EV激戦地の欧州に於いて、LFP蓄電池の競争力が認められる
LGエナジーソリューション( LGES )は7月1日( フランス・パリ発 )、長年の顧客関係が続くルノーグループ傘下のEV専業メーカー「アンペア( Ampere )」にリン酸鉄リチウム( LFP )パウチ型EVバッテリーを供給すると発表。両社は同日、フランス本国のルノー本社で供給契約を締結した。
署名式には、LGエナジーソリューションの執行副社長兼先進自動車用バッテリー部門責任者のソ・ウォンジュン氏、同社・執行副社長兼先進自動車用バッテリー開発センター責任者のチェ・スンドン氏、ルノーグループの最高調達・パートナーシップ・広報責任者のフランソワ・プロヴォ氏、ルノーグループの最高技術責任者のジル・ル・ボルニュ氏、ルノーグループの最高戦略責任者兼アンペールの最高執行責任者のジョゼップ・マリア・レカセンス氏、アンペアのパワートレインおよびEVエンジニアリング担当上級副社長のフィリップ・ブルネット氏が出席した。
同契約に基づきLGエナジーソリューションは今後5年間( 2025年後半から2030年まで )、アンペアにLFPバッテリーを供給する予定であり、その総容量は約39GWh。それは約59万台のEVを生産するのに充分な総量規模となる。
またこれは、これまで韓国以外のメーカーが市場を独占していたLFP EVバッテリーに係る初の大規模供給契約であり、EVの3大市場のひとつである欧州に於ける契約であるゆえに重要な意味を持つ契約となる。
そんなLFPバッテリーは、NCMバッテリーに使用される材料よりも安価で、化学構造が安定した鉄とリン酸を組み合わせて使用しており、コストと安全性の面で充分な競争力が確保されるとLGESでは謳っている。
CTP溶液適用のパウチ型電池でコスト競争力と安全性を確保
この取引は、同社にとってEV向けLFPバッテリーの初の大規模供給となり、製品ポートフォリオの拡大とエントリーレベルの市場セグメントへの参入となる。またそもそも近年は、手頃な価格のエントリーレベルのEVの需要が高まっていて、LFPバッテリーの需要もこれに沿う格好で高まっていた。
アンペアに提供するLFPバッテリーは、製造工程にCTP( Cell To Pack / セル・トゥ・パック )ソリューションを導入することで価格競争力を獲得。コスト競争力と安全性という相反する品質を保証できる。ちなみに、このCTP技術とは、モジュール段階をなくし、セルをすぐにパック構造する組立技術を指す。
その技術的背景は、一般的なバッテリー構造に比べ、モジュールフリーの利点により、コストと重量を削減し、スペース利用率を高めることができことが優位点だ。CTPソリューションは現段階に於いて、EVバッテリー技術の最先端とみなされており、LGエナジーソリューションは、世界で初めてこの技術をパウチ型バッテリーに適用した。
このCTP溶液を封入したパウチ型バッテリーは、角柱型CTPバッテリーと比較して重量あたりのエネルギー密度が約5%高く、EVに高いエネルギー効率を提供できる上、バッテリーパックの強度を高められる。
加えて自社が長年温めてきた実証済みの熱伝達防止技術を適用することによって、バッテリー自体の安全性も向上させられるという。なおバッテリー自体の製造については、LGエナジーソリューションのポーランド工場で製造され、アンペアの次世代EVモデルに搭載される予定だ。
強力な製品ポートフォリオを通じて差別化可能な顧客価値を提供へ
今回の供給契約についてLGエナジーソリューションの執行副社長兼先進自動車用バッテリー部門責任者であるウォンジュン・ソウ氏は、「当社は圧倒的な技術力と品質競争力を通じて、アンペアに最高の顧客価値を提供します」と語った。
またルノーグループの最高調達・パートナーシップ・広報責任者フランソワ・プロヴォスト氏は、「当社はLGエネルギーソリューションと協力し、欧州で統合バリューチェーンを構築しました。当社の長期にわたる関係により、技術と競争力の面でこの独自のソリューションを構築することができました」と述べている。
なおLGエナジーソリューションは、最新の供給契約により、高ニッケル NCMA、高電圧中ニッケル NCM、LFP など、様々な化学物質を網羅するパウチ型バッテリーの製品ポートフォリオを大きく拡大しつつある。
このような幅広い製品は、高級EVからより手頃な価格のエントリー レベル セグメントの車両まで、多様なユーザーニーズに応えることができる。それゆえLGエナジーソリューションのデビッド・キムCEOは、「アンペアとの提携により、当社の比類のない製品競争力と差別化された顧客価値が改めて認められました。
今後は欧州市場を皮切りに、車載用LFPバッテリーの供給を本格的に拡大していく予定です。我々は、実績のある優れた製造技術と差別化された製品ポートフォリオを通じて、世界最高の顧客価値を提供し続けていきます」と結んでいる。