17年振りに小型トラック「エルフ」・中型トラック「フォワード」を刷新
いすゞ自動車は3月7日、同社初となる量産バッテリー電気自動車(BEV)の小型トラックなどをパシフィコ横浜(横浜市)で世界初披露した。17年ぶりに小型トラック「エルフ」および中型トラック「フォワード」をフルモデルチェンジし、エルフにBEVの「ELF EV」を設定。BEVトラックも日本を皮切りに順次、グローバル展開する。(佃モビリティ総研・松下次男)
「いすゞワールドプレミア2023」と銘打って開いた発表会で片山正則社長は量産BEVトラックの投入に当たり、日本で物流用車両の「半分をいすゞグループが担っており、その責任は重い」と強調するとともに、カーボンニュートラルの実現に向け「世の中に希望を届けたい」と表明した。
全面改良した新型エルフは、新たな開発手法「I-MACS(イスズ・モジュラー・アーキテクチャー・アンド・コンポーネント・スタンダード)」を採用することにより、ディーゼル車やBEVなど様々な動力源を同じプラットフォームで搭載可能にした。
新型エルフに搭載したELF EVは20キロワットアワー(kWh/個)のコンパクトなバッテリパックを開発し、車格や使われ方に応じて高電圧バッテリーを2パック(40kWh)から最大5パック(100kWh)搭載できるモジュール方式を採用する。
BEVトラックのベース車両は「3年前に完成」、以降は理想型を追求
片山社長はBEVトラックについてベース車両は「3年前に完成」しており、その時点から複数の事業者にモニター調査をお願いしてBEVトラックの理想形を追求してきたという。
そこで分かったのが「多くのバッテリーを積載し走行距離を伸ばせば安全というわけでなく、充電インフラへの投資、電気料金などトータルでサポートすることが重要」と指摘する。
そこで、いすゞはELF EVの投入にあわせ、商用BEV投入の検討のサポート、導入課題の解決、CO2(二酸化炭素)排出量削減効果の定量化、脱炭素化提案によるカーボンニュートラル実現に向けたトータルソリューションプログラム「EVision」を構築し、3月7日からサービスの提供を開始した。
全面改良した新型エルフはデザイン、エコノミー、安全性、コネクテッドなどの進化に加えて、時間外労働の上限規制によりドライバー不足など物流運輸業界で課題となる所謂「2024年問題」に対応し、ホスピタリティ面も充実させている。
ドライバー目線で、運転しやすさ、扱いやすさを改良したほか、ドライバーの上方、前方、側方のクリアランスを大幅に拡大。乗降性、操作性を向上させた。
独自の稼働コネクテッドサービス「プレイズム」を新型エルフにも提供
エコノミーでは、AT免許で運転可能な9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のISIM(イスズ・スムース・インテリジェント・トランスミッション)を新開発し、省燃費の4JZIエンジンと組み合わることで、更なる省燃費化を実現。全車2025年度燃費基準を達成する。
安全面では、プリクラッシュブレーキ、全車速車間クルーズ、レーンキープアシスト、ドライバー異常時対応システム、可変配光型LEDヘッドランプなどを国内小型トラックに初搭載する。
さらにコネクテッドでは、商用車テレマティクス「MIMAMORI」およびいすゞ独自の稼働コネクテッドサービスの高度純正整備「プレイズム」を新型エルフにも提供するほか、商用BEV対応のMIMAMORIを新規に開発するなど、サポート体制を充実させる。
エルフシリーズ全体の国内目標販売台数は年間4万台。エルフ(ディーゼル車、標準キャブ)の車両価格(東京地区、諸費税込み)は648万1200円。
新型フォワードは高度化・複雑化する物流業界の課題に対応するため、内外装を全面改良するとともに、装備・安全機能の大幅拡充を行い、2023年夏に販売開始する予定だ。