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2022年1月27日【自動車・販売】

自工会会長、国内市場規模を年間500万台から800万台へ

松下次男

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日本自動車工業会(自工会/JAMA)・ロゴ

日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は今年初めの記者会見で、岸田政権が掲げる「成長と分配」を支援し、重点項目として取り組んでいく考えを表明した。これまでも自動車産業は雇用創出などの経済成長に寄与しており、これを継続、進化させることで日本経済の好循環につなげるとの見解を示す。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

わが国の自動車産業について豊田会長は基幹産業としてこれまでも「すべてのステークホルダーへの還元や分配を進めてきた」と述べ、コロナ禍の2年間でも雇用は22万人増やしたと強調。
平均年収が500万円とすると家計に1兆1000億円のお金を回した計算になり、「近年の平均賃上げ率は2.5%と全産業トップの水準」とアピールした。

 

バブル崩壊以降、わが国経済は停滞しており、賃金の伸び率も先進諸国の中で最低水準との見方が指摘されている。このため、今年の春闘でも賃金引き上げを求める意見が多い。
これに対し、豊田会長はこれまでも自動車メーカーの12年間の累計納税額は「10兆円、株主還元は11兆円にのぼり、従業員だけではなく、取引先、株主など幅広いステークホルダーに持続的に還元をしてきた」と述べたうえで、これをさらに広げていくにはその「パイ」を増やすこと、つまり“成長”の必要性を訴えた。

 

その成長をどう実現するか。豊田会長は「「先が見えないデフレ社会の中で、金融資産や個人貯蓄、様々な“保有”が滞留している。これを動かし、大きく回していくことが必要ではないかと思う」と指摘し、自動車についても「保有を回転する」ことがカギになる点を掲げた。
具体的には、いま日本には8000万台の保有母体があるが、この平均保有年数は「現在15年以上と非常に長期化している」のが現状。

 

これが「10年で回るようになれば、市場規模は現在の500万台から、800万台」になり、自動車出荷額は7・2兆円増えると試算する。さらに「雇用」が新たに生まれ、バリューチェーン全体にも資金が回り、税収は消費税1%分に相当する2・5兆円の増収になると訴えた。

 

同時に、CASE対応時代を向け、今やクルマは単なる移動手段ではなく、蓄電池や情報通信デバイスとして社会インフラの一部になっており、社会全体と密接につながる存在になっている。だからこそ「自動車を軸にすれば経済・社会の好循環を生み出すことにもつながっていくと思う」と述べる。

 

記者会見は1月27日の2022年最初の理事会開催に合わせて開いたものだ。会見にはホンダの三部敏宏社長、ヤマハ発動機の日髙祥博社長、いすゞ自動車の片山正則社長、日産自動車の内田誠社長、スズキの鈴木 俊宏社長、それに事務局の永塚誠一氏を加えた6副会長(次期を含む)が同席した。

 

理事会では「成長・雇用・分配への取り組み」「税制改正」「カーボンニュートラル」「CASEによるモビリティの進化」「自動車業界のファンづくり」の5項目を今年の重点項目にすることを決議した。
この中でも、すべての背骨となるテーマが「成長と分配」とし、こうした活動方針の一端を示した。

 

加えて、活動を進めていくうえで、現状がどうなっているのかを把握するための「タスクフォース」を自工会内に立ち上げることも決めた。内田社長は「共通の課題を討議す場として提案した」と述べた。
カーボンニュートラル、モビリティの進化を巡っては、電気自動車(EV)分野への進出を表明したソニーなど新たなプレイヤーの参入も話題になっているが、三部社長はこれについて「欧米、中国でも新たなプレイヤーが誕生しており、商品やサービスがより広がる。我々を含めて切磋琢磨することができ、歓迎している」と述べた。

 

これに付け加え豊田会長はソニーの新会社について会員に加わることを「お待ちしている」と語った。
自動車関係諸税については、ユーザーの負担軽減に加え、「カーボンニュートラルを促進する税制の抜本改革の道筋を作っていく年にしていきたい。これらは中長期の視点で検討したい」との考えを永塚副会長は示した。
また、豊田会長も電動化の進展に伴って燃料課税と車体課税の比率が変化する可能性を示し、「車体課税のみに負担が偏るのは避けてほしい」と要望した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。