KOBELCO(神戸製鋼所)は2月24日、同社が開発し、世界で初めて量産化に成功した「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン※1」(以下、NCチタン)が、2020年12月に発売されたトヨタ自動車の燃料電池車新型「MIRAI」に採用され、また、優れた技術により新型「MIRAI」の商品力向上に貢献したことを評価され、トヨタ自動車よりFCV20年モデルのプロジェクト表彰※2を受賞したことを発表した。
※1 NCチタンとは、KOBELCOが開発した「Nano-Carbon composite coatチタン」の略称。燃料電池セパレータに求められる耐食性、表面導電性、成形性等の性能を兼ね備えた表面処理チタン圧延材。
※2 プロジェクト表彰とは、トヨタ自動車が手掛けるプロジェクトにおいて、初めて搭載する新開発部品・資材及びその車両の製造に初めて採用する新開発設備・工法などの優れた技術によって、商品力向上に貢献した仕入先を表彰する賞。
NCチタンが採用された部位は、燃料電池車の発電装置である燃料電池スタック※3のセパレータ※4。セパレータに使用される素材には耐食性、表面導電性、成形性といった性能が求められる。
※3 燃料電池スタックとは、水素と酸素を反応させて電気を取り出す発電装置。セパレータ2枚1組の最小発電単位である“セル”を複数(新型「MIRAI」では330枚)組み合わせて構成されている。
※4 セパレータとは、燃料電池内で燃料ガスや空気を遮断する役割を果たす板状の部品。燃料となる水素と酸素を流す流路(=細かな溝)を構成するとともに、発生した電気を流す役割を担っている。
KOBELCOグループは、多様な事業を営む企業の特徴を活かし、素材系事業のチタン圧延材製造技術、表面処理技術と、機械系事業の真空表面処理技術とその設備技術を融合したシナジー効果により、これらの要求性能を満たしたNCチタンの開発に成功した。
チタンの特長は、鉄鋼材料やアルミなど他の⾦属材料よりも耐食性に優れ、比重は鉄の60%程度と輸送機の軽量化の進展に非常に適した金属材料であること。このチタンに表面導電性を付与して高耐食性との両立を実現したことが、NCチタンの最大の特長である。また、NC チタンはプレス成形にも耐える成形性も兼ね備えており、圧延コイルに予めNC表面処理を施しておくことで、プレス成形後の表面処理が不要となった。これにより、NCチタンは燃料電池スタックの更なる小型・高性能化、ならびに、飛躍的な生産性向上にも貢献している。
KOBELCOグループは、新しい価値を提供し得る要素技術や研究開発体制を備え、独自の製品・技術・サービスの提供により、政府が宣言した2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン社会へ貢献することを目指している。
今回開発したNCチタンの特長は以下の通り。
1.開発の経緯
2014年に発売された初代「MIRAI」のセパレータにもKOBELCOの特殊チタン圧延材が採用されていた。この特殊チタン圧延材では、特長である高耐食性を生み出す材料表面の酸化被膜により導電性が乏しくなるという課題があり、プレス成形後に導電性を付与するための表面処理という工程が必要となっていた。
2.開発した技術
従来からあるKOBELCOのチタン圧延材製造技術に加え、今回新たに当社が有する表面処理および設備技術を活用し、チタンの酸化被膜中に導電体であるナノサイズのカーボンを分散含有した表面層を付与することで、2014年2月にセパレータに最適な「NCチタン」の開発に成功した。
3.量産技術の開発
その後2014年11月よりNCチタンの量産技術をトヨタ自動車と共同開発した。この量産化の過程においては、KOBELCO機械事業部門の真空表面処理技術をNCチタン製造工程に適用し、KOBELCO独自の連続表面処理設備を製作するなど、KOBELCOならではの素材系および機械系事業のシナジー効果を発揮して、このたび量産化に成功した。