日本のものづくりは、今、大変革の時期を迎えています。そして、今、足下で起きているこの変化は、日本のものづくりのあり方に本質的な変化を求めるものであると認識しています。
具体的には、これまで日本が強みとしてきた、「擦り合わせ」や「自前主義」、「ボトムアップ経営」、こうしたものが、猛烈なスピード感が求められる新たなものづくりの中では、逆に足かせとなり、変革を遅らせてしまう可能性すら出てきているという状況にあります。 また、これからは、既存のプレイヤーに加えて、多様な産業から参入するプレイヤーとの異次元の競争をしていかなければなりません。こうした中で、従来の延長線上の取組では、到底、太刀打ちすることが出来ないのではないかと思います。
一方で、「ものづくり」や「品質」の重要性が失われる訳ではありません。私は先日、墨田区にある中小企業の金属プレス業を視察に行ってまいりました。
その現場で非常に感銘を受けたのは、ロボットや最先端の車椅子を作ろうというアイデアがあったことです。
具体的に図面を引くところまではいったが、なかなかものがつくれないベンチャーの20代、30代の経営者に対して、熟練の金属プレス工が、「ここをこうすれば、こういう風にできるよ」、「試作品を作ってあげるよ」と、今まで彼らがチャレンジしてもできなかったものが、この熟練の金属プレス工にかかったら瞬時に出来てしまう。
その姿を見て、やはり、第4次産業革命の時代においても最後、製品を作るところで、日本のものづくり、そしてこの品質の高さは、引き続き、社会に、そして、世界に必要とされているということを改めて実感しました。
新しいものづくりの姿は、これまで先人たちが築いてこられた礎の上にあると思います。しかし、私たちに求められていることは、日本の従来の強みを大切にしながら、その礎の上に、新たなものづくりの姿を描き、日本が誇るものづくりをもう一段、この第4次産業革命の時代の中で発展させ、高めていくことではないかと思います。
アベノミクスの効果で、足下の経営環境が好調な今こそ、経営トップのイニシアチブで、新たなものづくりを切り拓くための大胆な挑戦に挑んでいただきたいと思います。そうした挑戦の中で、ぜひ、品質保証のあり方についても、位置づけていただきたいと思います。
5. 最後に
最後に、今回問題を起こした企業の報告書や問題を起こしていない企業の取組を見ても、先ほども申し上げましたが、経営トップがどれだけ現場としっかりコミュニケーションができているかという点が非常に重要である、このことをもう一度申し上げさせていただきます。改めて、経営トップのリーダーシップ、そして品質保証に対するコミットメントが問われていると思います。
こうした問題が日本の製造業において、二度と繰り返されることがないよう、本日お集まりの産業界の皆様のリーダーシップに強く期待をして、私の挨拶とさせていただきます。
以 上
関連動画(世耕弘成 経済産業大臣):https://youtu.be/HE9-Tl_AFEU
(参考)議事次第
日時:平成30年6月25日(月曜日)13時30分~15時30分
場所:経団連ホール(経団連会館2階)
(1)挨拶
世耕 弘成 経済産業大臣
(2)挨拶
中西 宏明 (一社)日本経済団体連合会 会長
(3)講演 「企業価値の向上~品質経営とトップの役割~」
坂根 正弘 (一財)日本科学技術連盟 会長
(4)パネルディスカッション(モデレーター:多田製造産業局長)
– 安藤 豊 日本鉄鋼連盟 技術政策委員会 委員長(新日鐵住金(株) 常務執行役員)
– 小河 義美 (株)ダイセル 取締役 専務執行役員
– 平山 智明 ジヤトコ(株) 常務執行役員
(*パネル参加者名は五十音順で記載)
<取材>松下次男( 佃モビリティ総研 )
1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。