帝人は、5月7日、同社が展開する熱可塑性炭素繊維複合材料(以下、CFRTP)製品である「Sereebo(セリーボ)」が、米・ゼネラルモーターズ(以下、GM)の新型ピックアップトラック2車種に採用されたことを発表。量産自動車の構造部材にCFRTPが使用されるのは世界初となる。
CFRTPは軽量・高強度で知られる、いわゆるカーボン素材の一種で、自動車や航空機、高速鉄道などの様々な部品への活用が期待される次世代素材のひとつだ。
自動車や航空機などの部品には、従来から熱硬化型のCFRPが使われてきたが、量産しにくく、コストも高くなるなどの課題があり、特に自動車分野ではレース車両や少量生産の高級車などを除き、あまり一般的ではなかった。
対するCFRTPは、CFRPと比べ、常温保存が可能で、量産性に優れ、後加工が容易、リサイクルが可能といった特徴を持ち、製造コストも比較的安くできるというメリットがある。
特に、近年の自動車では、燃費向上はもちろん、普及が期待されるEVの航続距離などの課題解決のために、車両や部品の軽量化が急務となっており、その対策として、前述の通り、CFRTPが大きくクローズアップされているのだ。
帝人が2013年に開発したSereeboも、熱可塑性樹脂を使用するCFRTP製品。世界で初めて製造タクトタイムを約1分にまで短縮したことにより、自動車部品などの量産対応を可能にした革新的なCFRTPだ。
今回Sereeboが採用されたのは、GMが2019年夏から市場展開を開始するピックアップトラック「GMC シエラ・デナリ1500」および「GMCシエラAT4 1500」の2車種。いずれも「カーボン・プロ」と呼ばれるピックアップボックス(荷台)の素材に使用される。
カーボン・プロは、帝人がGMと共同開発したピックアップボックスで、ポリアミド系樹脂を母材とし、炭素繊維をランダムに分散させたSereeboシリーズの製品を荷台内側のパネル部分に使用。
Sereeboを用いることにより、成形時間の大幅な短縮を実現したほか、スチールを使用した従来のピックアップボックスに比べ約40%の軽量化を実現。また、約10倍の耐衝撃性を有し、耐腐食性にも優れている。
加えて、従来の素材では量産できなかった複雑なデザインの成形にも対応でき、リサイクルも容易であるなど多くの特徴を有している。
なお、Sereeboを使用する当該カーボン・プロの荷台内側部分は、帝人グループにおいて軽量複合材料製品の生産・販売・技術開発を展開するコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP社)のハンティントン工場(米国インディアナ州)で製造される。