スズキは12月10日、内外装を一新した新型「アルト」を発表した。オンラインで開いた発表会で鈴木俊宏社長はアルトについて「軽自動車の基本を築いた」モデルと表現するとともに、カーボンニュートラルに向け 「(今回のモデル)まだ夜明け前。次期モデルで新しい軽自動車のかたちを作りたい」と述べ、次のステップで本格的な電動化時代へと進化させる意向を示唆した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
最廉価モデルを100万円で切る価格で販売する意義を強調
今回の新型アルトは9代目。一部グレードアルト初となるマイルドハイブリッドを搭載し、同モデルは軽自動車トップの27・7キロメートル(WLTCモード)の燃費を達成。発売は12月22日から。月間販売目標は6000台。」
鈴木社長は1979年5月に50万円を切る価格で発売した初代アルトを取り上げて「47万円という価格を意識したい」と述べたうえで、安全性や時代のニーズに合わせた装備を図りながら今回、最廉価モデルを100万円で切る価格で販売する意義を強調した。
現在、軽自動車はハイトワゴンが主流となっているが、アルトはセダンタイプ。これについて、鈴木社長は「アルトはスズキの基本、さらに言えば、軽自動車のベースを築いた」モデルと述べ、運転のしやすさ、使い勝手のよさ、経済性を兼ね備えた実用的な軽自動車と位置付ける。
さらに営業車としての役割も大きい。まさに「ゲタ替わり」と言われる軽自動車の代表的なモデルであり、さらに鈴木社長は次期モデルに向け「ゲタを極めていきたい」と表現する。
鈴木社長は軽自動車について「世界で通用するモデルだ」と述べる
加えて、次のステップでは、「朝が来たといわれるようにしたい」と述べ、カーボンニュートラルをにらんで軽EV(電気自動車)をはじめとした電動化の発展形を示したいとのニュアンスを表明した。
また、グローバル展開でもアルトは重要な役割を示す。アルトベースの車両はインド、ヨーロッパ、パキスタンなどで販売しており、その累計販売台数は1430万台(国内販売累計約526万台)を超える。
パキスタンなどでは前モデルを排気量660ccエンジンのまま売っており、鈴木社長は軽自動車について「世界で通用するモデルだ」と述べ、新型モデルについても引き続きグローバル展開を視野に入れる。
新型アルトは「楕円形」をモチーフに、世代を超えて親しみやすく愛着のわくデザインを採用。2014年12月に発売した8代目の前モデルに比べ、全高を50ミリ、室内高を45ミリ、室内幅を25ミリそれぞれ拡大した。
安全性も充実させている。夜間の歩行者も検出するステレオカメラ方式の衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」をはじめ、誤発信抑制機能、車線逸脱警報機能などを備えた予防安全技術「スズキ・セーフティ・サポート」を全車に標準装備する。
エアバッグも運転席、助手席、フロントシート、サイドエアバッグなど6個備える。こうした安全装備はマイルドハイブリッド搭載と並んで、ユーザーの意見を取り入れて充実させたという。
全機種、CVT(無段変速機)を搭載。売れ筋は最廉価版の一つ上の「L」グレード
新型アルトは660cc「R06A型」エンジンを搭載する「A」」「L」とマイルドハイブリッドモデルの「ハイブリッド S」「ハイブリッド ✕」の4グレードがあり、変速機は全機種、CVT(無段変速機)を搭載。売れ筋は最廉価版の一つ上の「L」グレードを見込んでいる。
営業担当の鈴木敏明取締役専務役員は足元の販売動向について、半導体の供給不足から厳しい状況を余儀なくされているとの見解を示した。4~11月の累計販売台数が軽自動車で前年比87・1%、登録車で93・6%にとどまっており、ユーザーの「皆様に車両をお届けできないことを心苦しく思っている」と述べた。
このため、新型アルト投入を機に、販売体制強化を図っていきたいとの方針を表明した。
新型アルトの車両価格(消費税込み)は94万3800円から137万9400円。マイルドハイブリッド搭載モデルは一部車種の重量税免税を含め、全モデルがエコカー減税の対象となっている。