自動運転社会を支えるサイバーフィジカルシステムによる高速道路空間の知能化
日本電気(NEC)は8月1日、自動運転時代に向けて高速道路空間の知能化を図り、より安全、安心、快適に走行できる高速道路空間の実現を目指しており、E1A新東名高速道路(新東名)の建設中区間をフィールドとした路車協調実証実験に参画した。
路車協調実証実験は2024年7月2日(火)から7月9日(火)まで、実証実験区間(橋梁、土工部、トンネルを含む約3.1km)にて実施した。
実証実験は、中日本高速道路(NEXCO中日本)が主体となり、国土交通省、国土技術政策総合研究所、NEXCO 東日本、NEXCO 西日本およびNEXCO総研と連携し実施している。
その詳細は、NEXCO中日本のWebサイト、以下のプレスリリースを確認されたい。
https://www.c-nexco.co.jp/corporate/operation/v2i/
https://www.c-nexco.co.jp/corporate/pressroom/news_release/6043.html
実証実験概要
現在、高速道路上の自動運転トラックの安全で円滑な自動運転の実現に向けて重要となる「路車協調」の仕組みについて様々な開発が進められている。
この路車協調とは、車両に搭載した車載自律センサでは検知出来ない、さらに前方の道路交通情報(先読み情報)を、インフラ側である道路側からの情報をもとに連携・提供することで、よりスムーズな交通を実現するもの。
高速で走行する自動運転トラックでは広範かつ早期の事象把握を必要とするため、自動運転トラックと周辺の他の自動車、道路管制側の交通インフラを繋げる「高速道路空間上のConnected環境の実用化」が期待されている。
車載の自律センサで検知できない事象の具体例としては、インターチェンジやジャンクション、サービスエリアなどの合分流箇所に於ける非コネクテッド車(一般車)との交錯リスクや、予測困難な突発的に発生する路上障害物や交通事故等が考えられ、それらに関するリスクの低減が求められている。
今回の実証実験では、実道上でのインフラ支援機能を想定し、道路上の情報を収集するセンサである収集系設備(車両検知センサ)と、コネクテッド車に対し情報を提供する提供系設備(路車間通信:自営通信網Vehicle to Infrastructure、以下V2I)を路側に配備し、車載器(車載PC上の自動運転模擬アプリ)を搭載したコネクテッド車を実際に走行させる実証実験を実施した。
図1 実証実験にて想定したデジタルツイン技術によるサイバーフィジカルシステム
これは「デジタルツイン技術によるサイバーフィジカルシステム」(図1)を構築し、「突発的事象に即応した動的交通制御」(図2)の想定シナリオを実道上に再現したフィールド実証と位置づけており、これにより路車協調によるインフラ側の支援の有効性の検証を目的としたもの。
図2 実証実験における交通状況の先読み情報からの動的交通制御
NECではNEXCO中日本が定めるユースケース5「交通状況に応じた情報提供による高速道路ネットワークの最適化」(図3)、およびユースケース6「交通状況に応じた車群制御情報の提供による交通容量の最大活用」(図4)に参画した。
図3 ユースケース5(交通状況:前方渋滞)の概要
図4 ユースケース6(交通状況:前方突発的事象)の概要
【NECの実証実験の成果】
従来の提供系設備は道路情報板やITSスポット(情報提供媒体)などによるピンポイントでの情報提供が行われており、タイムリーな情報入手に課題があった。
自動運転に求められる情報密度の濃さと言う点に於いて、今回の実証実験では「①路車間通信機能(V2I)」の提供系設備により、高速道路空間を連続的な通信エリアとして構築することで「情報提供の継続性」の有用性が確認できた。
また、従来の収集系設備は離散的なスポット観測により情報の収集粒度が粗く、FM多重放送を介したカーナビへの情報提供では事象の発生から情報提供に至るまで15分程度のタイムラグが生じることが想定されていた。
今回の実証実験では「②リアルタイム事象検知機能」の収集系設備による連続的な情報収集と「①路車間通信機能(V2I)」の通信環境を現場近傍のエッジに於けるローカル処理を行うことで、事象発生から情報提供が行われるまで、従来の分オーダーから秒オーダーへの性能向上を実現、即時対応に向けた有用性が確認できた。
【今後の展望】
NECでは、自動運転時代の高速道路空間の安全性の確保に向け、今回の路車協調実証実験の成果を基に、近未来を高精度で予測する 『サイバーフィジカルシステムの実用化』に向けて、自動運転時代の社会貢献に取り組んで行く構えだ。