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2019年2月19日【オピニオン】

ホンダ、英国工場閉鎖へ

中島みなみ

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生産配置と生産能力の適正化でシビック次期モデルは北米生産へ

 

 2月19日17時の東京・青山のホンダ本社。同社はイギリスでの車両生産を終了することを決めた。2021年末までにホンダ・オブザ・ユー・ケー・マニュファクチャリング・リミテッド(HUM:Honda of the U.K. Manufacturing Ltd./ウィルシャー州スウィンドン)での完成車生産を終了する方向で同日から労使間での協議に入る。八郷隆弘社長は、そう語りかけたこの日の緊急会見で、さらに次のように述べた。

 

 「(完成車の)生産を終了する方向で協議に入ることについては非常に残念な思いでいっぱいだ。しかし欧州での我々のブランドをもう一度強化していく中で、グローバルでの生産配置、生産能力の適正化を考えると、今回の選択が一番ではないかと決断した」そう話す八郷社長は、2012年にホンダモーターヨーロッパの副社長に就任、スウィンドンの四輪生産工場に駐在した経験を持つ。

 

 「ホンダ史上これは大きな決断だ。生産規模の縮小を伴う工場の閉鎖はかつてなかった」という八郷社長は「今期末でグローバルの能力は540万台あるが、実績では97%の稼働率。今回の適正化が行われると2021年末で510万台ほどの能力。稼働率は100%を超える予定」と語る。

 

 またイギリスの工場閉鎖は前日の18日の欧州において、EUからの離脱に絡んで盛んに報道されたが、このHMUと共にトルコの四輪車生産工場Honda Turkiye A.S.でも、同時期に生産を終了することを発表した。

 

撮影:中島みなみ

撮影:中島みなみ

 

 ホンダの生産配置と生産能力の見直しは、タイ、日本、ブラジルでも行ってきた。こうした背景から「(EU離脱の影響は)考慮していない」と否定。「シビックの生産拠点は我々だけでなく取引先を含めた設備対応の準備がある。そうしたことを踏まえ、いろんな方に迷惑をかけないタイミングで考えた上での発表である」ことを強調する。

 

欧州EV販売は「中国と商品ラインナップを共有」、急速な電動化時代で存在感を示す

 

 英国工場で生産終了するという決断に至った大きな理由は、同社のグローバル展開におけるHUMの特異性にある。HUMはイギリス南部スウィンドンにあり、シビックハッチバック1機種だけを年間約16万台を生産する。しかしその55%は北米向けで、さらに10%は日本向けだ。シビック以外の機種は日本から輸出しており、同社は欧州市場における現地生産の有意性を生かし切れていなかった。

 

 また2020年から北米で生産予定のシビック次期モデルは、現状の北米市場向け約8万8000台に留め、北米から欧州向けに供給することは「今のところは考えていない」という。また北米以外のどこでシビック生産を補うかについても未定だとした。

 

 今後、ホンダは欧州市場でどのような戦略を立てるのか。キーワードは「電動化」だ。同社は2030年に四輪車販売台数の3分の2を電動化することを目標に掲げる。だが、欧州ではこれを5年間前倒してして2025年に実現する予定だ。欧州向けEVの供給は、日本と中国が担う。

 

 「電動化は中国がかなり進む。それと同じような状況が欧州各国で起きている。中国でのボリュームを考えると、そこにメリットがあるので、日本、中国を中心に欧州に電動化の商品を供給することにした。

 

 一方、欧州向けはハイブリッドを含め主に中国、日本から持っていく」と畳み掛ける。対してEV生産に係る体制造りに関しては、同社にとって市場規模の大きな中国、日本、米国で強化する。欧州でもその強化は必要だが、「域内での生産は競争力の観点から難しいと判断」したと述べ、「特に地域間での連携強化の考えに基づき、欧州では環境規制の方向性が近い中国と商品ラインアップを共有するなど、戦略的に電動化を含めた事業基盤の強化を図る」とした。

 

 それでも現段階では欧州における本社機能は、引き続き英国に残す構えだ。八郷社長は「欧州事業からの撤退は考えていない。欧州でしっかり事業基盤を築けることを考えている。電動化が加速する中で環境対応のリーディングカンパニーとして欧州におけるHondaブランドを強化する」ことを目指すと結んで同会見を終えた。( 取材/執筆/写真撮影、中島みなみ・中島南事務所=東京 文京)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。