ステランティスジャパン(東京都港区、打越晋社長)は9月26日、ジープ・ブランド初の電気自動車(EV)ジープ「アベンジャー(Avenger)」を同日から発売したと発表しいた。新モデルは取り回しのよいコンパクトSUVで、かつ本格的なオフロード走行が可能な6つの走行モードが選べるのが特徴だ。(佃モビリティ総研・松下次男)
東京都内で開いた新車発表会で打越社長は「アベンジャーはこれまでのEVとは別のカテゴリーにあるといっても過言ではない。お客様に探究心、冒険心を呼び起こす起爆剤になってほしいと願っている」とアピールした。
アベンジャーは2022年10月のパリモーターショーで発表。2023年1月から欧州向けに生産、販売を開始した。プロダクト・ジェネラルマネージャーの渡邊由紀氏によると、これまでに欧州で「受注が10万台を超える」ヒット車となっており、欧州カーオブザイヤーなども受賞。
ジープ車のラインナップでの位置づけは最もコンパクトなSUVであり、渡邊氏はアベンジャーについて「より女性に多くアピールできるモデル」と話した。同車はポーランドのティヒ工場で生産されている。
EV市場の動きをみると、わが国では2023年の販売台数で輸入EVが国産EVを上回り、輸入EVが日本のEV市場をけん引する。一方で、グローバルではEV市場の減速感も目立つ。
こうした動き踏まえ、打越社長はアベンジャー発表会でEVを初めとした新型投入計画について次のように述べた。
「ステランティスジャパンは7つブランドを擁し、そのすべてのブランドで電動化を達成済み。そしてステランティスの強みである多様性を一段と高め、お客様へ更なる喜びを提供するためにバッテリーEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、マイルドハイブリッド車、そしてガソリン車の新たな新型を順次、導入する予定だ」
こうした取り組みから、「ステランティスもバッテリーEVからHV(ハイブリッド車)へ軸足を移したかといえば、それは違う」と強調し、ユーザーが「検討しているのがEVであろうが、HVであろうが、ガソリン車であろうが、我々はお客さまに選択の喜びを、そして魅力的なクルマを提供しなければならない」と訴えた。
そのうえで、「それを120%の自身をもって証明するのが本日のモデル」と述べ、アベンジャーを紹介した。
ジープ・ブランドについては「米国を象徴するブランドで、オフロードで荒野を駆け巡るイメージと思う。その象徴といえるのがラングラーで、国内販売台数が2万5千台以上達成し、ロングセラーとなっている。また今年5月に新型に切り替えたことによりZ世代、若い世代から多くの支持を得ているブランドになっている」と話した。
そのジープ初のEVであるアベンジャーの日本導入に向け、「街中でも映えるコンパクトなSUVであり、ジープが1941年に誕生して以来、初めてのバッテリーEVを披露する」と強調した。また、EV一般については「スムーズな加速性」が特徴と感じる一方で、「クルマの個性が出しにくい」というイメージが少なからずある。
これに対し、打越社長は「アベンジャーはそこが違う。本格オフロードを可能にする6つの走行モードを備えたクルマであり、ここまでブランドにこだわったクルマを見たことがない。アベンジャーはこれまでのEVとは別のカテゴリーにあるといっても過言ではない」と語った。
また、「荒野を走るEVに不安があるあかもしれないが、アベンジャーは航続距離を大幅に伸ばし、充電の不安を解消するサービスを順次、展開する」と述べ、EVの普及でネックの一つとなっているインフラについても充実させる考えを表明した。
そのうえで、「十分な航続距離と新たなサービスで、荒野を駆け抜けるアベンジャーの姿が単なるイメージでなく、実際にお客様が楽しむ姿になると確信している。また、アベンジャーはジープの歴史、お客様とのつながりをより豊かに発展させるとともに、我々ステンランティスジャパンにとっても新しい時代をリードするクルマだ」と話した。
車両の特徴をみると、エクステリアでは フロントの「7スロットグリル」をヘッドランプよりも前面に配置し、万が一の衝撃からヘッドランプを保護する。さらにサイドの盛り上がったフェンダー部分は力強い印象を与え、オンロードでもオフロードでも堂々とした存在感を与えている。
インテリアは「機能性を考慮したデザイン」を採用し、多くの収納スペースを備えている。 ラゲッジルームは355リットルの収納容量だ。オフロード性能では、ジープ・ブランドの前輪駆動車として初めて「セレクテレイン」と「ヒルディセントコントロール」を標準装備。セレクテレイン・システムは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」「スノー」「マッド」「サンド」の6つの走行モードが選択できる。ヒルディセントコントロール機能は急な下り坂でも一定速度で走行できるようアシストする。
運転支援機能は、アダプティブクルーズコントロール やレーンポジショニングアシスト、レーンキーピングアシスト、トラフィックサインレコグニション、衝突被害軽減ブレーキ、ドライバーアテンションアラートなどを装備。
パワートレインは54キロワットアワーののバッテリーを搭載し、一充電当たりの航続距離(WLTCモード)は486キロメートル。普通充電および急速充電に対応する。ボディカラーは新色の「サン」および人気の「グラナイト」、「ボルケーノ」、「スノー」の4色を用意する。
車両寸法は全長4105ミリメートル、全幅1775ミリメートル、全高1595ミリメートル。ホイールベースは2560ミリメートルの長さ。車両価格(税込み)は580万円で、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は65万円の対象車となっている。
なお、新型モデルの発売を記念し、ベースモデルにパワーサンルーフ、18インチアルミホイール、ブラックペイントルーフおよびイエローダッシュボードの特別装備4点などを加えた限定車「ジープ・アベンジャー・ローンチエディション」を150台限定で同時に発売。車両価格(税込み)は595万円。