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2021年2月17日【新型車】

マクラーレン、初のHV「アルトゥーラ」を発表

山田清志

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英マクラーレン・オートモーティブは2月17日、ハイパフォーマンス・ハイブリッド・スーパーカーの「Artura(アルトゥーラ)」を発売すると発表した。アルトゥーラはマクラーレンが初めて量産するハイブリッド(HV)車で、レーシングカーとロードカーのエンジニアリングにおける半世紀以上の専門性と経験を集約したモデルだという。(経済ジャーナリスト 山田 清志)

 

0-100km/h加速はわずか3.0秒

 

「この新しいハイパフォーマンス・ハイブリッドモデルは、マクラーレンの特徴として名高いあらゆるパフォーマンス、ドライバーとの一体感、優れたダイナミクスに、EVモード走行が可能なドライビング性能が上乗せされた。アルトゥーラの登場は、マクラーレンにとって歴史的な瞬間であるばかりでなく、スーパーカー界全体にとっても画期的な瞬間と言えるだろう」とマルク・フル-ウィットCEOはこのクルマに思いを寄せている。

 

 

ベースからすべてを見直したアルトゥーラは、エンジニアやデザイナーにとっても新たな変革を求められたという。特にモーターとバッテリーパックなど、ハイブリッド・パワートレインの要素を加えながら、いかにしてマクラーレンの超軽量エンジニアリングの哲学を守るかが課題だった。

 

そこで、新しいシャシー・プラットフォームであるマクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)を採用するともに、ハイブリッド・パワートレインから電気系統で使われる配線まであらゆる範囲で軽量化に努めた。その結果、乾燥重量1395kgを達成。ハイブリッド・コンポーネントの総重量は130kg(うちバッテリーが88kg、Eモーターが15.4kg)で、DIN車両重量は1498kgとなった。この数字はハイブリッド・パワートレインを搭載しないスーパーカーと同等の重量だという。

 

パワートレインの心臓部は、排気量2993cc、ツインターボチャージャー搭載の新しいV6ガソリンエンジンだ。最高出力は585PSでリッター200PSに迫り、最大トルクは585Nm。アルミニウム製のドライサンプ方式のため、エンジンは軽量かつコンパクトで、わずか160kgとマクラーレンV8よりも50kgも軽く、全長も大幅に短くなってパッケージングの効率性が高まった。

 

 

この新V6エンジンと調和して動くのが、コンパクトな「アキシャル・フラックスEモーター」で、トランスミッションのベルハウジング内に搭載されている。一般的なラジアル・フラックスモーターより小型で電力密度が高く、最高95PS、225Nmを発生。そのため、発進時のパフォーマンスは刺激的なようで、0-100km/h加速はわずか3.0秒、0-200km/hは8.3秒とのことだ。そして最高速度は330km/hに“制限”されているそうだ。

 

走行中にエンジンからバッテリーへの充電も可能

 

そのほか、新しい軽量8速トランスミッションに加え、マクラーレン初の電子制御ディファレンシャルを搭載。既存のトランスミッションより1速増えたにもかかわらず、全長が40mm短縮されている。また、後退はEモーターが逆方向に開店することで担うので、リバースギアが不要になった。

 

バッテリーパックについては、5個のリチウムイオン・モジュールからなり、使用可能な最大電力量は7.4kWhで、EV航続距離は30kmとなっている。プラグインハイブリッド(PHEV)機能も備わっており、標準的なEVSEケーブルを使って2時間半で80%の充電ができる。また、選択した走行モードに応じて、走行中に内燃エンジンからバッテリーに充電することも可能だ。

 

 

インテリアについても、まったく一新され、ステアリングから手を離さずに主要コントロールの操作が可能になっている。8インチHDタッチスクリーンの新インフォテイメントシステムによって、インテリジェント・アダプティブ・クルーズコントロール、レーンデパーチャー・ウォーニング、自動ハイビーム・アシストなど先進運転支援システム(ADAS)のアップデートもしやすくなった。

 

アルトゥーラは現在、マクラーレン正規販売店で注文を受け付けており、納車は今年の第3四半期に始まる予定だ。「パフォーマンス」「テックラックス」など4種類の仕様があり、価格は18万5500ポンドから(日本円で約2600万円から)となっている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。