ロールス・ロイス・モーター・カーズは英国時間の6月9日、自社のBEVクーペ「スペクター」が自動車の実証・試験環境としては過酷な-40°C ~ +50°Cの気温下。地球上を舞台に延べ250万キロメートルに及ぶ国際走行テストプログラムを完了したと発表した。
同社によると、このテストには合計50,000時間以上の運転時間が費やされた。最後のテストプログラムとなったのは、同社の本拠地市場に於けるライフスタイル分析テストであるという。
ここに至る過酷なテストプログラムについてロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー・エトヴェシュ最高経営責任者は「スペクターは全てを変える次世代のロールス・ロイスです。
それは、世界の高級品製品に係る技術的リーダーシップを象徴しているというだけでなく、当社ブランドの創業者チャールズ・ロールズが1900年初頭に予言した電気の未来が、私たちに到来していることを象徴しています。
私達は、その姿をより完璧なものとするべく、考えられるあらゆる極端な温度、天候、道路を網羅。真のコネクテッドカーとして求められる141,200にも及ぶデジタル送受信を筆頭に、25,000の機能テストを一つ残らず細かく監視・分析。チューニングに係る技術要件だけでも、そのプロセスは50,000時間に相当するものとなりました。
プロセス上の検討要素は、音響性能、コーナリング時の安定性、ステアリング操舵の正確性、充電時間、航続距離、最大トルクまで数多くの要素があり、それらを何度も繰り返し改良していきました。というのは、それぞれは小さな改良であったとしても、その積み重ねによって、お客様の小さな体験に計り知れない効果をもたらすことになるからです。
なかでも一番大事なのは、当社の最終製品に対して求める広範なライフスタイル分析テストを受けていることです。お客様の好み、習慣、要件に関する詳細な知識をこのスペクターへ適用していくことで、ロールス・ロイスの未来を約束するスペクターとして仕上げられたことは、私の職業人生の中でも大きなハイライトのひとつです。
実際、お客様がお求めになられる様々な角度の厳しい要件を満たすためには、伝統的な技術分野と、エキサイティングな新興テクノロジーの両方にまたがる献身的かつ高度なスキルが求められます。ロールス・ロイス・スペクターは、今後のブランドの偉大な未来を約束するクルマとなりました」と述べた。
またロールス・ロイス・モーター・カーズのエンジニアリング担当ディレクター、ミヒアル・アユービ博士は、「新しいロールス・ロイス・モーター・カーズを定義するBEVクーペのスペクターは、ここに至るまでに様々なテスト環境を潜り抜けてきました。
しかし我々のスペクターは、単なるエンジニアリング上の傑作以上の製品でなければなりません。それはお客様へ本物の贅沢な体験が提供できるクルマであることを求められるということです。
従ってスペクターは、グッドウッド時代からの綿々と引き継がれた独自のライフスタイル分析プロセスを受けています。このテストプログラムは、標準的な自動車を評価するプロセスを遙かに超えて、お客様が日常生活の上で自動車をどのように使用されるかを検証します。
ライフスタイル分析は、高級ブランドへの知識とその価値に対する理解、および高級品分野全体に亘る独自の情報収集に基づいて行われます。これによりエンジニアはロールス・ロイスの顧客に係る様々な価値や体験を変数に置き換えて検討しました。
例えばスペクターのドライブトレインが、中国・海南島の三亜など、世界で最も高級な地域や道路でどのように機能するかを調査しました。その対象地は、アラブ首長国連邦のドバイ。カリフォルニア州ナパバレー。そしてブランドの本拠地であるロンドンなど多岐に亘ります。
具体的なテスト環境は、高速道路等、特定のパフォーマンス環境などに限っておらず、スペースが限られている道路や敷地へのアクセスで必要とされる操作性を四輪ステアリングなどの機能で、確実に提供できているかを確認することなども含まれます。
実際、ロンドンのメイフェア、ケンジントン、チェルシーの各区内およびその周辺でテストを行ったところ、主要な住宅街や高級店の店舗に近づく際に、適切なリアアクスル・ステアリングのフィーリングなども確認しています。
他にもお客様が懸念される多数の静的テストもあります。それは待機中のヘリコプターの横に駐車している自動車内で通常の電話を使った会話が可能かどうか。
特定の超高層ビル間で自動車内のインターネット接続の強度が確かなものかどうか。自動車内に特定の持ち物(フォーマルなイブニング スーツやガウンを保護するために使用される長い衣類バッグ等)を置いた場合のアクセスの容易さなども含まれます。
併せてライフスタイルの分析フェーズには、例えばカリフォルニア州ロサンゼルスによくある私道を再現した非常に急な丘陵上で駐車された極端な車両姿勢で、電動アシストドアをテストし、ジャイロスコープとGフォースセンサーによりドアが普段と同じ速度で開閉できるよう配慮するなども行いました」と話している。
なお、このような250万キロメートルを超えるテストを完了できたスペクターが、顧客の元へ届けられる時期は今年の第4四半期頃だとしている。
スペクターのCO2 排出量と電力消費量の須知は以下の通り
WLTP:消費電力:2.9 マイル/kWh. / 21.5 kWh/100km
電気航続距離: 323 マイル / 520 キロメートル
CO 2排出量 0 g/km
(上記スペックは暫定データであり、出荷までに変更される可能性がある)