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2023年10月5日【新型車】

ホンダ、新型「N-BOX」を牽引役に国内販売70万台目指す

山田清志

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写真左から、総合地域本部日本統括部の高倉記行部長、開発責任者の諫山博之氏

 

ホンダは10月5日、新型軽自動車「N-BOX」の発表取材会を開催し、6日から発売すると発表した。3代目となるN-BOXは6年ぶりの全面改良で、コネクティッド機能を同社の軽自動車として初めて採用したほか、ホンダセンシングをはじめとした運転支援機能を充実させた。価格は164万8900円から236万2800円で、販売目標は月間1万5000台。このN-BOXを牽引役に国内で年間70万台の安定販売を目論む。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

総合力の高さをさらに引き上げた

 

「N-BOXはパッケージ、動力性能、デザイン、安全性、ブランド力、乗り心地、静粛性といったすべての項目において、軽スーパーハイトワゴンの平均満足度を上回っている。これまでお客さまから好評をいただいているすべての項目で、新型N-BOXでも十分に満足いただけるべく、ホンダコネクトの採用や、現行モデルのパワートレインを継承しつつ、制御領域を進化させるなどしている。これらによって、さらに総合力の高さを引き上げた」

 

 

ホンダの日本事業を統括する総合地域本部日本統括部の高倉記行部長はこう話し、店頭公開などで大変好評で、大きな手応えを感じているという。

 

N-BOXは2011年に初代が発売されて以降、販売が好調で累計販売台数は240万台以上を誇る。ちなみに初代が114万7000台、2代目が132万1000台だ。今国内で最も売れているクルマで、そのシリーズの22年の販売台数は20万台以上で、2年連続で新車販売台数第1位となっている。軽四輪車販売台数では8年連続でナンバーワンだ。

 

「これまでの初代、2代目で培ってきた非常に強い競争力のところを今回さらに進化させているので、われわれとしてはしっかりナンバーワンを獲っていけるのではないかと自信を持っている」と高倉部長は強調する。

 

N-BOX

 

グランドコンセプトは「HAPPY Rhythm BOX」で、私も、家族も、日本も、ハッピーになれる「幸せ生活リズム」をつくる、と定め、もっと楽しくをキーワードに開発を進めたそうだ。「最後までデザインや技術の進化を詰め込み、お客さまがいつでもどこまでも行きたくなるようなクルマを目指した」と開発責任者の諫山博之氏。

 

新型N-BOXの主な特長は次の通りだ。先代モデルの特長である、軽乗用車最大級の室内空間や高いアイポイントはそのままに見通したよく運転しやすい視界を実現。ステアリングホールの内側で視認するインホイールメーターを採用し、ダッシュボードをフラット化することで開放的な視界を確保して、運転車が車幅や車両の動きを把握しやすくした。

 

 

窓ガラスを水平基調で連続させ、姿勢や視線の乱れを少なくするなど、乗り物酔いをしづらくする工夫を織り込んだ。左側のフロントピラーの内側に設置していたサイドアンダーミラーをドアミラーに移設。フロントピラーをすっきりさせて左前方の視界を向上させ、同時に後退駐車時の安心感も向上させた。

 

パワートレインを細部にまで見直す

 

エクステリアは、シンプルな造形美を基本に、身の回りにある家電製品にも共通する丸穴デザインを採用することで身近さを表現。暮らしに寄り添うイメージを目指したフロントグリルや、人の瞳らしさを感じられる造形のヘッドライトを使用し、シンプルと親しみやすさを表現した。

 

インテリアはグレージュを基調とした明るいカラーを採用し、ぬくもりのあるコルクのような質感のインパネトレーなどと合わせることで、自宅のリビングのような室内空間に仕上げた。

 

一方、N-BOXカスタムのエクステリアは、立体感のある緻密な造形のフロントグリルや、布団と全幅いっぱいに広がる横一文字ライト、ホンダ初となるダイレクトプロジェクション式LEDヘッドライトを採用した。また、クリアレンズのフルLEDリアコンビネーションランプや、ロー&ワイドな見え方と空力性能を考慮した専用のエアロデザインにより、品格のある佇まいと性能の高さを表現した。

 

N-BOXカスタム

 

インテリアはブラックを基調とするとともに、高級感のある大理石の質感を再現したインパネトレーを採用するなど、上質で精悍な室内空間に仕上げた。

 

また、ママチャリを後部ドアから楽に荷室に積めるように、低床にして開口部を広くし、乗せた自転車のスタンドを安定させるためにフロアボードも工夫した。

 

パワートレインは力強い走りと優れた燃費性能を両立した先代モデルのものから継承。吸気バルブの制御にVTECを採用した自然吸気エンジンと、排気圧をきめ細かく調整できる電動ウェイストゲートをターボエンジンの2種類を設定し、それぞれ細部まで制御を見直すことで上質で扱いやすい特性を実現した。

 

CVTは変速制御を隅々まで見直し、これまで以上に雑味のない上質な走りを達成した。またアイドリングストップ領域の拡大により、前向き駐車時に停止から駐車にシフトチェンジした場合、エンジンはかからず静かに駐車することができる。

 

高速道路での快適性も強化

 

さらに、新世代コネクティッド技術を搭載した車載通信モジュール「ホンダコネクト」をホンダの軽自動車に初めて採用。スマートフォンからクルマのエアコンを操作したり、クルマの位置を確認することも可能になった。また、スマートフォンでドアロック解除ができる「ホンダ デジタルキー」に、パワースライドドアの操作もできるようにした。

 

安全性については、特に側面衝突への対応を強化したそうだ。先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」についても、2代目と同様に全グレード標準装備とした。「新型N-BOXでは、電子制御を高度化することで。市街地から高速道路までさまざまなシーンにおいて、運転初心者の方から高齢者の方までドライバーの運転をサポートする」と諫山氏は話し、高速道路での快適性も強化したという。

 

「軽乗用車は日本の道路事情に適した、生活になくてはならないクルマ。ホンダは拡大する軽スーパーハイトワゴン市場において30%以上となる高いシェアを維持している。新型N-BOXを牽引役に国内で70万台の安定販売を実現したい」と高倉部長。

 

ホンダの国内販売は2018年度に74.9万台を記録したものの、その後はコロナ禍もあって販売台数を落とし、2022年度は55万台だった。23年度も上期は供給面での制約があり、思うように生産できなかったが、下期は供給の改善が進んでいるという。果たして高倉部長の目論み通り、N-BOXが牽引役となって70万台を達成できるか要注目だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。