しかし、一連の問題が起こっております。そしてこの問題は、「サプライチェーン」という形で様々な企業が繋がっているという点を考えると、先人達が築きあげてきた、日本のものづくりに対する信頼や競争力を全体的に奪いかねない、深刻な問題だと認識しています。
このような現状認識のなかで、不正事案が相次いだ今、経営層の皆さんに、日本のものづくりの競争力の源泉である「品質」を改めて考える契機となる場を設けさせていただき、経営トップ自らのイニシアチブの下で、腰を据えて品質保証体制の強化に努めていただくことが重要だと考えるに至りました。
本日、このように大勢の経営層の皆さんにお越しいただけたことは、品質問題に対する産業界の強い関心を示すものだと思います。早速、今日から、具体的なアクションに結びつけていただきたいと、心からお願い申し上げたいと思います。
3.製造業の品質保証体制の強化に向けて
昨年10月以降の相次ぐ製造業における品質検査データの書換え問題などを受け、経済産業省は、昨年12月22日、「製造業の品質保証体制の強化に向けて」と題する対応策を発表しました。折角の機会ですので、この対応策について改めて、簡単に説明させていただきたいと思います。
まず第1の柱は、民間主導による、自主検査の徹底です。昨年12月、経団連自身が、一連の問題を、我が国企業に対する信用・信頼を損ないかねない重要な事態と受け止め、会員企業などに対して、品質管理に関わる不正事案の点検などを呼びかけました。また、日本アルミニウム協会、日本伸銅協会、日本ゴム工業会、日本化学繊維協会、石油化学工業協会では、業界の自主的な取組として、品質保証に係るガイドラインを策定していただきました。
このような産業界の自主的な取組が進んでいることに、私は大変心強く感じていますが、品質保証体制の強化に終わりはありません。ここで品質問題の議論を終わらせるのではなく、今日のシンポジウムを契機に、今後も産業界全体で一連の問題をフォローアップし、日本のものづくりの競争力の源泉である「品質」を更に高める努力を継続していただきたいと思います。
第2の柱は、コネクテッド・インダストリーズの推進による品質確保の仕組みの構築です。コネクテッド・インダストリーズは、データを仲介して、従来つながっていなかった機械や技術、人などさまざまなものが、組織、国境、業界を越えてつながることにより、新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指す産業のあり方です。