21年中頃に日本で発売、欧州、北米、中国は21年末迄に、約500万円から
日産自動車は7月15日、新型クロスオーバーEV(電気自動車)「アリア」をオンライン方式で発表した。新たなEV専用プラットフォームを採用した新時代EVとして位置付け、日本で2021年中頃に発売し、2021年末までに欧州、北米、中国に投入する。(佃モビリティ総研・松下次男)
アリアには一新したブランド・ロゴも採用された。同ロゴは今後投入される新型車に順次、採用する。内田誠社長兼CEOはアリアの世界初公開に当たり「新しい扉を開く」クルマだと表現した。車両価格は約500万円からを見込む。
日産が世界に先駆けて量産型EVのリーフを投入したのは10年前。しかし、初期の段階では販売台数が計画ほど伸びず、追随するメーカーも多くなかった。
それが、ここへきてようやく世界の主要メーカーがEV投入に動き出し、EV市場拡大の様相を見せ始めた。
これに対し、日産は先行の地を生かし、次のステップへとEVを発展させる。内田社長は「10年間のビッグデータを活用したノウハウの蓄積がある」と強調、新たなEV時代を築くと意気込んだ。
発表したアリアは航続距離が最大で610キロメートル(日本のWALTCモード測定)に拡大。出力130キロワット級の急速充電器ならば、約30分で375キロ走行できる充電が可能だ。
パワートレインも2種類のバッテリー容量(65および90キロワット時)と二駆、四駆の二つの駆動方式が選べる。新開発した搭載モーターは高速巡行時の消費電力を低減し、一充電時の航続距離拡大に寄与。また、サイズも小型化し、居住空間の拡大につながった。
新たなブランド・ロゴに併せ、EVプラットフォームもコネクテッド機能も進化
先進技術やコネクテッド技術も一段と進化した。スカイラインから搭載が始まった高速道路でのハンズオフドライブが可能な先進運転支援システム「プロパイロット2・0」や「プロパイロット リモート パーキング」「e-Pedal」などを標準装備。ハンズオフ走行もより安全性が高まったという。
アリアには7個カメラ、5個のレーダー、12個のソナーが搭載されている。これにより白線、標識、周辺車両を検知するとともに、ナビゲーションシステムと3D高精度地図データを使うことで、自動運転機能が働く仕組みだ。
コネクテッドでは、スマートフォンとの連動やアマゾンが提供する音声サービスを搭載し、音声による操作が可能。このため、自宅にいながらスマートフォンでドライブプランが立てられるほか、逆にクルマから自宅のエアコンなどの家電のスイッチを音声でオンにすることができる。
また、アリアは日産初となるリモート・ソフトウェア・アップグレード機能を搭載。これにより無線でクルマのソフトウェアや地図情報がアップデートでき、常にソフトウェアを最新状態に保てる。
車両寸法は全長が4595ミリメートル、全幅が1850ミリメートル、全高が1655ミリメートル。ホイールベースは2775ミリメートルの長さ。
デザインは、シンプルながら、モダンで力強い日本的なアプローチを生かしたスタイルが特徴で、「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャーリズム」を体現したという。ベースのデザインモチーフは前回の東京モーターショーで参考出品され、今回の実車でもほぼそのスタイルが踏襲された。
このところ日産は新型車の投入が極めて少なかったこともあり、日本などの販売戦線で苦戦が続いていた。この結果、業績悪化を招き、この立て直しが喫緊の課題となっていた。
こうした再生日産の重要な施策の一つが積極的な新車投入であり、内田体制下で今度18か月の間に12車種の新型車を販売する方針。また、2023年度末までにEVまたはe-パワー搭載の電動車両の販売を年間100万台以上にする計画を打ち出す。
この再生計画の目玉の一つが新型クロスオーバーEV「アリア」の投入であり、その販売動向が注目されるところだ。