日欧でほぼ同時に公開、2023年第3四半期からデリバリーを開始
アストンマーティンジャパンは5月25日、高級スポーツカーの新型「DB12」を日本初公開した。同モデルはカンヌでわずか数時間前に世界初公開したばかりで、日欧のほぼ同時発表は英本社が「日本市場を重視している証」との見方を示す。車両価格は2990万円。(佃モビリティ総研・松下次男)
アストンマーティンのグレゴリー・アダムス・アジアリージョナルプレジデントの東京のアストンマーティン青山ハウスで開いた新車発表会でDB12について世界初のスーパーツアラーの誕生と唱え、「アストンマーティンは新たなカテゴリーをつくった」とDB12を新たな2+2のグランドツーリングカーであると述べた。
そんなDB12は、2023年第3四半期からデリバリーを開始する。2023年はアストンマーティン創立110周年、DBモデル誕生75周年という節目の年であり、英本社のアストンマーティン・ラゴンダは、高級スポーツカーやラグジュアリーSUVを製造し世界55か国で発売する。
DBシリーズは映画007のボンドカーにたびたび登場するなど「レースと映画のスクリーンで成功した」モデルである。また、アストンマーティンの冠をつけたF1チームも数々の優勝を重ねており、2026年からはホンダとコンビを組む。
こうした中で、同ブランドから新型DB12の登場となった訳だが、新モデルは伝統的なDBの血統を受け継ぎながら、スポーティなキャラクターとダイナミックな走行性能を大幅に進化させ、新たな独自のカテゴリーを定義することをアピールした。
次世代スポーツカーの幕開けと唱え、世界初のスーパーツアラーと位置付ける
アダムス・アジアリージョナルプレジデントは従来のグランドツーリングスポーツカーについて「実用性と性能を兼ね備えたオールランドだが、その分、妥協を伴う」と述べたうえで、真にラグジュアリーか、真にドライバーズカーなのかと問いかけ、「ノー」と訴えかけた。
そのうえで、DB12はスリリングなドライビング体験、卓越した洗練性、最先端テクノロジー、最高レベルのラグジュアリーを組み合わせて、グランツーリスモのあるべき姿を再定義し、新たにスーパーツアラーを切り拓くモデルとした。
DB12の車体サイズは4725×2060×1295mm、ホイールベース2805mm、車重1685kg。パワートレインはハンドビルドの4リットル・ツインターボV8エンジンで、最高出力は680PS/6,000rpm。最大トルク値は先代のDB11から34%アップした800Nm/2,750-6,000rpm。
これに8速ATと初採用のエレクトリック・リアディファレンシャル(E-Diff)を組み合わせて、0-60mph加速3.5秒、0-100km/hm加速3.6秒、最高速325km/hのスペックを有している。気になる車体の最低地上高は120mmだ。
変速機は8速オートマチック・トランスミッションを採用し、DBモデル初搭載となるエレクトロニック・リア・ディファレンシャルを介して路面へ動力を伝達。これによりドライバーに最大限のレスポンスを提供する。
また、6軸慣性測定システムを使用してグリップを予測する最先端のエレクトロニック・スタビリティ・コントロール(ESC)システムを搭載し、5つのドライブモードを選ぶことも可能だ。
世界初のスーパーツアラーに相応しいプロポーションの実現に腐心
ボディはトレッドをフロント6mm、リアを22mm拡大。骨格は接着アルミニウム構造を採用した上で全体のねじり剛性を7%アップ。パワーアシスト・ステアリングシステム(EPAS)は可変タイプの速度感応型アシストと2.4回転の固定レシオのラックを採用したことで、様々な場面で最適なコントロールが可能にしたという。
また先のE-DiffはESCシステムと連動させることで数ミリ秒以内で全開からフルロックまで変化させることが可能。結果、荒れた路面でも俊敏かつダイナミックな走行が可能になるという。
足まわりはフロントが独立懸架ダブルウィッシュボーン式サスペンション、リヤがマルチリンク式サスペンション。アダプティブ・ダンピング・システム(ADS)を組み合わせる。
加えて新世代のアダプティブダンパーの導入と剛性の高いアンチロールバーの採用により、GTモードではラグジュアリーな乗り心地が維持される一方、タイトなワインディングではクイックな操舵感を提供するとしている。
そのためにタイヤはDB12専用のミシュラン「パイロットスポーツ5S」を装着させることでスポーツツアラーとしてのキャラクターを強く打ち出した。サイズはフロント275/35R21 103Y、リア315/30R21 108Yで、既製品とは異なるアストンマーティン専用設計の証「AML」のタイヤコードが付けられている。
21インチアロイホイールは3つの異なるデザインから選択でき、制動装置は熱容量を向上させるべくドリルド加工を施した鋳鉄製400mm径のフロントディスクと360mm径リアディスクを標準装備。更にオプションでは最高800度でもブレーキフェードを軽減させるカーボンセラミックブレーキ(CCB)の選択を可能にした。
エクステリアはラジエーター開口部が56%も拡大されると共にスプリッターも形状が見直して大胆で主張のあるデザインを採用。スタイル的には75年に渡るDBの伝統を引き継ぎながら、世界初のスーパーツアラーに相応しいセグメント定義するプロポーションの実現に腐心した。
インテリアは曲線を多用していた先代のセンターコンソールデザインを廃し、ショルダーラインの下まで達する水平基調で幅広のブリッジ形状のものに変更。クリーンで現在的なデザインとして長い伝統を誇るクラフトマンシップ感はそのままに最高級の素材とを組み合わせ、ドライバーと同乗者にスタイリッシュで贅沢なやすらぎと空間を提供する配慮を施した。ラゲッジルームは容量は262リッターだ。
また、次世代オーダーメイド・インフォテイメント・システムと最先端のコネクテッド・テクノロジーを強化し、標準オーディオはオーディオは390W 11スピーカーのシステムに。更に1170W 15スピーカーの「Bowers&Wilkins」サラウンドシステムをオプションで用意される。加えて、オンライン接続により使いやすさや安心感の向上につながるOTA(オーバー・ジ・エア)によるアップデートや診断機能なども備えている。