2.シンポジウム開催の趣旨
本日、このシンポジウムを、開催させていただくに至りました思いを、簡単にお話させていただきたいと思います。
昨年10月以降、一部の製造事業者における製品検査データの書換えなどが発覚し、ものづくりに携わる皆さんにとって、また、製造業を所管する経済産業省にとっても、大変ショッキングで残念なニュースが世間を賑わせました。 一連の事案は、各社の品質保証体制に関わることであり、企業経営そのものの問題でもあると認識しました。
私は、この問題が発覚した直後から、まずは安全性検証が最優先課題であると述べてきました。不正事案を起こされた企業には、現在も、それが最終製品の安全性にどういう影響が出ているのか、出ていないのか、その検証を速やかに進めていただくとともに、再発防止策を迅速・確実に実施し、顧客だけではなく社会全体の信頼回復に全力で取り組んでいただくことをお願いしています。
「品質」は、かねてから、日本のものづくりの競争力の源泉の1つとして認識されてきました。徹底したカイゼンやすりあわせ活動を通じ、日本の製造業は、顧客ニーズに即した高品質な製品を追求してきました。こうした先人の皆さんの現場の努力の積み重ねにより形成された、「メイド・イン・ジャパン」の製品は、世界から、非常に高品質であると高い評価を受け、今なお、それは続いています。
私も世界各国様々なところに行きますが、常に、私のカウンターパートの閣僚から出てくるのは、日本の品質の高さ、現場力の強さ、それをぜひ自分たちの国にも教えて欲しい、ということです。
今後、ものづくりの現場を支える技能人材の人手不足や第四次産業革命、Society5.0 が進展する中で、日本のものづくりのあり方は大きく変容していくことが予想されますが、この先のものづくりにおいても、決して、この「品質」の重要性が揺らぐことはありません。
私自身も、様々なものづくりの現場を訪問・視察させていただいておりますが、日本の製造業の現場力は非常に高く、それぞれの製造現場において、日々、血の滲むような努力で、品質の改善・向上に取り組んでいただいていると本当に実感しています。こうした現場を拝見させていただく中で、私は、我が国のものづくりの現場力が弱まっている訳では決してないと痛感しています。