イスラエルIoTセキュリティが日本法人を設立。日本代表に伊藤俊明氏
イスラエルのセキュリティプロバイダー、VDOO Connected trust(ビドゥ、本社・テルアビブ)は6月19日、東京都内で記者会見を開き、日本法人の設立および重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)との提携を発表した。これを機に、VDOOは自動車・交通分野をはじめ、普及が進む日本のIoT(モノのインターネット)デバイスをターゲットに、セキュリティソリューション事業を進展、強化する。(佃モビリティ総研・松下次男)
設立した日本法人は「ビドゥジャパン」で、日本代表に伊藤俊明氏が就任した。VDOOはエンドツーエンドでIoTソリューションを提供するパイオニアとして2017年に創業。まだ設立後、数年たらずの企業だ。
このように若い企業が日本に拠点を設ける狙いについて、オンラインで記者会見に参加したネタネル(ナティ)ダヴィディ共同創業者・CEO(最高経営責任者)は「日本はデバイス先進国で、かつ自動化のリーダーだ」と述べた。
現実に、日本でVDOOは急成長するとともに、MS&ADベンチャーズやNTTドコモベンチャーズなどの日系大手企業を含む投資家から4500万ドルの資金を調達しているのも背景にあるだろう。
共同創業者のナティ氏はイスラエル国防相のキャプテン、サイバーセキュリティ関連企業のCEO、スターアップ企業のコンサルタントなどの経歴をもち、もう一人の共同創業者であるUri Alter氏と二回目の起業となるVDOOを立ち上げた。
セキュリティ業界団体のCCDSが、設計・検証ガイドラインなどでVDOOを活用する
今回VDOOと提携するCCDSは生活機器のセキュリティの動向調査や設計プロセスの開発、検証方法のガイドライン開発・策定などを行う団体。この中で、消費者が安心して製品を使用できるよう、セキュリティ対策のレベルを3段階で示すサーティフィケーションプログラムの展開を進めており、この分野でVDOOを活用する。
プログラムの概要は、車載分野やスマートホーム分野、決済端末などのIoT機器の全体に共通するものをレベル1で示し、その上に製品別分野や生命・財産に関わる要件をレベル2、3で示す。
すでにレベル1は2019年10月に開始しており、これに対応したデバイスには星1つのサーティフィケーションマーク(任意)を発行。さらに現在、新たに2021年版サーティフィケーションマークの検討、策定を進めており、これが今年秋にまとまる予定。21年版は星1つから星3つまでのマークが揃う見通し。
こうしたCCDSのガイドラインに対するアセスメントをVDOOの製品を使い、自動診断できるようにするもので、ビドゥジャパンの伊藤代表は「7月上旬をめどにサービスを開始する」と展開時期を示した。
CCDSの荻野司代表理事(情報セキュリティ大学院大学客員教授)はVDOOとの提携について「当団体の会員はメーカーが主体。このため、特定のベンダーを応援するものではないが、フリーでサポートしてもらえることで、提携した」と述べた。
伊藤代表によると、日本市場での展開はデバイスのセキュリティを自動診断する「Vision」とデバイス保護エージェントの「ERA」のソリューションを活用。VisionはIoTデバイスの設計、開発、テストに、ERAは運用・保守に対応するもので、出荷前から出火後まで一気通貫でサポートできるのはVDOOだけという。クラウドプラットフォームも国内で完結する。
日本での販売パートナーはマクニカネットワークス、大日本印刷を一次店に、NTグループや富士通グループなどの子会社と組む。さらに伊藤代表は「新たに2社がパートナーとなる見通し」と述べたほか、保険会社とIoT関連保険のアライアンスを近く発表することを明らかにした。
IoTデバイスの普及拡大とともに、サイバー攻撃は近年、急拡大しており、その攻撃回数は2018年までの3年間で3・9倍に増えている。そのうち、約半数がWebカメラやルーター等のIoTデバイスを狙った攻撃だ。ナティ氏は攻撃対象の一例として、駐車場システムなどが被害にあったことを掲げた。