同拠点から、レベル4のMaaS向け自動運転車を、2020年にお台場で公開させる意向
トヨタ自動車の自動運転に関わるソフトウェアの先行開発などを行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)は12月17日、東京・日本橋の本社オフィスを本格稼働させた。(佃モビリティ総研・松下 次男)
これに合わせ、施設内部を報道陣に公開すると共に、レベル4のMaaSMaaS向け、自動運転車を2020年に東京のお台場でデモ走行するなどの活動方針を示した。
TRI-ADは、トヨタが90%、デンソーとアイシン精機がそれぞれ5%を出資し、2018年3月に設立。米カリフォルニア州シリコンバレーのトヨタの自動運転研究機関であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)の研究成果をトヨタグループの製品につなげる橋渡し役を担う。
交通の要所・日本橋から、自動運転技術を世界に向けて発信する拠点に
本社オフィスのグランドオープンに合わせたセレモニーでは、ジェームズ・カフナーCEO(最高経営責任者)、鯉渕健CTO(最高技術責任者)、虫上広志CCO(最高執行責任者)の3人が登壇し、TRI-ADの役割や、技術開発の取り組み、オフィスの特徴などを解説・紹介した。
米グーグルの自走車開発チームの創設メンバーに携わって同社ロボティクス部門長などの経歴を持っており、TRIのエグゼクティブアドバイザーを兼務するカフナーCEOは、TRI-ADの役割について「日本の道路の起点」である日本橋にオフィスを設置したことを踏まえ「最先端の安全な輸送手段である自動運転のテクノロジーを、世界に向けて発信する拠点を目指す」と強調した。
技術開発は中央区のタワーオフィスの3フロア、米国での研究成果をグループ製品につなげる架け橋に
トヨタの先進安全技術領域開発責任者でもある鯉渕CTOは、トヨタが開発する自動運転車の技術研究について、〝オーナーカー向け〟と〝MaaSなどのサービスカー向け〟の領域があり、2020年にいずれも二つのプロジェクトとして動き出すことを明らかにした。
オーナーカー向けでは、レベル2の自動運転技術を搭載した車両を2020年に市販化すると表明。
MaaSなどのサービスカー向けでは、限定領域を走行することから、より高度化した自動運転技術の搭載が可能とし、レベル4の自動運転車を東京・お台場でデモ走行する予定だ。
同デモ車には、天井部に新世代のライダーを搭載するなど、最新の技術を詰め込んでおり、一段と進化した自動運転車とした。それぞれ車両の走行シーンを映像で紹介した。
総勢650人で始動するも新規採用は現在100人。目指す事業規模は1000人体制
公開した日本橋オフィスは、東京都中央区の日本橋室町三井タワー内にあり、16階から20階までの3フロア―を占める。今年7月に同所に移転し、今回全てのエリア―が本格稼働した。
虫上COOは、オフィスの特徴について8人程度の少人数で取り組める「ハニカム式レイアウトでアジャイル開発を実現し、新たなイノベーションを創出する」と述べると共に、オフィスのあらゆる場所を繋ぎ、スタッフが垣根を越えて集まってアイデアを交換する空間を随所に擁しているとした。また和の日本調テイストを随所に生かす。
新技術を生み出すのは会社ではなく人。教育の場である道場も設ける
同拠点の大きな特徴は、新しいテクノロジーを生み出すのが「会社ではなく、人」としていること。このため教育の現場である「Dojo(道場)」なども設けている。今後も未来に向けて、開発テクノロジー発信役という立場だけにとどまらず、文化、カルチャーの「架け橋」にもなりたいという。
従業員数は現在、契約社員200人を含め、650人。うちトヨタ、デンソー、アイシンからの出向者が350人で、100人を新規採用した。
今のところは日本人が半分を占めているが、今後、多国籍から人が集まり、女性も新規採用の20%弱を占めるなどダイバシティ化が進む。また近い将来は1000人態勢を目指すという。
取材・執筆:松下次男
1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。