イタリアのe-Novia傘下会社が開発を手掛けた最新AI搭載の陸上用配送ロボット「YAPE」がドイツのフランクフルト空港でフラポート社(ドイツに本拠を置く空港運営会社)と実証実験を行った。(坂上 賢治)
今回の実証実験は、イタリアのハイテクメーカーe-Novia傘下のYape社が開発した配送ロボット「YAPE」を使い、フランクフルト空港以外に世界各地で合計25の空港を運営するフラポート社が空港という限定された環境下で、配送ロボットの利便性・安全性・有用性・発展性を確認し、フラポート社が想定するサービス品質充実に役立つかを検証するべく初実施されたもの。
YAPEの投入は、欧州地域に於いても初の試みとなったため、今実験はYAPEにとって空港での初実験となった。実験では、YAPEを空港のトランジットエリアに5日間配備し、乗客のゲートまでのアテンドと手荷物の配送支援を行った。
実験では、スマートフォンのアプリを使用してロボットとコミュニケーション検証を実施。
その内容は、まず乗客が手荷物をロボットのボックスに置き、YAPEによって離陸ターミナルまで案内されるという手順だ。ロボットはターミナル内を自由に移動しつつ、YAPEが乗客と音声によって乗客と完璧なコミュニケーションを行えることを目標としていた。
YAPE自体の輸送能力は、時速約6キロメートルの速度で最大30キログラムの荷物を運ぶことができ、3Dセンサーによって周囲の状況を感知し、障害物を回避する。
ただ実際には、年間で6900万人以上の乗客が来訪するフランクフルト空港ゆえに、混雑度が高く、ターミナル環境で往来者を含む障害物や障害者を回避する術を人工知能が学ぶことそのものが、大きな課題となることが判ったとしている。
同実験結果に際して、離発着ターミナルユニットの責任者であるフラポート社のアレクサンダー氏は「弊社はイノベーションのリーダーとなるべく、乗客の旅行体験を向上させることを目的とした新しいデジタルテクノロジーの推進を常に努めています。
今回の実験でYAPEを採用した目標は、空港でのサービスの質をさらに向上させるために、最新の人工知能とロボット工学のどういった利便性が活用できるか確認することでした」と話す。
一方、e-NoviaのCEO、Vincenzo Russi氏は、「弊社は日本と米国での実証実験の後、大規模な流通システムを持つ大手物流会社と協力して、空港物流を担うべく事業を展開しております。
YAPEはAIとロボット工学の専門知識を持つ世界最高のロボットの1つであり、e-Noviaはスマートモビリティを活用したラストワンマイル配送のための新しいソリューションを既に開発しています」と述べている。
ちなみに「YAPE」は日本に於いても、日本郵便や慶應義塾大などと共同で実験を複数回行なっており、2018年12月にe-Noviaと日本郵便によって実施された最初の実証実験で、屋内および屋外配送ロボットとして信頼できる能力を既に証明した。
これを踏まえe-Noviaとしては、当地のテストの結果を前提に、YAPEのフランクフルト空港でのさらなるサービス展開策を検討しなければならないと話している。なお日本では株式会社DroneFutureAviation(東京都渋谷区、代表取締役社長 波多野 昌昭/以下「DFA」)が独占取扱権を保有している。