NEXT MOBILITY

MENU

2024年7月2日【MaaS】

LGES、ルノー傘下のアンペアにEVバッテリーを供給

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

EV激戦地の欧州に於いて、LFP蓄電池の競争力が認められる

 

LGエナジーソリューション( LGES )は7月1日( フランス・パリ発 )、長年の顧客関係が続くルノーグループ傘下のEV専業メーカー「アンペア( Ampere )」にリン酸鉄リチウム( LFP )パウチ型EVバッテリーを供給すると発表。両社は同日、フランス本国のルノー本社で供給契約を締結した。

 

署名式には、LGエナジーソリューションの執行副社長兼先進自動車用バッテリー部門責任者のソ・ウォンジュン氏、同社・執行副社長兼先進自動車用バッテリー開発センター責任者のチェ・スンドン氏、ルノーグループの最高調達・パートナーシップ・広報責任者のフランソワ・プロヴォ氏、ルノーグループの最高技術責任者のジル・ル・ボルニュ氏、ルノーグループの最高戦略責任者兼アンペールの最高執行責任者のジョゼップ・マリア・レカセンス氏、アンペアのパワートレインおよびEVエンジニアリング担当上級副社長のフィリップ・ブルネット氏が出席した。

 

同契約に基づきLGエナジーソリューションは今後5年間( 2025年後半から2030年まで )、アンペアにLFPバッテリーを供給する予定であり、その総容量は約39GWh。それは約59万台のEVを生産するのに充分な総量規模となる。

 

またこれは、これまで韓国以外のメーカーが市場を独占していたLFP EVバッテリーに係る初の大規模供給契約であり、EVの3大市場のひとつである欧州に於ける契約であるゆえに重要な意味を持つ契約となる。

 

そんなLFPバッテリーは、NCMバッテリーに使用される材料よりも安価で、化学構造が安定した鉄とリン酸を組み合わせて使用しており、コストと安全性の面で充分な競争力が確保されるとLGESでは謳っている。

 

CTP溶液適用のパウチ型電池でコスト競争力と安全性を確保

 

この取引は、同社にとってEV向けLFPバッテリーの初の大規模供給となり、製品ポートフォリオの拡大とエントリーレベルの市場セグメントへの参入となる。またそもそも近年は、手頃な価格のエントリーレベルのEVの需要が高まっていて、LFPバッテリーの需要もこれに沿う格好で高まっていた。

 

アンペアに提供するLFPバッテリーは、製造工程にCTP( Cell To Pack / セル・トゥ・パック )ソリューションを導入することで価格競争力を獲得。コスト競争力と安全性という相反する品質を保証できる。ちなみに、このCTP技術とは、モジュール段階をなくし、セルをすぐにパック構造する組立技術を指す。

 

 

その技術的背景は、一般的なバッテリー構造に比べ、モジュールフリーの利点により、コストと重量を削減し、スペース利用率を高めることができことが優位点だ。CTPソリューションは現段階に於いて、EVバッテリー技術の最先端とみなされており、LGエナジーソリューションは、世界で初めてこの技術をパウチ型バッテリーに適用した。

 

このCTP溶液を封入したパウチ型バッテリーは、角柱型CTPバッテリーと比較して重量あたりのエネルギー密度が約5%高く、EVに高いエネルギー効率を提供できる上、バッテリーパックの強度を高められる。

 

加えて自社が長年温めてきた実証済みの熱伝達防止技術を適用することによって、バッテリー自体の安全性も向上させられるという。なおバッテリー自体の製造については、LGエナジーソリューションのポーランド工場で製造され、アンペアの次世代EVモデルに搭載される予定だ。

 

強力な製品ポートフォリオを通じて差別化可能な顧客価値を提供へ

 

今回の供給契約についてLGエナジーソリューションの執行副社長兼先進自動車用バッテリー部門責任者であるウォンジュン・ソウ氏は、「当社は圧倒的な技術力と品質競争力を通じて、アンペアに最高の顧客価値を提供します」と語った。

 

またルノーグループの最高調達・パートナーシップ・広報責任者フランソワ・プロヴォスト氏は、「当社はLGエネルギーソリューションと協力し、欧州で統合バリューチェーンを構築しました。当社の長期にわたる関係により、技術と競争力の面でこの独自のソリューションを構築することができました」と述べている。

 

なおLGエナジーソリューションは、最新の供給契約により、高ニッケル NCMA、高電圧中ニッケル NCM、LFP など、様々な化学物質を網羅するパウチ型バッテリーの製品ポートフォリオを大きく拡大しつつある。

 

このような幅広い製品は、高級EVからより手頃な価格のエントリー レベル セグメントの車両まで、多様なユーザーニーズに応えることができる。それゆえLGエナジーソリューションのデビッド・キムCEOは、「アンペアとの提携により、当社の比類のない製品競争力と差別化された顧客価値が改めて認められました。

 

今後は欧州市場を皮切りに、車載用LFPバッテリーの供給を本格的に拡大していく予定です。我々は、実績のある優れた製造技術と差別化された製品ポートフォリオを通じて、世界最高の顧客価値を提供し続けていきます」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。