マツダが新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)-X」の本格投入を開始した。第2世代スカイアクティブ技術搭載の商品群にシリーズ化し、ガソリン、ディーゼルそれぞれのエンジンの良さを併せ持つ環境に優しい第3のエンジンとしてアピールする。実際に試乗してみると「スムーズな加速性能。応答性の良さ。内燃機関とは思えないほどの静粛性を実感し、従来のエンジと歴然とした違い」が分かった。(佃モビリティ総研・松下 次男)
電動化でサポートするマイルドハイブリッド「M Hybrid」と組み合わせて実現
マツダはスカアクティブ-X(排気量2リットル)搭載車の「マツダ3」を2019年12月5日から、同搭載車第2弾のSUV「CX-30」を2020年1月16日から発売した。第2世代スカイアクティブ技術搭載車の第1、第2弾の車両であり、発売当初からスカイアクティブ‐Xをメインのパワートレインの一つとしてラインナップしていた。それが車両投入から半年前後を経てようやく市販化が実現した。
スカイアクティブ-Xは、ガソリンエンジンにおける圧縮着火を世界で初めて実用化。ガソリンエンジンが持つ「出力」「暖房性」「排気浄化性」、ディーゼルエンジンが持つ「燃費」「トルク」「レスポンス」それぞれの特性を兼ね備える。市販化は電動化でサポートするマイルドハイブリッド「M Hybrid」と組み合わせて実現した。
マツダはスカアクティブ-X開発の狙いについて、長期的なCO2(二酸化炭素)削減目標の達成には電動化技術の追加が不可欠としながらも、ウェル・ツー・ホイール(油性から車軸まで)の観点から「内燃機関の搭載がしばらく続く」(中井英二執行役員パワートレイン開発本部長)と判断。これを踏まえ、内燃機関改善の重要性を訴え、追求する。
「内燃機関の革新」プラス「xEV(電動化)技術の追加」が将来においても大多数を占めると考えており、2030年までにマツダはすべてのパワートレインを電動化する計画だが、パワーユニットの95%は「内燃機関+電動化技術」が占めると予測。残りの5%がバッテリーEVの比率になるとみている。
使う燃料が少ない「リーン」にディーゼルエンジン技術の「圧縮着火」を応用させた
これに合わせて、マツダは内燃機関の理想の燃焼追求に向けたロードマップを作成。ファーストステップとして高圧縮比を実現したガソリンエンジン「スカイアクティブ‐G」を実現。続く、セカンドステージとしてこの燃焼技術を発展させ、使う燃料が少ない「リーン」にディーゼルエンジン技術の「圧縮着火」を応用、開発したのが「スカイアクティブ‐X」だ。
それが「火花点火制御圧縮着火(SPCCI)」方式であり、混合気が多数点で圧縮着火し、圧縮着火による高い効率燃焼により、走りと環境性能を両立させることに成功、実現したものだ。スカイアクティブ‐Gに比べて、燃費改善効果で10~20%向上し、ダイレクトで伸びの良い走りを可能にした。
実際に、横浜で試乗の機会を得て、スカイアクティブ‐Xと同‐Gそれぞれのエンジンを搭載したマツダ3を乗り比べてみたところ、その違いが歴然と分かった。スカイアクティブ‐Gエンジン搭載車両でも加速に問題はないが、スカアクティブ-X搭載車はさらに「スムーズな走り」を実現し、加速走行では「思って通りの感触、走り」を体感した。
しかも、内燃機関搭載車と思えないほど「車内は静かで、低い声でも十分に会話できる空間」だった。SUVのCX-30での試乗でも、描いた通りにコーナリングを駆け抜け、加速もスムーズ。また、マイルドハイブリッドにより、アイドリングストップ時からの再始動も「静かに、快適に」立ち上がった。
燃費規制強化が進む欧州では、マツダ3の受注のうちスカイアクティブ‐X搭載車が約6割
マツダによると、スカアクティブ-Xを購入したユーザーからは「静かなディーゼルという感じ」「滑らか」「断然、気持が良い」などの好評価を得ているという。燃費規制強化が進む欧州では、マツダ3の受注のうちスカイアクティブ‐X搭載車が約6割を占める。
今後、第2世代スカイアクティブ技術としてマツダはスカアクティブ-X搭載車を他車種へも広げていく考えだが、課題となるのが部品点数拡大に伴う価格アップ分を、環境や運転性能など良さでどう訴求するか。
スカイアクティブ-Xは高燃圧噴射システム、クールドEGRシステム、三元触媒にガソリンパティキュレートフィルター、さらにマイルドハイブリッドなど数点の追加部品が必要で、スカイアクティブ-G搭載車に比べて約70万円割高となる。販売店では、特設コーナーを設けなど、スカアクティブ-Xの効果をユーザーに積極的に働きかけていく方針だ。