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2023年4月29日【アフター市場】

J.D.パワー、カーシェアリングサービス顧客満足度調査

坂上 賢治

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CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関のJ.D. パワー ジャパン(J.D.パワー)は4月29日、「J.D. パワー2023年カーシェアリングサービス顧客満足度調査」の結果を発表した。

 

同調査は年に1回、国内のカーシェアリングサービス(当該事業者が車を貸す企業提供型カーシェアリングサービスを指す)利用者を対象に、カーシェアリングサービスの利用状況や各種経験、満足度を聴取し明らかにするもの。今回で7回目の実施。

 

カーシェア市場全体の顧客満足度、過去最高を更新して初の700点台に

 

まず市場全体を捉えた顧客満足度では、2017年の調査実施以来、過去最高を更新した。総合満足度スコアは初回調査(2017年3月発表)での652ポイントから年々向上し、初の700点台の評価を得た。

 

J.D.パワーによるとファクター別の評価では、「各種料金」、「サービスメニュー」、「車両」、「予約(ウェブページ/モバイルアプリ)」、「コールセンター」の全ファクターで、過去最高のスコアとなっている。

 

 

初回調査から満足度の向上幅が最も大きかったのは「コールセンター」、次いで総合満足度に対する影響度が最も大きい「各種料金」であった。

 

月々の平均支払い額(基本料金と利用料金等の合計)をみると、「5,000円以上」支払っていた層は初回調査では1割台に留まっていたが、本年では26%まで増加しており、カーシェアの市場規模が着実に拡大している。

 

6年前より月々の支払い金額が増加した中でも、「料金体系がわかりやすい」、「利用料金が妥当」といった声は強まっており、ユーザーが納得感を持ってカーシェアを利用できていることが「各種料金」ファクターの評価向上につながっていると推察される。

 

ロイヤルティ向上には突出して高い顧客満足度が必要

 

なおカーシェアの総合満足度は、初回調査より右肩上がりに向上してきたが、今後の利用意向ならびに推奨意向といったロイヤルティは課題を残す結果となった。

 

また今後も利用を継続したいという強い継続意向を示すユーザーは36%、他者に推奨したいという強い推奨意向を示すユーザーは25%で、この割合はこの3年では、ほぼ横ばいとなっており、総合満足度のような向上トレンドにはない。

 

この要因としては、総合満足度とロイヤルティは比例関係にあるものの、総合満足度が一定水準を超えて初めてロイヤルティが大きく上昇する関係にあることが挙げられるとJ.D.パワーでは分析した。

 

具体的には、総合満足度が800点以上になると、いずれの意向においても最も強い意向を示す「そう思う」の割合が700点台以下のユーザー層と比較して大幅に増加する。

 

 

結果、顧客ロイヤルティを向上させ、既存ユーザーの維持ならびに新規ユーザーの獲得を促進するためには、突出した高い満足度が必要であり、今後も顧客満足度のさらなる向上に向けた取り組みを継続していくことが重要であるとしている。

 

空車不足の解消が顧客満足度向上のカギ

 

加えて顧客満足度の一層の向上のために、カーシェア利用時におけるネガティブ体験を減少させることが重要であるとした。

 

特にカーシェア利用時に何らかのトラブルを経験している人の割合は83%と依然として8割を超えている。

 

より具体的に普段のカーシェア利用におけるトラブル体験を聞くと、「利用したいステーションに空車がなく、違うステーションで探さなければいけなかった」、「空車がみつからず、利用をあきらめた」といった空車不足によるトラブルを約3分の2のユーザーが体験していることが分かった。

 

こうしたニーズに対して車両の増加やステーションの拡大は各社が取り組んできたが、一方でカーシェア市場の順調な拡大による利用者の増加や利用頻度の高まりが、ユーザーに空車不足を感じさせることの背景にあるという。

 

 

従って、今後はユーザーの要求水準の高まりや市場の拡大に供給面で適切に対応し、ステーションの利便性や車両数といった「サービスメニュー」ファクターの評価を高めていくことが、総合満足度の一層の改善につながるものと考えられると結論付けている。

 

総合満足度ランキングは下記の通り。(対象4ブランド)

  • 第1位:TOYOTA SHARE(770ポイント)
    2年連続の総合満足度第1位。
    「各種料金」、「サービスメニュー」、「車両」、「予約(ウェブページ/モバイルアプリ)」、「コールセンター」の全5ファクターで最高評価。

 

  • 第2位:オリックスカーシェア(722 ポイント) 

 

  • 第3位:カレコ・カーシェアリングクラブ(690ポイント)

 

 

– 実施期間:2023年1月中旬~下旬 
– 調査方法:インターネット調査

【上記詳細】総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に 1,000 ポイント満点で総合満足度スコアを算出。

総合満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に、「各種料金」(33%)、「サービスメニュー」、「車両」(共に20%)、「予約(ウェブページ/モバイルアプリ)」(19%)、「コールセンター」(7%)となっている(カッコ内は影響度)。

– 調査対象:直近半年以内にカーシェアリングサービスを利用した人(18歳~64歳)
– 調査回答者数:3,285人

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。