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2021年12月13日【新型車】

FCA開発担当者ら5人が語るグランドチェロキーLの魅力

山田清志

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FCAジャパンは12月13日、ジープのフラッグシップSUV「グランドチェロキー」を10年ぶりにフルモデルチェンジし、3列シートを備えた「グランドチェロキーL」を新たに設定し、2022年2月19日から販売すると発表した。価格は788万円~999万円だ。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

 

3列目は大勢のオーナーからリクエスト

 

「誕生以来、80年にわたってSUVを作り続けてきたジープ、なかでも最も輝かしい実績を誇ってきたのがグランドチェロキーだ。その歴史に新しい1ページが加わろうとしている。ジープ・チェロキーは世界中で最も賞賛されたSUVであり、国内では輸入SUVの中で最も成功したモデルと言っていい。しかも今年はグランドチェロキーが誕生してから30年という節目でもある。新型グランドチェロキーLは、クラシックな外観ながら最新の安全装備やインフォテイメントで包み込み、3列シートモデルとして生まれ変わった」

 

FCAジャパン社長兼CEOのポンタス・ヘグストロム氏は新型「グランドチェロキーL」のオンライン発表会で、こう話し始めた。4代目となる新型グランドチェロキーLは、ジープの卓越した悪路走破性と、長距離のオンロードも快適に移動できるラグジュアリー・グランドツアラーの特性を1台に凝縮。大勢のオーナーからリクエストされていた3列目を新たに加えたそうだ。

 

今回のオンライン発表会では、新型グランドチェロキーLの開発に携わった担当者が5人登場し、それぞれが新型グランドチェロキーLに対する思いを語った。

 

 

ジープ・ブランドCEOのクリスチャン・ムニエ氏

 

ブランドのアイコン的な存在を1からつくり直すことは、デザイン的にもエンジニアリング的にも冒険だった。その冒険を乗り越えて、グランドチェロキーLはよりモダンで、より革新的で、よりエキサイティングな1台へと生まれ変わった。

 

グランドチェロキーらしさを損なわずに新しいテクノロジーと斬新なデザインによって、未来を指向するクルマになった。グランドチェロキーLはあらゆるカテゴリー、パフォーマンス、デザイン、そして美しさのいずれをとってもこれまでの基準を塗り替えた。

 

シンプルでありながら、とても洗練されたデザインになっている。高い悪路走破性を持っているのに、洗練されてプレミアムという相反する要素を高度にバランスさせている。悪路走破性や渡河性能に加えて、卓越したオンロード性能を持つグランドチェロキーLは、ある意味二重人格のようなものと言ったらいいかもしれない。

 

 

ジープ・エクステリアデザイン・ディレクターのマーク・アレン氏

 

グランドチェロキーLの開発はチャレンジだった。それと分かるプロポーションでなければならず、サイズ感や取り回しの良さ、悪路走破性も維持しつつ、ホイールベースを伸ばして3列目を加えた。

 

数あるジープの中でも、グランドチェロキーは「ワゴニア」の系譜にあると思っている。新型ではそこを強調した。例えば、逆スラント型のノーズ、ピラーの位置関係やライトのデザインもワゴニアをモチーフにしている。

 

もう一つワゴニアを参考にしたのは、視界の広さゆえの開放感だ。ベルトラインを下げ、エンジニアと何度も打ち合わせをしながら、ピラーをできるだけ細くし、グラスエリアを拡大した。

 

3列目をデザインするとき、単に3列目を押し込んだだけにはしたくなかった。快適な3列目でなければいけないと考えた。おかげで大人が座って長距離を走っても、快適な3列目ができたと思っている。ほかにもいっぱい目に見えないアイデアが詰まっている。それは何か教えない。乗って確かめてもらいたい。

 

 

ジープ・インテリアデザイン・ディレクターのクリス・ベンジャミン氏

 

新型グランドチェロキーLのインテリアは、先代のグランドチェロキーから離れてまったく新しいものにしたいと思っていた。まず水平方向に延びるレイアウト。インストルメントパネルはドライバーから遠ざかっていくように角度をつけ、広々感を出した。

 

ダッシュボードが室内幅いっぱいに広がりつつ、センターコンソールが室内中央を貫いて、インスツルメントパネルに向かって駆け上がっていくレイアウトが独特の空間演出につながっている。私たちは今、ジープの新しいデザイン言語を開発しているところだ。今後登場する新型には、グランドチェロキーLで採用したデザイン言語を見つけることができるかも知れない。

 

グランドチェロキーLでは、3列目にすべてを注力した。3列目シートは面に向かって滝が流れ落ちるような造形にしている。こうすることで身長や体型にかかわらず快適に座っていられる。

 

高級車メーカーでも、これまで3列目というと取って付けたようなものばかりで、板の上に座らされているような感じだった。私たちは快適なだけでなく、どこに触れても手触りの良い、柔らかいシートをつくりたかった。高品質のレザーを採用した部分には美しいステッチを施し、ウッドも天然木だ。収納ボックスやドアポケットにも妥協は一切しなかった。

 

 

新型グランドチェロキー チーフエンジニアのフィル・グレイド氏

 

開発の初期段階で私たちは3列目をどうするかに加え、グランドチェロキーLの悪路走破性を1から考え直して最高レベルのものにすると決めていた。そのために新開発のさまざまなコンポーネントを組み合わせて、どのように仕立てていくかを考えなければいけなかった。

 

まず新しいサスペンションから始めた。マルチリンクサスのブッシュは一つずつの役割を明確にしていった。このブッシュはハンドリング向上に、このブッシュは快適性のために、という具合だ。同じように構成するほかの部品も、その役割をまず明確にして開発を進めていった。

 

また、フロントアクスルをエンジンに直付けすることでさまざまなメリットが生まれた。そのメリットの一つがNVH(ノイズ・振動・ハーシュネス)の低減で、これによりグレイドルを介してボディに伝わるノイズを減らすことができた。

 

NVHの低減に加えて、エンジンの位置も下げることができた。その結果、運動性能に影響を及ぼす重心位置も下げることができた。重心位置が下がれば、ハンドリングも良くなり、ロールオーバーにも強くなるなどいいことだらけだ。

 

軽量化にも取り組み、燃費も改善した。素材にはアルミを多用している。第3世代超高張力鋼板を含む高強度のスチールも多く使っている。燃料タンクは以前ほどガソリンを使わないので小さくなっている。

 

 

新型グランドチェロキーL開発主査のマリオ・ホームズ氏

 

新型グランドチェロキーLに採用されたナイトビジョンや大型ディスプレイ、デジタルメータークラスター、ヘッドアップディスプレイ、レベル2の安全運転支援など先進的なテクノロジーは先代のモデルでは不可能だった。

 

新型グランドチェロキーLでは、アトランティス・アーキテクチャーを採用している。それは3つの電源供給センター(PDC)からシステムに電源を供給している。先代のグランドチェロキーは1つだった。

 

PDCの位置は1つがエンジンルーム、もう一つが車両中央部、そして3つ目が後部に置かれている。網目のように張り巡らされた車内ネットワークに情報を素早くシームレスに行き来させることでUコネクト5が生きてくる。

 

さらに、ドライバー・アテンション・アラートはドライバーの運転パターンを学習する。運転し始めた時点でドライバーの癖などを学習し、そのパターンから車両が大きくはずれたとき、システムが警戒モードに入る。スクリーンにコーヒーカップがうちし出され、注意散漫になっていないか話しかける。

 

2021年の販売が14%も増加

 

「この1年半は私たちにとって過去に経験したことのない、困難を極めた時期だった。コロナ禍に加え、自動車産業は半導体の供給不足という課題に直面し、そこに原油高と原材料費高騰が追い打ちをかけてきた。そんな中でも、私たちにとって2021年は満足にいく年になりそうだ」とヘグトロム氏は話す。

 

というのも、2021年の販売が好調だからだ。11月までのFCAジャパンの累計販売台数は2万3837台で、前年同期に比べて14%も増加しているからだ。その中でジープは8.5%増の1万3284台で、輸入車ランキングでは第9位に位置している。

 

「2014年から20年までの間、輸入SUVのEセグメントにおけるグランドチェロキーのシェアは約27%だった。このセグメントでグランドチェロキーは常にトップセラーの1台だったし、実際に年間販売台数でトップに獲ったことが3回もある」とヘグトロム氏。

 

いずれにしても新型グランドチェロキーLは、FCAジャパンにとって心強い援軍になることは間違いない。2022年の販売台数がどれだけ伸びるのか興味深い。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。