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2023年4月17日【イベント】

ランチア、新生ブランドの概念を「プーラHPE」に込める

坂上 賢治

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ランチア(Lancia)は4月15日、本国に於いて記者会見を開き、その壇上で新生ブランド「Lancia」の旗揚げとなるコンセプトモデル「Pu+Ra(プーラ)HPE」を発表した。( 坂上 賢治 )

 

このPu+Ra HPEは、電動モーターを搭載したピュアEVで航続距離は700km以上、エネルギー消費量は100kmあたり10kWh以下とする性能基準を見据え、来たるべき市販モデルへの橋渡しとして公開したモデルとなる。

 

 

なお車体各部で特に内装の造り込みにあたっては、イタリア・ミラノの家具ブランド「カッシーナ/Cassina S.p.A.」とのコラボレーションを推し進め、イタリアらしさ溢れる「親しい人達との交流を演出する環境づくり」を見据えた〝暖かさと華やかさ〟を表したという。

 

ランチアが、このような空間作りを目指した理由は、あえて利便性を追求する事をしないイタリアのリビングのような寛ぎの空間を体現したためとしており、それは世界各国の都市で雨後の筍のように流行したシアトルスタイルのカフェとは異なり、バルで友人達と長い時間を過ごす事を好むイタリア人らしい生き方を、クルマのエクステリア&インテリアデザインへ移植したもの。

 

 

ちなみにイタリアの住宅では、美しい装飾品で飾られている設えが少なくないが、それはイタリア人が住宅というパーソナルスペースそのものを「社交の場」と見なしているためであり、今回ランチアは、そうしたSAVOIR VIVERE(サボア・ヴィーブレ/生きるためのノウハウ)を新たなブランドコンセプトして持ち込んだと言えるだろう。

 

 

そんなLancia  Pu+Ra HPEについてルカ・ナポリターノCEOは、「本日、ランチアはPu+Ra HPEを発表します。このコンセプトカーは、ランチアを次の100年を目指すべく、作られた少なくとも今後10年間のブランドビジョンを示すクルマです。

 

この〝Pu+Ra〟はランチアの新たな新たなデザイン言語を指すもので、HPEはHigh Performance Electricの略語です、同時にHPEは1970年代にランチア・ベータに初めて使用され、スポーティさと実用性を併せ持ったhigh performance estateの頭文字からインスパイヤされたものでもあります。

 

 

また同車は、ステランティス傘下で初のS.A.L.A.バーチャルインターフェイスであるTAPE技術 (Tailored Predictive Experience) を採用したモデルであり、車室内で呼び掛けるだけでオーディオ、気候制御、照明機能などの車内環境を変化させる事が出来るクルマとなります。

 

そうした考え方の核心には、昨年11月発表の円や三角形の組み合わせで構成したデザインビジョンLancia Pu+Ra Zeroに沿ったものとなっています。

 

車体色のプログレッシブ グリーンは、ブランドの未来を見据えたプログレッシブさに加え、サステナブルさ表すグリーンを組み合わせて名付けたもの。

 

 

その青みがかったグリーンは、最新の液体金属顔料を使って生み出されたもので、かつてのランチアブランドのアッパーモデル〝ランチア・フラミニア・アズーロ・ヴァンセンヌ〟へのオマージュが込められています。

 

車体側面のバッジには、ブランドの新しいビジュアルアイデンティティを表現する新しいランチアのロゴが掲げました。このバッジには、過去のランチアが辿ってきた歴史的な特徴(ステアリング ホイール、バナー、シールド、スピア、レタリングなどのキーワード)を現代風に再解釈しています。

 

 

車体前面は、そうした見地から伝統のデザイン解釈をグリルデザインとして表現。それは3つの光線が交わる事で未来へと向かうブランドの先進性を表しています。

 

そこから続くルーフには、自然光を室内に取り入れるべく外界と繫がった円形の開口部を持ち、更にリアウィンドウには70年代のベータHPEを彷彿とさせるサンブラインド構造をフィーチャーした水平線を取り入れています。

 

インテリアデザインには、先の通りでカッシーナとのパートナーシップを継続。その出発点は、自宅にお客様をお迎えするイタリアの住宅のリビングルームを表現する事にあります(その理由は前述の通り)。

 

 

そのコンセプトは、ヴィコ・マジストレッティ(Vico Magistretti/イタリア・ミラノの建築デザイナー)がデザインしたマラルンガ・アームチェアにインスパイアされた天然のウール布張りのラウンドカーペットとフロントシートの造形でも明らかです。

 

独立した2つのシングル アームチェアは、独特のプロポーションと独特の大胆な色彩を与えました。幾何学的形状のウンドテーブル、センター コンソール、ダッシュボードにも同じコンセプトが取り入れられています。また個々の素材はサステナブル素材を活用。室内で乗員が触れる部分は環境に優しい素材となっています。

 

室内下部には、暖かく快適なビロードのようなヌバックとし、イタリアのインテリア企業のPoltrona Frau(ポルトローナ・フラウ/Cassina S.p.A.、 JANUS et Cie、 Karakter ApSの親会社)のクロムなめしのない認定サプライチェーンを介してイタリアで国内の生産材を使用しています」と話す。

 

 

加えて今後採用・搭載されるパワーユニットについてナポリターノCEOは、「2024年にハイブリッドと電気の両バージョンで新しいイプシロンを。2026年からは100%EVのみを発売し、2028年からは新しいデルタの登場と同時にEVモデルのみのブランドとなります。

 

そもそもランチアは、シティカー、フラッグシップ、コンパクト セダンという3つの主要カテゴリで自動車の歴史を塗り替える様々なモデルを生み出して来ました。

 

今後もランチアは、この3つのセグメントす全てで最上質の製品を提供します。コンパクトで機敏で運転も愉しめる新たなランチアは、時代を超越したエレガンス、イタリアンスピリット、イノベーションを追求していきます」と宣言した。

 

最後にLancia  Pu+Ra HPEの公開に併せて、同コンセプトカーの予告映像の第一弾が、同ブランドのYouTubeチャンネルで公開されている。今後、こうしたエピソード映像が順次公開されていく予定であると結んでいた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。