NEXT MOBILITY

MENU

2022年3月16日【SDGs】

三菱ふそう、「eキャンター」次世代モデルの試作を初公開

松下次男

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

三菱ふそうトラック・バス(MFTBC、カール・デッペン社長・CEO)は3月15日、電気小型トラック「eキャンター(e−Canter)」の次世代モデルの試験車両を喜連川研究所(栃木県さくら市)で報道陣に公開した。次世代モデルは「多様な機種を用意し、本格的な量産モデルとして投入する」と安藤寛信副社長・開発本部長は強調した。併せて、当日はEV(電気自動車)試験設備の一部を同時に公開した。

 

電動化対応設備は何十億円単位の投資額になる

 

同研究所内の開発設備は、電動化車両開発に対応して大幅に更新、拡充しており、2021年から2022年に掛けてバッテリー分解室やEV試験棟などを新設。今後も投資分を含め、次世代モデルの開発に向けた電動化対応設備は「何十億円単位の投資額になるだろう」との見方を示した。

 

開発設備は電動化のため大幅に更新・拡充させている

 

次世代となる新eキャンターは、合計100万キロメートル以上のテストを重ね、数年以内に投入する計画だ。今回、同社が初めて次世代eキャンターの試験車両を公開したのは、競合他社のEV投入計画が相次いでいるため、EV先行メーカーとしての強みを示す狙いがある。

 

同社の電動化の取り組みは早く、まず1995年にキャンターのHV(ハイブリッド車)モデルのコンセプト車両を開発。当時は、今のカーボンニュートラルに向けた取り組みと環境は異なるが、技術的には「リチウムイオンバッテリーを使うなど継続したものだ」と話す。そして、2010年にはバッテリーEVの試験車を手掛け、ユーザーのもとで実証実験に取り組んだ。

 

次世代車は用途毎に航続距離を選べるようにする

 

こうした活動が2017年の電動小型トラック「eキャンター」の発売に繋がり、2020年には先進安全装備を拡充した改良モデルを投入。
現行モデルは、日本、欧州、米国、オーストラリア・ニュージーランドに合計350台以上導入され、その累計走行距離は450キロメートル以上に達する。日本国内では110台以上の納入実績がある。
一方で、現行モデルは国内や欧州、米国、大洋州などで1車種のみの展開に留まっており、用途が限定的だ。

 

石を敷き詰めた悪路でのテストも披露した

 

これに対し、開発中の次期モデルは大幅に機種を増やし、多様なポートフォリオに対応出来るようにし、「本格的な量産機種として多くのユーザーに使って貰える事を期待している」と述べる。一充電当たりの航続距離についても、現行モデルは100キロメートル(バッテリーパック6個搭載)だが、次世代モデルは基本的に走行距離を伸ばしながらも、多様な機種を用意する計画。
例えば、短距離輸送用向けに100キロ以下も用意し、「用途に応じて航続距離を選べる」ようにする方針。

 

次世代モデルは多様な架装に対応する他、発電機能を備えるタイプも

 

架装についても、現行車はバン、平ボディーなど制約があるが、次世代モデルは多様な架装に対応する。更に次世代モデルは災害時やイベントなどに使える発電機能を備える予定だ。
こうした次世代モデルは目下、喜連川研究所で開発しており、今回の試験車両の公開ではホイールベースや荷台の大きさなどが異なる3台を走行させた。

 

開発に当たっては、製品が世に出て以降、さらされる最も過酷な利用・走行条件を再現可能にする設備を、この研究所内に用意しているとし、今回の実験車両の公開でも、坂道走行の他、石を敷き詰めた悪路でのテスト場面を披露した。

 

欧州規格にも対応したコネクターも備えて実証中

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。