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2024年9月26日【新型車】

ジープ・ブランド初のBEV「アベンジャー」発売

松下次男

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ステランティスジャパン(東京都港区、打越晋社長)は9月26日、ジープ・ブランド初の電気自動車(EV)ジープ「アベンジャー(Avenger)」を同日から発売したと発表しいた。新モデルは取り回しのよいコンパクトSUVで、かつ本格的なオフロード走行が可能な6つの走行モードが選べるのが特徴だ。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

東京都内で開いた新車発表会で打越社長は「アベンジャーはこれまでのEVとは別のカテゴリーにあるといっても過言ではない。お客様に探究心、冒険心を呼び起こす起爆剤になってほしいと願っている」とアピールした。 

 

アベンジャーは2022年10月のパリモーターショーで発表。2023年1月から欧州向けに生産、販売を開始した。プロダクト・ジェネラルマネージャーの渡邊由紀氏によると、これまでに欧州で「受注が10万台を超える」ヒット車となっており、欧州カーオブザイヤーなども受賞。

 

ジープ車のラインナップでの位置づけは最もコンパクトなSUVであり、渡邊氏はアベンジャーについて「より女性に多くアピールできるモデル」と話した。同車はポーランドのティヒ工場で生産されている。

 

EV市場の動きをみると、わが国では2023年の販売台数で輸入EVが国産EVを上回り、輸入EVが日本のEV市場をけん引する。一方で、グローバルではEV市場の減速感も目立つ。

 

こうした動き踏まえ、打越社長はアベンジャー発表会でEVを初めとした新型投入計画について次のように述べた。

 

「ステランティスジャパンは7つブランドを擁し、そのすべてのブランドで電動化を達成済み。そしてステランティスの強みである多様性を一段と高め、お客様へ更なる喜びを提供するためにバッテリーEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、マイルドハイブリッド車、そしてガソリン車の新たな新型を順次、導入する予定だ」

 

こうした取り組みから、「ステランティスもバッテリーEVからHV(ハイブリッド車)へ軸足を移したかといえば、それは違う」と強調し、ユーザーが「検討しているのがEVであろうが、HVであろうが、ガソリン車であろうが、我々はお客さまに選択の喜びを、そして魅力的なクルマを提供しなければならない」と訴えた。

 

そのうえで、「それを120%の自身をもって証明するのが本日のモデル」と述べ、アベンジャーを紹介した。

 

 

ジープ・ブランドについては「米国を象徴するブランドで、オフロードで荒野を駆け巡るイメージと思う。その象徴といえるのがラングラーで、国内販売台数が2万5千台以上達成し、ロングセラーとなっている。また今年5月に新型に切り替えたことによりZ世代、若い世代から多くの支持を得ているブランドになっている」と話した。

 

そのジープ初のEVであるアベンジャーの日本導入に向け、「街中でも映えるコンパクトなSUVであり、ジープが1941年に誕生して以来、初めてのバッテリーEVを披露する」と強調した。また、EV一般については「スムーズな加速性」が特徴と感じる一方で、「クルマの個性が出しにくい」というイメージが少なからずある。

 

これに対し、打越社長は「アベンジャーはそこが違う。本格オフロードを可能にする6つの走行モードを備えたクルマであり、ここまでブランドにこだわったクルマを見たことがない。アベンジャーはこれまでのEVとは別のカテゴリーにあるといっても過言ではない」と語った。

 

また、「荒野を走るEVに不安があるあかもしれないが、アベンジャーは航続距離を大幅に伸ばし、充電の不安を解消するサービスを順次、展開する」と述べ、EVの普及でネックの一つとなっているインフラについても充実させる考えを表明した。

 

そのうえで、「十分な航続距離と新たなサービスで、荒野を駆け抜けるアベンジャーの姿が単なるイメージでなく、実際にお客様が楽しむ姿になると確信している。また、アベンジャーはジープの歴史、お客様とのつながりをより豊かに発展させるとともに、我々ステンランティスジャパンにとっても新しい時代をリードするクルマだ」と話した。

 

車両の特徴をみると、エクステリアでは フロントの「7スロットグリル」をヘッドランプよりも前面に配置し、万が一の衝撃からヘッドランプを保護する。さらにサイドの盛り上がったフェンダー部分は力強い印象を与え、オンロードでもオフロードでも堂々とした存在感を与えている。

 

インテリアは「機能性を考慮したデザイン」を採用し、多くの収納スペースを備えている。 ラゲッジルームは355リットルの収納容量だ。オフロード性能では、ジープ・ブランドの前輪駆動車として初めて「セレクテレイン」と「ヒルディセントコントロール」を標準装備。セレクテレイン・システムは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」「スノー」「マッド」「サンド」の6つの走行モードが選択できる。ヒルディセントコントロール機能は急な下り坂でも一定速度で走行できるようアシストする。

 

運転支援機能は、アダプティブクルーズコントロール やレーンポジショニングアシスト、レーンキーピングアシスト、トラフィックサインレコグニション、衝突被害軽減ブレーキ、ドライバーアテンションアラートなどを装備。

 

パワートレインは54キロワットアワーののバッテリーを搭載し、一充電当たりの航続距離(WLTCモード)は486キロメートル。普通充電および急速充電に対応する。ボディカラーは新色の「サン」および人気の「グラナイト」、「ボルケーノ」、「スノー」の4色を用意する。

 

車両寸法は全長4105ミリメートル、全幅1775ミリメートル、全高1595ミリメートル。ホイールベースは2560ミリメートルの長さ。車両価格(税込み)は580万円で、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は65万円の対象車となっている。

 

なお、新型モデルの発売を記念し、ベースモデルにパワーサンルーフ、18インチアルミホイール、ブラックペイントルーフおよびイエローダッシュボードの特別装備4点などを加えた限定車「ジープ・アベンジャー・ローンチエディション」を150台限定で同時に発売。車両価格(税込み)は595万円。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。