性が座っても十分、足を伸ばせて、くつろげる広さだ。
加えて、アリアにはリーフから搭載されているプロパイロットパーキングに加え、新たにインテリジェントキーで駐車の操作が可能なプロパイロット・リモートパーキングを搭載し、駐車が苦手というユーザーにも強い味方となる。
また、アリアには音声で話しかければ様々な情報が得られるコネクテッドサービスとしてボイスアシスタントとアマゾンのアレクサが搭載されており、実際のデモで交信が紹介された。
日産は今年、アリアに加えて、リーフの改良版、新型軽EVの投入を計画しており、日本のEV普及を牽引する。アリアの車両価格は539万円(B6 2WD)で、今や乗用車で最大のSUV市場でどのような反響を呼ぶか、注目される。