マクラーレン・オートモーティブ・アジア日本支社の正本嘉宏代表
マクラーレン・オートモーティブは11月5日、新型スーパーカー「765LT」の発表会を開催し、その模様をオンライン配信した。LTシリーズの第3弾で、マクラーレンの最高の技術と知見を余すところなく投入した究極のクルマだという。もちろん日本で公開するのは今回が初めてだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
ルマンで優勝したクルマのDNAを受け継ぐ
「LTというのは、ロングテールの頭文字をとったもので、その起源は1990年代の『マクラーレンF1 GTR LT』に遡る。そのクルマはFIAのGT選手権において、全シーズン11戦中5勝を挙げると同時に、その年のルマン24時間レースでも、なんと3位に30周もの圧倒的周回差をつけて1、2フィニッシュを飾った、まさに伝説のレーシングカー。そのスピリットをロードゴーイングカーになんとか投入したいと開発したのがLTシリーズなのです」
マクラーレン・オートモーティブ・アジア日本支社の正本嘉宏代表は発表会の挨拶で、まずLTの由来について説明し始めた。そして、その市販化第1弾が2015年の「675LT」だった。究極のドライブエンゲージメントを提供するクルマとして、当時最もスパルタンなマクラーレンとしてファンの間で話題になった。
第2弾が18年の「600LT」で、徹底した軽量化と圧倒的なパフォーマンス、爆音とともに噴出するユニークなトップエグジット・エキゾーストなどでセンセーショナルなデビューを飾った。「日本でマクラーレンのプレゼンスとビジネスの基盤を形成するのに大きく貢献したモデル」(正本代表)とのことだ。
そして、第3弾となるのが今回の「765LT」というわけだが、正本代表によると、「マクラーレンの最高の技術と英知を結集したクルマで、LTの6つのDNAを持ったクルマだ」という。その6つとは、卓越したドライバーズエンゲージメント、徹底した軽量化、トラック志向のダイナミクス、最適化されたエアロダイナミクス、パワーアップしたエンジン、限定生産である。
最高速度が330km/hで、0-100km/h加速が2.8秒
その中で正本代表が真っ先にあげたのが軽量化だ。マクラーレンは軽量化で有名なブランドだが、765LTは新しいカーボンファイバー製ボディパネル、モータースポーツからインスプレーションを得たポリカーボネート、チタン製エキゾーストシステム、軽量デュアルスプリングサスペンションなどを採用し、細部にわたってグラム単位の軽量化を行ったそうだ。その結果、ベースとなる「720S」よりも80kg軽量化し、乾燥重量はわずか1229kgだ。
パワーアップしたエンジンということでは、4.0LツインターボチャージャーV8エンジンを搭載し、最高出力765PS、最大トルク800Nmで、最高速度は時速330km/h。しかも加速性能も抜群で、0-100km/h加速がわずか2.8秒、0-200km/h加速が7.0秒と異次元だ。「史上最もパワフルなLT」と正本代表が言うのも頷ける。
当然、制動力も優れているのは言うまでもない。最新世代のカーボンセラミックディスクに「マクラーレン セナ」を組み合わせたブレーキシステムは圧倒的な制動力を誇り、どんな過酷な状況においても全幅の信頼をおけるという。例えば、時速100km/hからわずか29.5mで停止できるのだ。
またエアロダイナミクスについては、フロントの大型スプリッターと拡張されたアクティブ・リア・ウィングが、カーボンファイバー製のフロア、ユニークなドア・ブレードやリアの拡張されたディフューザーと組み合わされたことにより、ダウンフォースが720Sに比べて25%増え、すでに秀でたエアロダイナミクス性能を新たな次元に引き上げている。
ロングテールのアクティブ・リア・ウィングを高位置に静止させることにより、ダウンフォースも向上し、エアブレーキの優れた機能性によって、急ブレーキ中もダイブ感が軽減される。これによって、フロント車軸のコンプライアンス特性が改善し、公道での走行がより快適になるそうだ。
「どのロングテールもとても特別なマクラーレンであり、デザイナーとエンジニアに、自分たちはこれ以上何ができるのか、自分たちはどこまで達成できるのかを自問させるマシン。765LTでは、このような問いかけから新しいカーボンファイバー技術が生まれ、大幅な重量削減、LT史上最大の出力とトルク、最速の加速、そしてトライバーとマシンとの高いレベルでの一体感を実現できた」と765LTのプログラム・マネージャーであるフィリポ・ダダモ氏はコメントしている。
765LTは全世界で765台の限定モデルで、2020年生産分はすでに完売しており、「日本でも多くのお客さまからオーダーをもらっている」と正本代表。12月から納入が開始される予定だ。