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2020年11月11日【CASE】

ホンダ、自動運転レベル3の型式指定を国交省から取得

坂上 賢治

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 本田技研工業(本社:東京都港区、社長:八郷隆弘、以下ホンダ)は11月11日、予てより国土交通省に対して申請していたレベル3の自動運転機能を備えた車両の型式指定を取得した。(坂上 賢治)

 

この結果、申請対象車だったレジェンド(LEGEND)が、搭載予定の自動運転システムとして謳うトラフィック・ジャム・パイロット(Traffic Jam Pilot)を備え、世界初のレベル3型式指定車となった。なお同レジェンドは本年度内の発売が予定されている。

 

 ちなみに自動運転の定義には、現段階で5段階の運転レベルが設けられている。その最上位にあたるレベル5は、運転に際して〝人間が一切関与しない自動運転〟を指し、これが自動運転機能としては究極かつ最終的な技術目標となっている。そしてこの下に、特定の走行条件下でのみ完全自動運転が許されるレベル4が存在する。

 

 

 今回型式認定が与えられたレベル3は、レベル4よりもさらに走行条件が限られた走行下で、運転者に代わってステアリング操作や加・減速などを車載システムに任せることができるもの。またこの際、運転者は周囲への注意義務について一定程度軽減される。

 

但し車両に与えられた機能や性能が充分ではなくなり、車載システムが安全走行を担えなくなった際は、運転者が直ちにハンドル等の手動運転装置を握って運転を再開させることが求められる。

 

つまり突然、〝人が積極的に運転操作に関与しなければならない場面に遭遇する〟ということだ。これ以下のレベル2やレベル1は、運転そのものを車両に任せることが許されない単なる運転サポート機能に過ぎない。

 

 型式指定されたレジェンドに許されている自動走行の条件は〝高速道路が渋滞している〟か、または〝渋滞に近い状態〟であり、〝走行速度が50キロ以下〟であることなど、複数要件が備わるケースでのみ。

 

同条件下で車載システムは、前走車や併走車、後続の追走車両を含め周辺360度の交通環境を常時監視。運転者の代わりに周囲の状況を把握しつつ、車線内に於いて車両を制御するなど、限定下とは言え要求される自動運転要素が増えることになる。

 

 

それゆえ車両に求められる技術水準は、これまでのレベル2とは全く異なる。しかしそんなレベル3であっても、先の通り不測の事態が起きた際には車載機能を過信することなく、運転者が速やかに運転操作を代われるよう常に先へ先へと見越して、手動運転に備えておく必要がある。

 

 今年、レベル3の車載システム車が登場したことで、以降の完全自動運転化を目指す流れがより明確になった。今後、同レベルの自動運転機能を精力的に開発しているトヨタ自動車や日産自動車など、相次いでライバル車が登場してくるのも時間の問題だ。

 

そうなると、さらに大きく自動運転車の絶対性能が飛躍的に高まっていった時点で、万が一の事故が発生してしまった際、法律的に自動運転車が起こした事故をどう扱うのか。

それ以前にトロッコ問題(功利主義と義務論の対立を扱った問題)など車載システムの判断を道義的にどう解釈していくのか、技術レベルの進展に先駆け、社会的かつ倫理的な面で、我々人類が納得できるまで議論が尽くされる必要がある。

 

 

 一方、国土交通省では、「自動車技術総合機構交通安全環境研究所に於ける保安基準適合性の審査を踏まえ、世界で初めての型式指定を行いました。自動運転車については交通事故の削減、高齢者等の移動手段の確保、物流分野での生産性向上等、我が国が抱える様々な社会課題の解決に大きな役割を果たすことが期待されています。

 

そのため自動運転に係る政府全体の戦略である〝官民ITS構想・ロードマップ」(ITS総合戦略本部決定)〟に於いて市場化・サービス化に係るシナリオと目標を掲げ、国土交通省を含め官民一体となって早期実現に向け取り組んでおります。

 

同ロードマップで高速道路の自動運転車(レベル3)の市場化目標時期が2020年を目途とされていることを踏まえ、国土交通省では、昨年5月の道路運送車両法の一部改正に基づき今年3月、世界に先駆けて自動運転車の保安基準を策定するなど、早期導入に向け制度整備を進めてきました。

 

国土交通省としては引き続き、自動走行分野で世界をリードし、様々な車社会の課題解決に大きく寄与する自動運転の一層の実用化と普及に取り組んでまいります」と話している。

 

写真は現行型LEGEND

 

 なおこれに先立ち、弊誌も既に報じている通り東京海上日動火災保険は、レベル3以上の自動運転中に発生した事故で自動車保険の保険金を支払った場合、更新契約の保険料負担が増えない取扱いとすることを発表している。

 

この取扱いは2021 年4月以降に始期を迎える同社の全てのノンフリート自動車保険を対象に追加の保険料負担なく適用される見込みだ。こうした自動運転中の全ての事故を対象とした商品導入は業界初の試みとなっている。最後に車両価格について、自動運転車のアクシデント発生時の対応も踏まえて販売価格がどのレベルで落ち着くのか。この面では自動車メーカーのリスク判断の解釈を勘案し一定の回答が出るものと考えられる。

 

上記映像は3年前の2017年、ホンダが高度自動運転システムの新目標を発表した時のもの。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。