デンソーグループのデンソーEMCエンジニアリングサービス(以下、デンソーEMCES)は、テクノフロンティア2019(4月17日〜4月19日・幕張メッセ)にブース出展し、試験車両を収納可能で、シャシダイナモにより擬似的な走行状態下でEMC試験が行える第三者試験所では最大規模の車両電波暗室を模型で公開した。
EMC試験とは、対象となる電子機器について、その電子機器から発生される不要なノイズ(主に電磁波)や、他の電子機器が発生する電磁波に対する耐性(誤作動を起こさないかなど)をチェックするための試験だ。
ADAS(先進安全支援システム)などの普及をはじめ、様々な電子制御システムが採用されるようになった近年の自動車では、車載電子機器の搭載数は年々増加傾向である。
また、将来実用化が期待されているV2X通信技術やEVなど自動車の電動化は、車載電動機器に対し、搭載数だけでなく、さらなる高性能化やより高い信頼性なども要求される事が予想される。
それら要因により、自動車開発の現場におけるEMC試験は、益々重要視されるようになってきているといえる。
そういった背景の中、ここで紹介するデンソーEMCESは、愛知県刈谷市のデンソー本社内に拠点を持つ自動車や自動車部品(車載品)を専門とする第三者EMC試験所だ。
2000年にデンソーから独立した同社は、A2LA(米国試験所認定協会)から「IEC/ISO17025」認定を取得しており、デトロイト3等からも認定されるなど、自動車分野の多彩なEMC試験に対応している。
また、各種自動車メーカ規格で要求される試験設備を多数保有しており、幅広い試験に対応している。
その同社が保有し、国内の第三者試験所では唯一ともいえる設備が、今回模型で紹介された大型の車両電波暗室だ。車両試験で求められる以下の試験が実施可能となっている。
EMCエミッション測定(CISPR12、CISPR25他)
EMCイミュニティ測定(ISO11451-2、ISO11451-4他)
車両アンテナ計測(近傍界/遠方界)
模型で分かる通り、試験対象の自動車を電波暗室内部に入れ試験を実施することが可能。
試験車両の前方には電波を車両に照射するホーンアンテナを備え、試験の際には10m径のターンテーブルで車両を回転させたり、シャシダイナモにより車両走行状態での試験を実施することが出来る。
その他、大地面に格納されている専用のアンテナを展開することにより、車両に搭載されるアンテナパターン測定にも対応している。
実際のサイズは、
シールド面寸法が28.0m(L)✕18.3m(W)✕9.6m(H)、
室内寸法が25.3m(L)✕15.6m(W)✕8.35m(H)
車両用扉が3 000mm(W)✕4000mm(スライド式)
また、設備内の壁には電波吸収体を備えノイズの反響などを抑え、適切な試験ができるようになっている。
当暗室の特筆すべき点は、前述の通り、シャシダイナモを装備すること。これにより、最大車速200km/hまでの走行状況を擬似的に作りだしつつEMC試験を行うことを可能としている。
同社によれば、国内にある第三者EMC試験所の中には、車両を入れられる設備を持つところはあるものの、シャシダイナモまで備えるところは現時点(2019年4月現在)では非常に限られており、これが同社の大きな優位点のひとつだという。
同社が保有する設備には、他にも自動車部品のEMC試験が行える小型の電波暗室など多数の設備があり、また、自動車メーカーや部品メーカー毎に違う様々な基準や規格などにも対応する。
加えて、同社では思わしくない試験結果が出た場合の対策検討や車載規格試験の経験が少ない顧客に対するコンサルティングなど、豊富な経験に基づいた様々なサービスも行っている。
EMC試験のさらなる需要増を見込む同社では、今後より多くの企業に保有設備の優位性や充実したサービスなどをアピールしていく方針だ。