神戸製鋼所は11月12日、燃料電池セパレータ用チタン圧延材である「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」(以下「NCチタン」)が、一般財団法人素形材センター主催の「第37回 素形材産業技術賞」において、「経済産業大臣賞」を受賞したと発表した。
NCチタンは、当社技術開発本部と素形材事業部門が材料開発し、機械事業部門の持つ設備技術を融合し、トヨタ自動車と共に世界で初めて量産化に成功したもので、今回、トヨタ自動車と共に受賞した。
なお、素形材産業技術賞は、優秀な素形材産業技術の開発等により、わが国素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献した技術の開発者を表彰するもの。毎年11月は経済産業省が定める「素形材月間」であり、素形材センターによる月間行事の一環として、11月5日に「素形材月間記念式典」の中で表彰式が行われた。
■受賞技術の概要
受賞テーマ:「ナノカーボン複合被膜チタン材とプレス成形性を具備させる表面処理技術及び連続熱処理設備の開発による燃料電池セパレータの量産化」
燃料電池セパレータ用材料は、水素・酸素等の流路を形成するとともに電極を構成することから、高い耐久性・導電性が求められる。耐久性・導電性を付与するために表面コーティングが必要となり、主なコーティングの種類には、貴金属とカーボン・導電性酸化物等の2つがある。其々の課題として、貴金属コーティングは高価であること、一方、カーボン・導電性酸化物等のコーティングは流路形成のためのプレス成形時に剥離するため、プレス後にシート状のセパレータにバッチ式での表面処理が必要となり、生産性が低いことがあげられる。
これらの課題に対し、神戸製鋼所ではチタン表面の酸化被膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有することで高い耐食性と導電性を両立することに成功し、NC(Nano-Carbon composite coat:ナノカーボン複合被膜)チタン材として開発した。また、生産性の面では、トヨタ自動車と共同で量産技術開発に取り組むと共に、神戸製鋼所機械事業部門の真空表面処理・設備技術を活用して、独自の連続熱処理設備を新たに設計・開発することで、コイルでの連続表面処理技術を確立した。これにより、NCチタンはプレス成形にも耐える表面被膜を有し、また、コイルでの連続表面処理を施したコイル材として提供することが可能となり、従来必要であったセパレータ製造工程におけるシート状でのバッチ式表面処理が不要となった。
今回の開発により、高価な貴金属類を用いることなく、NCチタンの高い耐食性と導電性により燃料電池スタックの小型・高性能化に寄与するとともに、プレス成形性と表面処理済みコイル提供によりセパレータ製造の飛躍的な生産性向上に貢献することが可能となった。
NCチタンは既に量産製造・出荷しており、2020年12月より販売されているトヨタ自動車の燃料電池自動車 新型MIRAI向け燃料電池セパレータ用材料として量産採用されている。