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2018年8月9日【オピニオン】

米・テスラのイーロンマスク氏、自社株の非公開化を検討示唆

坂上 賢治

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当時、デルの創業者マイケル・デルCEOは、非上場化が実現すれば、自社が四半期ベースで成長を求める株主のプレッシャーから解放され、シンクライアント(端末で行う処理を軽減し、インターネット環境にあるサーバ側で大半の処理を担う仕組み)と、クラウドコンピューティング(コンピューターネットワーク上からサービス提供を行う仕組み)に心おきなく照準を据えられるようになり、その結果、いずれ大きな成果が得られるだろうと述べていた。

 

実際デルは、程なく約90億ドルの負債を抱えたまま株式を非公開化。これに併せてマイクロソフトからの20億ドルの融資に加え、金融機関からも150億ドルを調達して成長を続け、2018年7月2日、再びニューヨーク証券取引所に株式を再上場。その取引規模は217億ドル(当時貨幣レートで約2兆4000億円)に達した。

 

 

現段階で、テスラに関してその可能性と成果の実現についてはまったく未知数だが、新型EV「モデル3」の生産目標を達成するために、テスラは敷地内の駐車場13万7,250平方フィートに、全長は1,000フィート・幅150フィート・高さ53フィート(1フィートは0.3048メートル)の白いテントを張って、新たな生産ラインを設置。

 

このわずか2週間の期間で設けた巨大テント内の追加生産ラインを既存の生産ラインに加えて、週5,000台の安定生産を精力的に目指している。さしずめマスク氏は、先のスペースX同様、より自由かつハンドリング性の高い経営環境を手にして、自らの経営手腕をより存分に発揮したい意向のようである。

 

(追加)なお本記事上稿後の米国時間8月13日、マスク氏は自社サイトに於いてサウジアラビアの政府系投資ファンドであるPIFこと「Public Investment Fund」と交渉の可能性があるとの情報を発信している。実際PIFはこれまでのテスラへの投資行動を考えると、同社に対する投資意欲が旺盛であることに間違いない。また、もとより同国は現在の石油に依存しきった国家経済からの離脱を強く求めており、米国内のEV事業で先頭を走るテスラにさらなる資金投入するだけの動機もある。

 

ただ仮に、この動きが真実であると仮定し動き始めるにしても、そこで巨額の資金が動くためにヘッジファンド勢などの抵抗勢力の思惑の他、もとよりマスク氏が予てより希望している安定株主がどれだけ確保できるかなどの不確定要素が多い。そこには個人投資家だけでなく、保有株に対して保有制限が掛かりかねない大口の機関投資家の存在もある。今後、サウジアラビアがEV技術に関して存在感を示し、この分野のキャスティングボードを握るまでに至るのか。暫くは今後の動きに注視していきたい。

( MOTOR CARS  )

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。