販売台数4割減で、純損益が2千億円超、通期予想は3千600億円の当期純損益を据え置き
三菱自動車工業が11月4日発表した2021年3月期第2四半期(4~9月)連結決算はグローバル販売台数が4割強落ち込んだことで純利益が2000億円超の赤字となった。通期見通しは前回の赤字予想を据え置いた。加藤隆雄CEO(最高経営責任者)は「構造改革は前倒しで進捗しており、年度末には目標をオーバー達成できそう」と強調、「業績回復の道筋が見えてきた」と述べた。(佃モビリティ総研・松下次男)
2020年度上期のグローバル販売台数は35万1千台で前年同期比41%減の落ち込みとなった。しかし、第1四半期は新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に販売が大きく落ち込んだが、先進国を中心に徐々に「回復の兆しが出てきている」との見方を示した。
一方で、三菱自動車の主力市場であるASEAN(東南アジア諸国連合)市場は「回復が鈍い」と懸念を見せた。
これに伴い2020年度上期の連結業績は売上高が5749億円で前年同期比49・0%減。営業損益が826億円(前年同期102億円)、純損益が2099億円(同26億円)の赤字決算となった。
2021年3月期の通期見通しは販売回復の兆しが出てきたことから、売上高1兆4800億円(前年比34・8%減)、営業損益1400億円(前年同期128億円)、当期純損益3600億円(同258億円の赤字)と前回予想を据え置いた。
2020年度上期の販売台数は全地域で前年同期を割り込んだ。地域別にみると、日本は2万7千台で同48%減。主力市場のASEAN(東南アジア諸国連合)は7万1千台で同53%減となった。
このほか豪州・ニュージーランドが3万台で同33%減、中国・他が5万台で同38%減、北米が5万1千台で同35%減、欧州が7万5千台で同33%減、中南米、中東・アフリカ・他が4万7千台で同36%減となった。
年度末には構造改革で示した「目標をオーバー達成できる」と自信を示す
前年度から業績悪化やコロナ禍の市場低迷に対応して同社は第1四半期決算発表時に、業績回復の指針となる構造改革を公表。この取り組みについて、加藤CEOは「計画を上回る進捗度だ」と述べ、体質改善が急ピッチで進んでいることを示した。
具体的には、間接員労務費の15%削減やマーケティング費用を抑制するとともに、固定費、開発費用の12%削減を進め、目標を達成しつつあるとした。
また、7月に発表したパジェロ製造生産停止や生産ライン統廃合などもほぼ計画通りに進捗していると述べた。これにより年度末には構造改革で示した「目標をオーバー達成できる」と自信を示した。この結果、2021年度には2019年度比で間接費用の20%削減で実現できるとした。
2020年度の通期販売台数見通しについては82万4千台で前期比27%減を予想。地域別内訳では、日本が7万6千台で同20%減、ASEANが21万3千台で同27%減を見込む。
このほか豪州・ニュージーランドが6万8千台で同23%減、中国・他が11万2千台で同22%減、北米が11万3千台で同29%減、欧州が14万3千台で同33%減、中南米、中東・アフリカ・他が9万9千台で同27%減の予想だ。
2020年度の設備投資は1000億円と前期比4%減、研究開発費は1140億円と同13%減、原価償却費は655億円と同12%減と絞り込む計画。期末配当金は見送る予定。
新型車では、強みの環境技術をいかしたプラグインハイブリッド(PHEV)モデルの新型「エクリプス クロス」のグローバル展開を進めるほか、「アウトランダーPHEV」を12月からタイで生産し、ASEAN地域で販売拡大に乗り出す計画だ。
さらにディーラーネットワークやデジタルマーケティングを強化することで販売施策改善を目指すほか、日本に定額サービスの「ウルトラマイカープラン」を導入する。このほか、北米などでもオンライン販売の整備やデジタルマーケティング強化による販売効率改善施策に取り組んでいく考えだ。