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2021年12月10日【新型車】

スズキ・新型アルト、初のマイルドハイブリッド搭載

松下次男

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スズキは12月10日、内外装を一新した新型「アルト」を発表した。オンラインで開いた発表会で鈴木俊宏社長はアルトについて「軽自動車の基本を築いた」モデルと表現するとともに、カーボンニュートラルに向け 「(今回のモデル)まだ夜明け前。次期モデルで新しい軽自動車のかたちを作りたい」と述べ、次のステップで本格的な電動化時代へと進化させる意向を示唆した。(佃モビリティ総研・松下 次男)

 

 

最廉価モデルを100万円で切る価格で販売する意義を強調

 

今回の新型アルトは9代目。一部グレードアルト初となるマイルドハイブリッドを搭載し、同モデルは軽自動車トップの27・7キロメートル(WLTCモード)の燃費を達成。発売は12月22日から。月間販売目標は6000台。」
鈴木社長は1979年5月に50万円を切る価格で発売した初代アルトを取り上げて「47万円という価格を意識したい」と述べたうえで、安全性や時代のニーズに合わせた装備を図りながら今回、最廉価モデルを100万円で切る価格で販売する意義を強調した。

 

現在、軽自動車はハイトワゴンが主流となっているが、アルトはセダンタイプ。これについて、鈴木社長は「アルトはスズキの基本、さらに言えば、軽自動車のベースを築いた」モデルと述べ、運転のしやすさ、使い勝手のよさ、経済性を兼ね備えた実用的な軽自動車と位置付ける。
さらに営業車としての役割も大きい。まさに「ゲタ替わり」と言われる軽自動車の代表的なモデルであり、さらに鈴木社長は次期モデルに向け「ゲタを極めていきたい」と表現する。

 

 

鈴木社長は軽自動車について「世界で通用するモデルだ」と述べる

 

加えて、次のステップでは、「朝が来たといわれるようにしたい」と述べ、カーボンニュートラルをにらんで軽EV(電気自動車)をはじめとした電動化の発展形を示したいとのニュアンスを表明した。
また、グローバル展開でもアルトは重要な役割を示す。アルトベースの車両はインド、ヨーロッパ、パキスタンなどで販売しており、その累計販売台数は1430万台(国内販売累計約526万台)を超える。
パキスタンなどでは前モデルを排気量660ccエンジンのまま売っており、鈴木社長は軽自動車について「世界で通用するモデルだ」と述べ、新型モデルについても引き続きグローバル展開を視野に入れる。

 

新型アルトは「楕円形」をモチーフに、世代を超えて親しみやすく愛着のわくデザインを採用。2014年12月に発売した8代目の前モデルに比べ、全高を50ミリ、室内高を45ミリ、室内幅を25ミリそれぞれ拡大した。

安全性も充実させている。夜間の歩行者も検出するステレオカメラ方式の衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」をはじめ、誤発信抑制機能、車線逸脱警報機能などを備えた予防安全技術「スズキ・セーフティ・サポート」を全車に標準装備する。
エアバッグも運転席、助手席、フロントシート、サイドエアバッグなど6個備える。こうした安全装備はマイルドハイブリッド搭載と並んで、ユーザーの意見を取り入れて充実させたという。

 

 

全機種、CVT(無段変速機)を搭載。売れ筋は最廉価版の一つ上の「L」グレード

 

新型アルトは660cc「R06A型」エンジンを搭載する「A」」「L」とマイルドハイブリッドモデルの「ハイブリッド S」「ハイブリッド ✕」の4グレードがあり、変速機は全機種、CVT(無段変速機)を搭載。売れ筋は最廉価版の一つ上の「L」グレードを見込んでいる。
営業担当の鈴木敏明取締役専務役員は足元の販売動向について、半導体の供給不足から厳しい状況を余儀なくされているとの見解を示した。4~11月の累計販売台数が軽自動車で前年比87・1%、登録車で93・6%にとどまっており、ユーザーの「皆様に車両をお届けできないことを心苦しく思っている」と述べた。
このため、新型アルト投入を機に、販売体制強化を図っていきたいとの方針を表明した。

 

新型アルトの車両価格(消費税込み)は94万3800円から137万9400円。マイルドハイブリッド搭載モデルは一部車種の重量税免税を含め、全モデルがエコカー減税の対象となっている。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。