NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が取り組む「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」の一環として、(一社)UTMS協会と住友電気工業は4月25日、AIを活用した信号制御システムの開発に取り組み、岡山市内2カ所の交差点で制御実証に成功した。
今後、同成果を全国の交通管制システムへのAI導入に向けて活かすべく検討を進め、より少ない車両検知センサーで低コストの信号制御を実用化。交通渋滞の解消と低炭素社会の実現に貢献する事を目指す。
現在、日本国内に設置されている多くの信号機は、道路上の車両検知センサーが計測した交通量と渋滞長に基づき各交通管制センターから最適な青信号の時間を制御している。
そのためには渋滞長を計測するべく交差点流入路に沿って数百メートル毎に渋滞計測用車両検知センサーを設置しなければならない。その運用コストは同システム上の課題でもある。
そこで車両検知センサーに代わる新しい交通情報源として、車両から直接収集される走行軌跡情報(プローブ情報)が注目されているのだが、対象車両が限定されているためにデータが収集できない時間帯がある他、車両からの情報送信周期や収集センターでの集計処理にかかる時間などで、プローブ情報の収集に遅れが生じるという課題がある。
これらを解決するためNEDOらは、プローブ情報とセンサー情報をAI技術と融合。信号制御の高度化を図る研究開発に取り組み、今回AIによる渋滞予測を活用した信号制御の実証実験に成功させるに至った。
より具体的には、岡山市の国清寺交差点および妹尾西交差点を対象に、まず岡山県警察本部交通管制センターに導入したAIに過去の交通量や周辺環境情報などの時空間情報とプローブ情報で得られた旅行時間(渋滞状況)の相関関係を学習させた。
次にこのAIに、交通量計測用車両検知センサーで取得した交通量から渋滞長を推定させた。一方、交通管制センターの交通情報処理部では、渋滞計測用車両検知センサーで計測された渋滞情報を使用せず、AIが推定した渋滞情報を活用して2カ所の交差点で信号機の最適制御を行った。
実証実験の結果、AIによる渋滞予測に必要な交通量計測用車両検知センサーのみを残し、既存の車両検知センサーを半減(国清寺交差点の場合、車両検知センサーを計14基から7基に削減)しても従来と比較して渋滞状況に変化はなく、信号制御の性能を維持できることが確認出来たとしている。
このことから、車両検知センサーの削減によりインフラコストを低減出来る事を検証。渋滞計測用車両検知センサーが少ない交差点でも適切な信号制御が可能になる等、交通渋滞の減少に伴う低炭素社会実現への貢献が見えてきている。
これを踏まえ今後は、今研究成果に基づき標準仕様案の検討を進めて行く。またNEDOは次世代の交通管制システムの技術確立にも取り組んでおり、今AIによる渋滞長の推定を自律・分散交通信号機の入力情報として活用する検討を進めて行く構えだ。