東京大学と凸版印刷、パナソニック、日立製作所、ミライズテクノロジーズ(デンソーとトヨタが、車載半導体の研究開発を目的に2020年4月に設立した合弁会社)の5者は8月17日、協働で「先端システム技術研究組合(略称RaaSまたはラース、理事長:黒田忠広教授、東京大学大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター長)」を設立した。(坂上 賢治)
上記参画5者はこのRaaS環境下で、近未来のデータ駆動型社会の実現を支えるための集積回路である専用プロセッサーの設計を目指し、同仕様を公開(オープンアーキテクチャ)することで製品化に至る開発スピードを一気に10倍速にしていく考えだという。
併せて3次元集積の技術力も急速に高め、最新の7nm CMOS(P型トランジスタとN型トランジスタのチャネル長をおよそ7ナノメートルとする最先端半導体技術)を介し、専用プロセッサーのエネルギー効率も先の開発スピードと同じく10倍に高めていく。
ちなみに7nmの半導体プロセッサーは、現行の主力世代である14nm世代に比べ演算処理性能をさらに高めつつ消費電力の削減が可能で、電力効率(1W当たりの演算処理性能)も約2倍から3倍程度にまで向上する。結果、セキュリティー機能やAI(人工知能)の推論処理性能が飛躍的に高まる。
今後、セキュリティー機能の強化やAIの推論処理性能を高めていくことは、ビッグデータ解析時代に不可欠な技術要素であり、フィジカル空間(現実空間)とサイバー空間(仮想空間)をシームレスに繋いで分析するデジタルツイン社会を確実にさせていくためにも欠くことができない。
加えてそうした近未来のデータ駆動型社会を支える専用プロセッサーは、安く高性能であること以前に、出来る限り早い段階で提供しなければならない。しかし高性能プロセッサーを開発・生産していくには一般的に多大な費用と膨大な年月が掛かる。
そこで今回の参画5者は、新時代に応える高性能プロセッサーをいち早く開発するべく、経済産業省の認可を得てRaaSの設立に動いた。今後は3次元集積に係る技術水準を大きく加速化させつつ、安価かつ高性能なプロセッサー量産を短期間で実現させていく構えだ。