日野自動車は4月15日、これからの“物流のラストワンマイル”に向けた新たな提案として、ウォークスルーバン型の「超低床・前輪駆動小型EVトラック」を開発し、2022年初夏に「日野デュトロ Z(ズィー) EV」の名称で市場導入すると発表した。
昨今、物流のラストワンマイルの現場では、労働人口の減少やeコマースの拡大などを背景に、ドライバー不足をはじめ、荷役作業等の配達業務の身体的負荷、荷物の増加や多様化への対応といった課題が深刻化。今後、荷物量のさらなる増加も見込まれることから、これら課題に加え、世界的潮流を受けてのカーボンニュートラルに向けた環境経営対応も迫られることとなる。
日野は今回、それら課題の解決に向け、「超低床・前輪駆動」の小型EVトラックを開発。床面地上高が従来の後輪駆動車と比較して半分の約400mmとなる超低床構造およびウォークスルー構造を採用し、荷役作業性や乗降性を大幅に向上させると共に、宅配現場での使い勝手の良さも追求した。
宅配用途に必要な100km以上の航続距離を目指したというこの小型EVトラックは、現行の日野デュトロより一回り小さいサイズ感とすることで、住宅街での取り回しのしやすさを確保すると共に、普通免許で運転可能とし、ドライバー人材確保にも貢献。コンパクトな車体ながら、必要な荷室容積も確保した。
超低床・小型EVトラックは、主に市街地での宅配での使用が想定されている他、店舗・倉庫や空港等の大規模施設内等、夜間・早朝の稼動等、幅広い活用も期待できると云う。
なお、この小型EVトラックには、ウォークスルーバンに加えて、用途に応じて荷台を架装できるキャブシャシ型も設定される。
<主な特長>
・超低床構造:荷役作業性・乗降性を大幅向上し、ドライバーの負担軽減。必要な荷室容量を確保。
・ウォークスルー構造:利用者の声を反映し、現場での使い勝手を追求。
・普通免許で運転可能&EVならではのイージードライブで、ドライバー人材確保に貢献。
・市街地走行に必要な先進安全技術を装備。
・ゼロエミッションと高い静粛性で、周辺環境にも配慮。
<新開発のEV専用シャシ>
新開発EVシャシを採用。従来のエンジンとトランスミッションの代わりにコンパクトなモーターをキャブ下に搭載し、前輪を駆動。バッテリーを荷台床下のフレームの内側に搭載し、それ以外の電動ユニットのほとんどキャブ下に収めることで、従来の後輪駆動車では実現困難だった超低床を実現した。今後日野は、独自開発により電動車量産に必要な技術を手の内化し、電動車開発に活かしていくとしている。
日野の下社長は、超低床小型EVトラックの発表に際して、以下のように話している。
「日野初の本格EVである日野デュトロ Z EVは、これからの物流のラストワンマイルに、自信を持ってご提案する”使えるEVトラック”です。宅配物流に焦点を当て、お客様の貴重なご意見を伺いながら完成させました。その答えが、使い勝手を追求した”超低床ウォークスルーEVバン”という形です」。
日野は、商用領域におけるCASE技術の普及促進に向け、いすゞ自動車・トヨタ自動車との商用事業協業における電動コンポーネントなどの技術面での連携も含め、電動商用車の普及促進に努めていくとしている。
[主要諸元](ウォークスルー型・参考値)
– 全長×全幅×全高:約4.7×1.7×2.3 [m]
– 床面地上高:約400 [mm]
– 車両総重量:3.5t 未満
– 乗員:2人
– モーター:
・種類:永久磁石式同期モーター
・最高出力:50 [kW]
– バッテリー:
・種類:リチウムイオンバッテリー
・容量:40 [kWh]
– 充電方法:普通充電/急速充電(CHAdeMO方式)
– 主な安全装備:
・PCS(プリクラッシュセーフティシステム)
・誤発進抑制機能(インテリジェントクリアランスソナー)
・電動パーキングブレーキ
・電子インナーミラー
・車線逸脱警報