写真左から、総合地域本部日本統括部の高倉記行部長、開発責任者の諫山博之氏
ホンダは10月5日、新型軽自動車「N-BOX」の発表取材会を開催し、6日から発売すると発表した。3代目となるN-BOXは6年ぶりの全面改良で、コネクティッド機能を同社の軽自動車として初めて採用したほか、ホンダセンシングをはじめとした運転支援機能を充実させた。価格は164万8900円から236万2800円で、販売目標は月間1万5000台。このN-BOXを牽引役に国内で年間70万台の安定販売を目論む。(経済ジャーナリスト・山田清志)
総合力の高さをさらに引き上げた
「N-BOXはパッケージ、動力性能、デザイン、安全性、ブランド力、乗り心地、静粛性といったすべての項目において、軽スーパーハイトワゴンの平均満足度を上回っている。これまでお客さまから好評をいただいているすべての項目で、新型N-BOXでも十分に満足いただけるべく、ホンダコネクトの採用や、現行モデルのパワートレインを継承しつつ、制御領域を進化させるなどしている。これらによって、さらに総合力の高さを引き上げた」
ホンダの日本事業を統括する総合地域本部日本統括部の高倉記行部長はこう話し、店頭公開などで大変好評で、大きな手応えを感じているという。
N-BOXは2011年に初代が発売されて以降、販売が好調で累計販売台数は240万台以上を誇る。ちなみに初代が114万7000台、2代目が132万1000台だ。今国内で最も売れているクルマで、そのシリーズの22年の販売台数は20万台以上で、2年連続で新車販売台数第1位となっている。軽四輪車販売台数では8年連続でナンバーワンだ。
「これまでの初代、2代目で培ってきた非常に強い競争力のところを今回さらに進化させているので、われわれとしてはしっかりナンバーワンを獲っていけるのではないかと自信を持っている」と高倉部長は強調する。
N-BOX
グランドコンセプトは「HAPPY Rhythm BOX」で、私も、家族も、日本も、ハッピーになれる「幸せ生活リズム」をつくる、と定め、もっと楽しくをキーワードに開発を進めたそうだ。「最後までデザインや技術の進化を詰め込み、お客さまがいつでもどこまでも行きたくなるようなクルマを目指した」と開発責任者の諫山博之氏。
新型N-BOXの主な特長は次の通りだ。先代モデルの特長である、軽乗用車最大級の室内空間や高いアイポイントはそのままに見通したよく運転しやすい視界を実現。ステアリングホールの内側で視認するインホイールメーターを採用し、ダッシュボードをフラット化することで開放的な視界を確保して、運転車が車幅や車両の動きを把握しやすくした。
窓ガラスを水平基調で連続させ、姿勢や視線の乱れを少なくするなど、乗り物酔いをしづらくする工夫を織り込んだ。左側のフロントピラーの内側に設置していたサイドアンダーミラーをドアミラーに移設。フロントピラーをすっきりさせて左前方の視界を向上させ、同時に後退駐車時の安心感も向上させた。
パワートレインを細部にまで見直す
エクステリアは、シンプルな造形美を基本に、身の回りにある家電製品にも共通する丸穴デザインを採用することで身近さを表現。暮らしに寄り添うイメージを目指したフロントグリルや、人の瞳らしさを感じられる造形のヘッドライトを使用し、シンプルと親しみやすさを表現した。
インテリアはグレージュを基調とした明るいカラーを採用し、ぬくもりのあるコルクのような質感のインパネトレーなどと合わせることで、自宅のリビングのような室内空間に仕上げた。
一方、N-BOXカスタムのエクステリアは、立体感のある緻密な造形のフロントグリルや、布団と全幅いっぱいに広がる横一文字ライト、ホンダ初となるダイレクトプロジェクション式LEDヘッドライトを採用した。また、クリアレンズのフルLEDリアコンビネーションランプや、ロー&ワイドな見え方と空力性能を考慮した専用のエアロデザインにより、品格のある佇まいと性能の高さを表現した。
N-BOXカスタム
インテリアはブラックを基調とするとともに、高級感のある大理石の質感を再現したインパネトレーを採用するなど、上質で精悍な室内空間に仕上げた。
また、ママチャリを後部ドアから楽に荷室に積めるように、低床にして開口部を広くし、乗せた自転車のスタンドを安定させるためにフロアボードも工夫した。
パワートレインは力強い走りと優れた燃費性能を両立した先代モデルのものから継承。吸気バルブの制御にVTECを採用した自然吸気エンジンと、排気圧をきめ細かく調整できる電動ウェイストゲートをターボエンジンの2種類を設定し、それぞれ細部まで制御を見直すことで上質で扱いやすい特性を実現した。
CVTは変速制御を隅々まで見直し、これまで以上に雑味のない上質な走りを達成した。またアイドリングストップ領域の拡大により、前向き駐車時に停止から駐車にシフトチェンジした場合、エンジンはかからず静かに駐車することができる。
高速道路での快適性も強化
さらに、新世代コネクティッド技術を搭載した車載通信モジュール「ホンダコネクト」をホンダの軽自動車に初めて採用。スマートフォンからクルマのエアコンを操作したり、クルマの位置を確認することも可能になった。また、スマートフォンでドアロック解除ができる「ホンダ デジタルキー」に、パワースライドドアの操作もできるようにした。
安全性については、特に側面衝突への対応を強化したそうだ。先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」についても、2代目と同様に全グレード標準装備とした。「新型N-BOXでは、電子制御を高度化することで。市街地から高速道路までさまざまなシーンにおいて、運転初心者の方から高齢者の方までドライバーの運転をサポートする」と諫山氏は話し、高速道路での快適性も強化したという。
「軽乗用車は日本の道路事情に適した、生活になくてはならないクルマ。ホンダは拡大する軽スーパーハイトワゴン市場において30%以上となる高いシェアを維持している。新型N-BOXを牽引役に国内で70万台の安定販売を実現したい」と高倉部長。
ホンダの国内販売は2018年度に74.9万台を記録したものの、その後はコロナ禍もあって販売台数を落とし、2022年度は55万台だった。23年度も上期は供給面での制約があり、思うように生産できなかったが、下期は供給の改善が進んでいるという。果たして高倉部長の目論み通り、N-BOXが牽引役となって70万台を達成できるか要注目だ。