1935年、ウィリアム・ライオンズ卿により設立されたジャガー傘下部門のジャガー・クラシックは、同ブランドを体現するアイコニックな存在「E-TYPE」を称え、2台1組・7組限定の「E-TYPE ZP COLLECTION」を製作する。
この「E-TYPE ZP COLLECTION」は、これまでの「E-TYPE」の足跡を伝えるもので、その名称はレース用に改造を施した7台の初期車両に由来している。
かつて1960年代当時、ジャガーのチーフデザイナーだったクロード・ベイリー氏は、量産型「E-TYPE」をジュネーブモーターショーで世界初公開した翌日に7台の「ZP」車両の詳細仕様を公表。
この「ZP」車両は1961年4月15日に開かれたGTカーレースのオールトンパーク・トロフィーで、各々に「ECD 400」および「BUY 1」の登録番号が付けられて出走。グラハム・ヒルとロイ・サルバドーリのドライブにより1位と3位を獲得した。その後1964年にかけて通算24回の表彰台を獲得している。
「E-TYPE ZP COLLECTION」は、この1961年に初優勝を果たしたオリジナルのレース車両からインスピレーションを得たカラーリングを採用。従って今回の制作車はドロップヘッドクーペとフィックスドヘッドクーペの2台1組で構成される。
その特徴は、「E-TYPE」のレースの伝統を記念する専用ディテールと共にBluetooth接続、ナビゲーション機能を備えたジャガー・クラシック・インフォテインメント・システムを持つなど現代的なクルマとしての使いやすさを兼ね備えている点にあるという。
5速マニュアル・トランスミッションは、すべてのギアにシンクロメッシュ機構を備え、ヘリカルカットギアと強化鋳造アルミニウムケーシングを採用することで信頼性と耐久性を向上させ、クロスレシオギアのスムーズな変速を可能にした。
なお更に2023年後半に、ジャガーのSV BESPOKEパーソナライゼーションチームは「E-TYPE ZP COLLECTION」にインスピレーションを得た限定モデルとして「F-TYPE ZP EDITION」を発表予定としている。
このモデルは、5.0リッター V型8気筒スーパーチャージドエンジン(265bhp)を搭載した最後のジャガー製スポーツカーとなり、同限定モデルのうち14台は「E-TYPE ZP COLLECTION」を購入したユーザーのために割り当てられる。
車両概要は以下の通り
ドロップヘッドクーペ
– グラハム・ヒルがドライブしたインディゴブルーの「ECD 400」から着想を得たオールトンブルーで塗装。
– ボンネットとドアにあるラウンデル(ゼッケンを表示するための丸いエリア)はホワイトで仕上げ、フロントエアインテークの内側には、同色のリップスティックを装着。オリジナル車両を忠実に再現するため、グリル全体のモチーフバーとフロントオーバーライダーは削除。
– ジャガー・クラシックのエンジニアはノーズを再加工し、さらに40時間以上かけて手作業で仕上げ完璧な美しさを追求。
– クローム仕上げのバンパー(フロント/リア)。
– ワイヤーホイールおよびジャガーヘリテージのロゴ入りホイールキャップ。
– 1961年当時の仕様を正確に再現するために、ブナ材のステアリングホイール、溶接されたボンネットルーバー、ロック可能なキー付きの外部ボンネットラッチ(「ZP」ロゴ付き)と革製ボンネットストラップを採用。
– リアエンドには「ZP」および「JAGUAR」ロゴを、燃料フィラーキャップ、車両カバー、ルーフカバーにも「ZP」ロゴをレイアウト。
– フロントフェンダー後方のシルバーのシールドの中にはユニオンジャックと「E-TYPE」のシルエット、「Project ZP」のレタリングを配置。
– インテリアは、ブリッジ・オブ・ウィアー社のレッドレザーを採用し当時と同じくハードデュラトリム仕上げ。
– ゴールドのグラウラー・ホーンボタンに加え、アルマイトアルミニウムのセンターコンソールには、英国の彫刻アーティストであるジョニー“キング・ナード”ダウェル(Johnny “King Nerd” Dowell)が手掛けたビスポークのパネルを追加。オールトンパークのサーキットレイアウト、ヒルの名言「In a race my car becomes part of me, and I become part of it(レースで車は私の一部となり、私は車の一部となった)」、そして栄光の勝利を象徴する月桂樹の冠(ペアのもう1台と組み合わせるために半分)が描かれている。
フィックスドヘッドクーペ
– ロイ・サルバドーリが勝利を収めた「BUY 1」からインスピレーションを得て製作。
– オリジナル車両のパールグレーに着想を得たクリスタルグレーのエクステリアカラーを採用。クリスタルという名称は、サルバドーリが「E-TYPE」で初めて勝利を収めたクリスタルパレスから由来。
– ドロップヘッドと同様、ホワイトのラウンデル、クローム仕上げのバンパー、溶接されたボンネットルーバー、専用のサイドグラフィックディテールを装備。さらに英国バーミンガムのジュエリークォーターに拠点を置くスペシャリスト、ヴォートンズ(Vaughtons)と協力し製作したエクステリア・エンブレムも装着。
– ダークネイビーのブリッジ・オブ・ウィアー社のレザーインテリアと、それにマッチするハードデュラトリム、ブナ材のステアリングホイールを採用。
– アルマイトアルミニウムのセンターコンソールのパネルには、月桂樹の冠(残りの半分)、クリスタルパレスのサーキットレイアウト、車両のシルエットに加え、ロイ・サルバドーリのニックネームであった「King of the Airfields(飛行場の王)」の文字を彫刻。
最後にリリースされる各車両には、当時、ドライバーのヒルとサルバドーリが着用していたものを再現したヘルメットが付属する。これらは、1950年代からヘルメットを製造してきた英国の専門メーカー、エバーオークのビル・ヴェロ(Bill Vero)が製造したもの。
そして、インテリアと同じレザーを使い、ジャガー・クラシックのトリムエキスパートが製作した、テーラード・レザーのヘルメット収納用バッグ、車両ハンドブック用のレザーポーチも提供される。更に「ZP」ロゴ入りの専用車両カバーと、トランクフロアの下に収納できる特注のジャッキ(専用の収納バッグ付き)も付属する。