日本電産の業績が好調だ。1月26日に発表した2021年度第3四半期(4~12月)累計の連結業績は、売上高が前年同期比18.8%増の1兆4072億円、営業利益が同16.6%増の1346億円、当期純利益が同20.1%増の1004億円だった。電気自動車(EV)用モーターや家電、ロボット向けの省エネ型モーターなどが牽引し、売上高、営業利益が過去最高を更新した。(経済ジャーナリスト・山田清志)
日本電産 連結決算業績
3四半期連続で売上高が過去最高を更新
「強調したいのが売上高で、このQ3も4965億円を売り上げて3四半期連続で過去最高を更新し、3四半期累計で1.4兆円を超えた。ビジョン2025で掲げた2022年度2兆円の目標にも確実に手が届くところまで来ている」と関潤社長は第3四半期決算を振り返った。
主な製品グループ別に収益を見ると、まず製品小型モーター製品グループは、売上高が前年同期比5.5%減収の3212億円だった。HDD用モーターの売上高は、販売数量の減少で34.0%減収の768億円だったが、その他小型モーターでは、IT用ファンモーター、高効率の家電用モーター、ゲーム機等のサーマルソリューション商材などの新製品を市場投入することで新規需要を取り込み、売上高は9.3%増収の2443億円だった。営業利益は部品内製化など原価改善を行ったものの、減収を主因として27.5%減益の371億円となった。
車載製品グループは、前第3四半期累計期間と比較すれば回復基調で、17.6%増収の3011億円だった。しかし、営業利益は顧客における半導体など電子部品の影響に加え、引き合い、受注が急拡大しているEV駆動モーターシステム「イーアクスル」などの開発費等がかさみ、10.3%減益の108億円となった。
イーアクスル搭載車種の販売状況
家電・商業・産業用製品グループは、売上高が主に家電向けコンプレッサーや空調機器向けモーター、欧米での搬送用ロボット向けモーターおよびギアの増収により、34.1%増の5757億円。営業利益はあらゆる事業分野で省エネ高効率高付加価値新製品の需要を取り込んだうえ、原価改善や固定費適正化を実行した結果、59.9%の大幅増益となる579億円となった。
EVモーターシステムに3年間で約3000億円投資
関社長に続いて永守重信会長が説明を行い、真っ先に口にしたのがイーアクスルについてだ。日本電産はイーアクスルの生産を2019年に開始し、それを採用したEVの販売台数が21年11月に月2万台を突破した。そして、2024年までの3年間で約3000億円を投資することを明らかにした。
「現在、イーアクスルには多くの引き合いがきている。その引き合いが決まった段階で投資をしても遅すぎる。どれくらいのキャパが必要かということを換算して約3000億円の投資を決めた」と永守会長は強調する。
中国では浙江省平湖や遼寧省大連などにある4工場を増強するほか、欧州ではセルビア工場を新設し、ステランティスとEV向けモーターの合弁会社を設立してフランスに工場を新設する。しかも、それだけに留まらず、第7、8、9のグローバル製造拠点を立案中で、半導体の内製化にも取り組んでいくという。日本電産では、2030年にEVモーターシステムで世界シェア40%超を目指しており、そのために次々に布石を打っていく計画だ。
イーアクスルの生産能力増強計画
また、精密小型モーターを使って、二輪車や小型EV市場にも挑戦していくという。二輪車市場では、インド、中国、アセアン地域を中心に電動バイク市場が形成されつつあり、今後環境対策などを追い風に高成長期にあると予想。特にインド、中国の2大市場を重点的に攻め、大手顧客向けのモーターの量産を開始する。
小型EVでは、中国市場で複数の企業から受注があり、モーターの量産を2022年度から始める。「電動2輪車や小型EV、特に出力30kW以下のところでは、約10の案件ある。中国のハードディスク工場を転換して生産を行う」と永守会長は話す。
2021年度通期の業績見通しは、売上高が前期比11.2%増の1兆8000億円、営業利益が同18.8%増の1900億円、当期純利益が同21.4%増の1480億円と前回公表値を据え置いたが、期末配当を5円増やし、年間配当を65円にする予定だ。