コロナウイルス感染症拡大の影響をうけ、減収減益となり、第4四半期は赤字決算
ホンダが5月12日発表した2020年3月期連結決算(国際会計基準、2019年4月~2020年3月)は、前期比12・8%の営業減益となるなどコロナウイルス感染症拡大の影響を受け厳しい業績を余儀なくされた。第4四半期の3か月ベースは赤字決算。また、2021年3月期見通しについては合理的な算定が困難として開示を見送った。(佃モビリティ総研・松下次男)
八郷隆弘社長は課題となっている四輪事業の収益性の低さについて「グローバルで取り組んでいる四輪車生産の見直し、適正化が進展すれば改善する」と決算説明会で述べ、フル稼働となる2022年にかけて上向くとの見通しを示した。米国の生産拠点もシンプルな車種生産へと配置換えを目指す考えも示した。
また、今年4月に実施した四輪事業と本田技術研究所との再編については、量産車の開発を四輪事業に一体化することで統制のとれたオペレーションが可能になると強調。一方で、研究所は「将来の種づくりとなる革新技術に専念できる」とした。
八郷社長は「量産車開発は100%の成功が求められ、革新技術は99%の失敗を恐れない」と目指す領域が違いを解説。それがグローバル化の進展で、研究所の比重が量産車に傾き、革新技術分野がやや疎かになっていたとし、今回の組織改編により「研究所を強化する」と強調した。
2021年3月期決算見通しは、算定が困難として開示を見送った
新型コロナ感染症の影響による主要な生産拠点の稼働状況については、中国の四輪車工場が4月中に通常操業に戻ったのに続き、米国工場も5月11日から操業を順次、再開。一方で、インドネシアやマレーシア、インドのアジア地域の工場、メキシコ、英国の工場などは依然、休止中。倉石誠司副社長は現状「四輪車で約7割、二輪車で約5割の稼働状況だ」と説明した。
2020年3月期の連結業績は、売上収益が14兆9310億円で前期比6・0%減、営業利益が6336億円で同12・8%減、当期純利益が4557億円で同25・5%減の減収減益となった。四輪事業の売上高営業利益率は1・5%、二輪事業は13・9%だ。
新型コロナ感染症拡大がグローバルに広がった第4四半期の3か月ベースでみると、売上収益は3兆4580億円で前年同期比14・6%減となり、営業損益が56億円、当期純損益が295億円それぞれの赤字となった。
二輪事業は3か月ベースでも13・4%の売上高営業利益率を達成したが、四輪事業はマイナス3・2%となった。ただし、為替や新型コロナ感染症拡大などの一過性の問題を除くと、2019年度は実質1008億円の増益という。
2019年度のグループ販売台数は四輪車が479万台で前年度比10%減、二輪車が1千934万台で同4・4%減となった。
四輪車に収益改善は、グローバル生産体制の見直しで実現
主要市場の四輪車販売をみると、日本は新型車の部品供給問題なども響き68万9千台で同8%減。米国は153万7千台で同4・6%減。中国は新工場が稼働したこともあり、144万1千台で同1・7%減にとどまった。
二輪車もアジア市場で苦戦。最大市場のインドでの景気停滞、失業率の悪化に加え、新型コロナ感染症の拡大影響などにより、インド、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、パキスタンの6か国の合計が1515万5千台と同5%減となった。
2020年度の見通しについては、現状、市場ごとの販売台数の算出が困難とし、開示を見送り、算定が可能になった段階で公表する予定。
足元の動向については、中国は4月の四輪車販売が約9割のレベルに戻ったとした一方で、北米は約45%レベルにとどまるなど地域差が大きいという。
先行きについても、中国はナンバープレート規制を緩めるなどの販売促進策効果もあり、市場活性化の動きが出ているが、米国はホンダが強い東海岸で感染症の影響大きく、回復が少し遅れる懸念があると見ている。