JARC(公益財団法人自動車リサイクル促進センター、所在地:東京都港区、代表理事:中村 崇)は7月10日、NEXCO東日本(東日本高速道路)が発行するソーシャルボンドに投資すると発表した。(坂上 賢治)
このJARCは、国内の自動車ユーザーから集められた約9,400億円(2020年3月末時点)のリサイクル料金の管理・運用を行っている日本最大級の公益法人だ。
JARCは上記を資本に、日本国内の自動車のリサイクル産業を基盤に据えたフローを運用。より具体的には自動車メーカー・輸入業者、引取業者、フロン類回収業者、解体業者、破砕業者をマネジメントし、廃棄物の削減と資源の有効利用を日々廻している。
かつてJARCが本格活動前だった1990年頃には、資源的価値が高く有用な金属・部品を含む使用済自動車は、事業者間の売買を通じて流通するなかでリサイクルが行われていた。しかし1990年代後半、天然資源の枯渇や地球温暖化問題、廃棄物の最終処分場の逼迫から招来への不安が高まるなかで「循環型社会」を構築する社会的な枠組みが急速に進み、2005年1月から「自動車リサイクルシステム」の運用が始まった。
現在、自動車ユーザーや自動車メーカー・輸入業者を始め、自動車の産業界が一体となった取り組みに支えられ、大きく進展してきた自動車リサイクルシステムの傘下で、使用済自動車のほとんどが循環的にリサイクルされている。
その運用資金となる自動車ユーザーから集めたリサイクル料金は、上記をマネジメントする原資として対象の自動車が使用済みになるまでの間、一般に安全かつ確実な方法とされる「国債」「政府保証債」「地方債」「財投機関債」で運用されている。
そうしたなか、昨今のSDGsの高まりを受けて、それらとは別に2018年度から環境課題や社会課題の解決に資する債券への投資も行ってきている。
今回のNEXCO東日本のソーシャルボンドへの投資は、JARCが第一四半期に投資を行った独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構発行のサステナビリティボンド。さらに独立行政法人国際協力機構発行のソーシャルボンドへの投資を踏まえた新たなESG投資となるもの。
NEXCO東日本発行のソーシャルボンドで調達された資金は、地域社会の発展と暮らしの向上を支えることを目的に高速道路事業に充てられ、「移動」を伴う社会的課題の解決のために活用される。
今回の主な資金使途は「地方圏の産業・観光投資を誘発する都市・地域づくりの推進」、「切迫する巨大地震・津波や激甚化する気象災害へのリスク軽減」、「交通安全の確保」、「環境保全の推進」、「インフラの老朽化対策」を目的とした高速道路の新築・改築や修繕・災害復旧等に関するプロジェクト」に活用される。
JARCでは「この投資は第三者評価機関による外部評価を取得しているうえ、対象プロジェクトの進捗や資金充当の状況について、東日本高速道路株式会社のウェブサイト上で公開されるため、透明性が確保されています。
財務的な収益の実現に加え、地球環境への負荷となっている環境問題や社会問題の解決や、新たな社会的価値の創造が期待できるESG投資を実施することにより、循環型社会の実現に貢献していきたいと考えます」と話している。
債券の概要
・債券名:東日本高速道路 第68回社債
・年限:10年
・発行日:2020年7月17日
・発行総額:500億円
・東日本高速道路株式会社ウェブサイト:https://www.e-nexco.co.jp/corp/
JARC(公益財団法人自動車リサイクル促進センター)の概要
・所在地:〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 日本自動車会館11階
・設立:2000年(平成12年)11月22日
・理事長:中村 崇
・事業内容:自動車のリサイクル及び適正処理の促進に関する各種取組
・自動車リサイクル法指定法人業務の主務官庁:経済産業省、環境省
・JARCウェブサイト: https://www.jarc.or.jp/