日本自動車輸入組合(JAIA)のティル シェア理事長(フォルクスワーゲングループジャパン社長)は1月28日、オンラインで新年記者会見を開き、2021年の輸入車販売展望について「本格的な回復の年とし、新型コロナウイルス感染症前の販売台数に戻ることを期待する」と述べた。
政策課題では、冒頭に政府の2050年カーボンニュートラル宣言に触れて、メンバー各社が電動車拡充を推進する方針と紹介。この中で、日本市場ではこれらの認知度が低いとして、輸入EV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド車)の認知を高める輸入車ブランドのフルラインナップイベント開催も予定しているとした。(佃モビリティ総研・松下 次男)
海外ブランドの四輪車販売は、5月を底にかつてないほどの大幅な減少を記録
2020年の輸入車市場は年初に回復傾向が出ていた中で、コロナ禍に遭遇。加えて、政府の緊急事態宣言もあり、外国メーカー四輪車販売は、5月を底にかつてないほどの大幅な減少を記録した。
しかし、6月ごろから徐々に販売店への来店数も戻り、各社の新型車や限定車の導入効果も寄与。販売台数は「着実に回復してきた」と分析した。
実際に、10~12月でみると、一部のブランドでは「単月の販売台数が過去最高を更新する」など大幅に改善したとの見方を示した。
消費マインドに持ち直しの動きに、2021年の市場展望に期待感を示す
この結果、外国メーカー車の2020年暦年の販売台数は前年比14・5%減の25万6096台となった。日本車メーカー車を含めた輸入車全体では、同8・7%減の31万7933台。これを踏まえ、シェア理事長は昨年の市場環境面ついて「消費マインドに持ち直しの動きがみられ、来店者数も堅調に回復している」と述べたうえで、2021年の市場展望に期待感を示した。
また、2021年度税制改正でエコカー減税および環境性能割の臨時的特例措置の延長、各種補助金の継続・拡大、クリーンディーゼル車への激変緩和措置などが実現し、大幅な自動車関係諸税の増税が回避されたことも販売促進につながるとした。
新しい生活様式の中で、パーソナルモビリティが再評価されている
一方で、登録車と軽自動車の税負担に依然2倍以上の格差があることの是正や国際的にみて過剰な税負担の軽減、簡素化などの要望を引き続き推進するとした。
車種体系では、昨年の外国メーカー車の約4割を占めたSUV・クロスオーバー車の人気が継続すると見ており、会員各社はこの領域で魅力的なモデルを多数、取り揃えるだろうとの見通しを示した。
また、販売活動面ではインターネット販売やオンラインを活用した対話にも注力。「ニューノーマル」と言われる新しい生活様式の中で、パーソナルモビリティが再評価されている点からも一層、その取り組みを加速させたいとした。
欧州での温室効果ガス削減の政治合意や、内燃機関自動車の販売禁止の流れを強調
JAIAの主要な活動計画では、政府の2050年カーボンニュートラル宣言、さらに菅首相の今年の施政方針演説で2035年までに新車販売で電動車を100%にするなどとしたグリー社会の実現を取り上げて、地球温暖化対策への対応を推進するとの考えを示した。
環境分野については、わが国だけでなく、海外でも取り組みが進む。シェア理事長は欧州の温室効果ガスを2030年までに対1990年比で55%削減する政治合意や英国の2030年の内燃機関自動車の販売禁止などを掲げて「電動化への取り組みは不可欠だ」とした。
実際に、ドイツではコロナ禍での経済対策を背景に補助金が増額され、2020年の乗用車新規登録台数でEVが前年比3・1倍、PHVが同4・4倍になったとも紹介。米国のバイデン新大統領が全米50か所に充電設備を設けて、ガソリン車からEVなどへの買換えを促進するプログラムを計画していることにも言及した。
車両型式認可の相互認証(IWVTA)の実現に尽力する方針も示す
これらに対し、JAIAでは昨年度から電動車普及に向けたプラットフォームを設立し活動を推進。こうした効果もあり、外国メーカー車のEV・PHVの販売台数は2019年4063台、2020年6612台と着実に増加している。
ただし、長期的なカーボンニュートラル実現のために企業の努力以外にも政府による再生可能エネルギー供給の飛躍的な増加、EV・PHVなどのへの車両購入補助支援の継続、充電インフラの拡大が不可欠として、政府のイニシアチブを求めた。
特にJAIAは公共充電設備の拡充、集合住宅における充電器設置が電動車普及に重要との見方を示す。ちなみに、東京23区では登録車に占める輸入車の割合は約25%に達し、港区では約半数を占める。
このほか、国際的な規格や基準にあわせて、自動運転車・コネクテッドカーをタイムリーに市場に投入するとともに、車両型式認可の相互認証(IWVTA)の実現に尽力する方針などを示した。