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2021年1月6日【オピニオン】

欧州の新車販売は20年11月減、SUVの成長基調に停滞の兆し

坂上 賢治

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自動車産業調査会社の英JATO(JATO Dynamics Limited/ジェイトー・ダイナミクス・リミテッド)は12月17日、欧州の自動車市場についての最新レポートを公開。同日翻を1月6日、同日本法人のJATO Japan Limited(ジェイトー・ジャパン・リミテッド)が発表した 。(坂上 賢治)

それによると昨年11月の販売台数は、対前年比13%減少。SUVが占めるマーケットシェアは40%以上を維持したものの成長は停滞している。また販売首位は、独フォルクスワーゲンがゴルフを25,000台弱売り上げている。

 

コロナ禍は、過去20年間に欧州来襲のどの経済危機よりも大きな影を落とす

 

欧州では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が依然続いている。これにより2020年11月の欧州の新車販売台数は、前年比2桁減となった。

 

当月の具体的な新車販売台数は1,045,129台で、これは前年2019年同月比13%減。同数値は2014年11月の販売台数989,500台に次ぐ最小記録だ。

 

この結果、11月までの年初来累計台数は対前年比26%減少。この数値により、今も懸念すべき傾向が未だ続いていることを示している。欧州では1月から11月の間に1,071万台の新車が販売された。しかしこれは今世紀に入ってから最も少ない台数となっている。

 

同数値について英JATOでグローバルアナリストを務めるフェリペ・ムニョス(Felipe Munoz)氏は、「世界的な感染拡大と、それがもたらしたモビリティ産業への影響は、欧州自動車産業界にとって大きな痛手となっており、実際、過去20年間にヨーロッパを襲ったどの経済危機よりも大きな影を落としている」と述べている。

 

欧州市場に於いてSUVの成長基調はいよいよ終わりを迎えるのか?

 

これまで過去6年間の間、SUVセグメントは一貫して欧州自動車産業の成長を牽引してきた。特に景気後退後にあたる2011年から2013年に掛けての3年間、市場がゆっくりと回復し始め、以降、新車を求めるマーケットの購買力と需要動向は、ハッチバックやワゴン、MPVからSUVへと移っていった。

 

その流れは堅調で、新型コロナウイルスの影響が深まっていく前の2019年初旬に至る迄の期間で、SUVセグメントは欧州全域で合計603万台を売り上げた。

 

ムニョス氏は、「当時、SUVが市場全体の38.3%を占めたことは、業界にとって新記録だった。しかし、2019年になって状況が劇的に変化した。

 

自動車会社は、もはや急速な成長基調を示しておらず、業界全体が2021年に向け、ポジティブに転じる兆しが何なのかを、ひたすら模索し続けている」という。

 

実際、今年は大半の期間で、SUVのマーケットシェアは40%から41%の間で安定していた。しかし、その販売台数は前年比で見た場合11月で13%減、年初来累計台数では21%減少した。

 

 

それにも関わらず、1月から11月までの年初来累計台数で見た場合、SUVのマーケットシェアは、2019年の38%から今年は40.4%に拡大している。

 

ムニョス氏は、「新車の販売市場は今年、SUVのラインナップがより幅広くなったことから大きな恩恵を受けた。しかし、今日に於いて欧州ではコロナウイルスの影響が色濃く残っているため、今後、新型車が投入されると同時にマーケットが大きく拡大したり、かつてのような早いペースで成長することは、もはやないだろう」と話す。

モデル別販売ランキングでフォルクスワーゲンゴルフが首位を維持

 

反対に、BセグメントとCセグメントは全体の平均を下回ったが、当月は新型モデルや競争力のある電動化モデルが投入されたことでマーケットシェアが拡大している。

 

 

具体的なモデル別販売ランキングでは、フォルクスワーゲンのゴルフが欧州で最も人気のある車としての地位を維持し続けている。当月の販売台数は24,800台で、年初来累計台数は255,000台をわずかに下回った。上位10位に入ったSUVは、プジョー 2008とルノー キャプチャーの2モデルのみだった。

 

その他の10位圏外では、フォード プーマ(Puma)、ボルボ XC40、アウディA3、ルノー ゾエ(Zoe)、フォルクスワーゲンID.3、キア ニロ(Kia Niro)、メルセデスGLA、シュコダ カミーク(Skoda Kamiq)、ジープ コンパス、メルセデスGLB、ニッサン ジューク、アウディQ3スポーツバック、キアXシード(Kia Xceed)、スズキ イグニス、BMW2シリーズが、いずれも好調な成績を残している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。