ロータリーエンジンを11年ぶりに復活させて発電機として使用
マツダは9月14日、ロータリーエンジンを発電機として使用したプラグインハイブリッド車(PHV)「MX-30 Rotary―EV(ロータリーイーブィ)」の予約販売を同日から開始したと発表した。11月から国内で発売する。(佃モビリティ総研・松下次男)
マツダが世界で初めて量産化に成功したロータリーエンジンを復活するのは11年ぶり。
オンラインで開いた新車発表会で国内営業担当の東堂一義執行役員はロータリーエンジンを復活した狙いについて「コンパクトなユニットを作るのに適したエンジンだ」と述べた。
新モデルの特色について上藤和佳子主査は「シリーズ式PHVで走る」ことと強調し、全てのシーンでモーターが駆動する。普段は電気自動車(EV)として使え、EVの使い方を拡張した新しい電動車と話す。
マツダ宇品第一工場から当面は日本・欧州に向けて出荷する
一充電当たりの当たりのEV走行距離は107キロメートル。調査によると、約9割のユーザーは日常の走行距離が100キロ以下とし、EV走行だけで多くの走行シーンをカバーする。「どのクルマよりもEVに近い」とアピールした。
車両は広島(宇品第一工場・広島県南区)で生産し、生産能力は年産約2万台。当面、販売市場はすでに先行予約と始めている欧州と日本のみとし、日本での販売は月間300台を計画する。
MX-30は、マツダの電動化を主導するモデルとして開発し、これまでにバッテリーEVとマイルドハイブリッドモデルを国内に導入済みだ。
マツダは車両電動化について完全にEVに移行するまでにはまだ時間がかかると見ており、しばらくは各市場のエネルギ事情に応じてマルチパスウエイで展開する考え。
ロータリー高出力化の鍵となったのは燃料噴射を直噴化したこと
その一つとしてPHVモデルを追加、投入することにしたもので、その発電用にロータリーエンジンを採用。ロータリーエンジンはコンパクトにユニット化できるのが特色で、小型車のハイブリッド化に適したエンジンという。
2012年の量産終了後もロータリーエンジンの開発は継続しており、今回のPHVモデルに搭載したロータリーエンジンは1から設計し、鋳鉄製だったサイドハウジングをアルミ化するなどで高出力で、より小型化を実現した。
その高出力化の鍵となったのは、燃料供給を直噴化したこと。しかしレシプロエンジンの直噴化とは異なり、三角形状の燃焼室容量が変化しつつ順次移動してサイクルが進むロータリーエンジンでの直噴化は簡単なことではなかった。
ロータリー・パワートレインの開発に取り組んだ富澤和廣エンジン主査によると、多くの試作ユニットを試作して最も燃焼効率が高いものを探し出す試行錯誤は困難を極めたという。結果、採用したロータリーエンジン(型式:8C)は旧来の13B-MSP(RENESIS型)とトロコイド寸法(ローターの円周運動が描く曲線形)自体も全く異なる0・830リットル、水冷1ローターで、ハイブリッド燃料消費量は1キロリットル当たり15・4キロ(WLTCモード)。
年間生産台数は2万台、価格は423万円とBEVより抑える
モーターは最高出力が125キロワット、最大トルクが260ニュートンメートル。ここで過去を振り返ると、そもそもMX−30EVのエンジンルームには、不思議な程の空間的余裕が残されていたが、丁度、そこに発電機と同軸で繫がるロータリーエンジンを組み込み、土井純一電気駆動主査によると極めてコンパクトな設計とした駆動用モーターに電力を供給する仕組みとなっている。
ちなみに搭載される燃料タンクは50リットル。これによりロータリーエンジンで発電した電力を貯めていくシリーズ式プラグインハイブリッドとなっているため、充電の不安なく長距離ドライブが可な仕様に纏め上げた。
また、用途に合わせて使い分けられる2種類のAC電源を設置しており、アウトドアで家電製品が使用できる。災害時には、17・8キロワットアワーのバッテリー満充電と燃料タンク満タンのロータリーエンジンの発電を組み合わせれば、約9・1日分の電力供給が可能だ。
希望小売価格は423万5000円~491万7000円。バッテリーを小さくすることで、バッテリーEVモデルに比べて価格を抑えた。