三菱ふそうトラック・バス(MFTBC、カール・デッペン社長・CEO)は3月15日、電気小型トラック「eキャンター(e−Canter)」の次世代モデルの試験車両を喜連川研究所(栃木県さくら市)で報道陣に公開した。次世代モデルは「多様な機種を用意し、本格的な量産モデルとして投入する」と安藤寛信副社長・開発本部長は強調した。併せて、当日はEV(電気自動車)試験設備の一部を同時に公開した。
電動化対応設備は何十億円単位の投資額になる
同研究所内の開発設備は、電動化車両開発に対応して大幅に更新、拡充しており、2021年から2022年に掛けてバッテリー分解室やEV試験棟などを新設。今後も投資分を含め、次世代モデルの開発に向けた電動化対応設備は「何十億円単位の投資額になるだろう」との見方を示した。
開発設備は電動化のため大幅に更新・拡充させている
次世代となる新eキャンターは、合計100万キロメートル以上のテストを重ね、数年以内に投入する計画だ。今回、同社が初めて次世代eキャンターの試験車両を公開したのは、競合他社のEV投入計画が相次いでいるため、EV先行メーカーとしての強みを示す狙いがある。
同社の電動化の取り組みは早く、まず1995年にキャンターのHV(ハイブリッド車)モデルのコンセプト車両を開発。当時は、今のカーボンニュートラルに向けた取り組みと環境は異なるが、技術的には「リチウムイオンバッテリーを使うなど継続したものだ」と話す。そして、2010年にはバッテリーEVの試験車を手掛け、ユーザーのもとで実証実験に取り組んだ。
次世代車は用途毎に航続距離を選べるようにする
こうした活動が2017年の電動小型トラック「eキャンター」の発売に繋がり、2020年には先進安全装備を拡充した改良モデルを投入。
現行モデルは、日本、欧州、米国、オーストラリア・ニュージーランドに合計350台以上導入され、その累計走行距離は450キロメートル以上に達する。日本国内では110台以上の納入実績がある。
一方で、現行モデルは国内や欧州、米国、大洋州などで1車種のみの展開に留まっており、用途が限定的だ。
石を敷き詰めた悪路でのテストも披露した
これに対し、開発中の次期モデルは大幅に機種を増やし、多様なポートフォリオに対応出来るようにし、「本格的な量産機種として多くのユーザーに使って貰える事を期待している」と述べる。一充電当たりの航続距離についても、現行モデルは100キロメートル(バッテリーパック6個搭載)だが、次世代モデルは基本的に走行距離を伸ばしながらも、多様な機種を用意する計画。
例えば、短距離輸送用向けに100キロ以下も用意し、「用途に応じて航続距離を選べる」ようにする方針。
次世代モデルは多様な架装に対応する他、発電機能を備えるタイプも
架装についても、現行車はバン、平ボディーなど制約があるが、次世代モデルは多様な架装に対応する。更に次世代モデルは災害時やイベントなどに使える発電機能を備える予定だ。
こうした次世代モデルは目下、喜連川研究所で開発しており、今回の試験車両の公開ではホイールベースや荷台の大きさなどが異なる3台を走行させた。
開発に当たっては、製品が世に出て以降、さらされる最も過酷な利用・走行条件を再現可能にする設備を、この研究所内に用意しているとし、今回の実験車両の公開でも、坂道走行の他、石を敷き詰めた悪路でのテスト場面を披露した。
欧州規格にも対応したコネクターも備えて実証中