積極的な技術連携により2039年迄のカーボン・ネット・ゼロを目指す
ジャガー・ランドローバージャパンは11月7日、英国本社がワイドバンドギャップ半導体開発の米ウルフスピード(Wolfspeed, Inc.、本社:リサーチトライアングルパーク、CEO:グレッグ・A・ロー)と戦略的パートナーシップを結んだ事を発表した。( 坂上 賢治 )
このウルフスピードは、 ノースカロライナ州立大学の卒業生が中心となって1987年7月に設立された研究開発企業だ。彼らは、実験室の現場でシリコン結晶を成長させる方法を独自に考案。半導体と照明の両方で商業利用するべくSiC(炭化ケイ素/シリコンカーバイド)製造を目的とした新会社を立ち上げた。
こうした経緯のため、ウルフスピードは現在もSiCとGaN(窒化ガリウム)デバイスに特化しており、主に輸送、電源、パワー インバーター、ワイヤレス システムなどの電力分野、無線周波数アプリケーション分野に焦点を当てた材料を開発・製造している。
今回、英ジャガー・ランドローバー(JLR/Jaguar Land Rover)本社が、米国のニュージャージー州マーワ(10月31日)でウルフスピードと戦略的パートナーシップを締結した理由は、ウルフスピードから次世代電気自動車向けのSiC半導体の供給を受ける事で、BEV搭載のパワートレインの効率性向上と航続距離の飛躍的な伸長を実現するためのもの。
元々JLRは、自社が掲げる「REIMAGINE(リーイマジン/新創造)」戦略に基づき、来たる2039年迄に自社のサプライチェーン・製品・サービス・オペレーション全体でカーボン・ネット・ゼロ(温室効果ガス排出量ゼロ)を目指しており、今もなお車両の電動化転換を精力的に推し進めている。
まずは2024年に新レンジローバーを、更には新世代ジャガーの発表へ
またそもそもウルフスピードとは、予てより共に手を携えFIAフォーミュラE世界選手権に「ジャガーTCSレーシングチーム」として挑戦。開発されたレーシングマシンは既に数度の優勝を手にしてきたという経緯もある。
こえした成果を踏まえ今提携では、ウルフスピードのSiC技術を車載電動モーターへの電力伝送を担うインバーター装置へ注入。まずは新たなレンジローバーを2024年に送り出し、更にその翌年には新しいジャガーのBEVモデルの発表を繰り出していく予定だ。
なお同提携により、JLRはウルフスピードによる「Assurance of Supply ProgramTM(供給保証プログラム)」に参加する事になり、この結果、将来のサプライチェーンの透明性と管理能力をより強固にした格好となる。
より具体的には、ウルフスピード側がJLR車に係る400Vから800Vに至る電力供給技術を保証。2022年4月にウルフスピードがニューヨーク州マーシーに設けた自社の世界最大の200mm SiC製造拠点(モホークバレー工場)でに於いて、新SiCパワーデバイスが製造される予定となっている。
ちなみにこうしたテクノロジー企業との技術提携は、2022年2月のNVIDIA(自動運転システムの研究開発)との連携に次ぐ取り組みであり、英JLRでは、こうした連携こそが自社の未来を託す新型モデルを市場へ送り出すための戦略の一環だと述べている。