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2021年7月2日【ESG】

日野の小木曾聡社長、トヨタグループと商用車分野の連携加速

松下次男

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日野自動車・ロゴ

日野自動車は7月2日、小木曽聡社長の就任会見をオンラインで開いた。そこで小木曽社長は、「お客様、社会に役立つ取り組みをすべての起点にしたい」と述べ、大変革期に当たってもユーザー目線の重要性を訴えた。具体的な取り組みでは、グループのダイハツ、トヨタ車体と商用車連携を深化させる考えを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下 次男)

 

小木曽氏は6月24日付で社長に就任。トヨタ自動車で小型車やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などの開発に携わったあと、部品メーカーのトップ、トヨタのCVカンパニー・プレジデントなどを経て、今年2月から日野自動車顧問となっていた。

 

冒頭、小木曾社長は100年に一度の一度のCASE(ケース)という大変革期と言われている中で、先人からの「心のこもったタスキを引き継ぐことの重さをひしひしと感じている」との心情を吐露したあと、二つの基本となる経営指針を示した。

 

 

一つが「お客様、社会に役立つということを起点」した取り組み。日野自動車が掲げる中期計画「チャレンジ2025」が目指している活動方針やこれからの新サービス、新ビジネスのすべてでこの視点の重要性を訴えた。電動化、コネクテッドなどのケースによる変革が進む中で、「(ユーザー視点を考えずに)メーカーの技術を振りかざしても、うまくいかない」とも強調した。

 

カーボンニュートラルについても、商用車は自動車部門のCO2(二酸化炭素)排出量の約4割を占めていることから「電動化の取り組みは待ったなし」とした半面で、ユーザーや店舗、企業などの「お役に立てなければ、決して普及しない」との見方を示した。
 エネルギー事情も違うことから「地域のエネルギー施策に合わせて方針を決める」ことが重要とした。

 

 

二つ目に掲げたのが、“人づくり”。変革のときこそ「人づくり、変革のスピードが大切である」と強調。そのためには、日々変化する現実に謙虚に向き合い、「原理現物、原理原則に沿って意思決定し、行動するチーム作り、企業体質が重要」と述べた。小木曽社長自身も「現場近くで、この変革の時に当たりたい」と表明した。

 

懇談会方式で行った質疑では、トヨタグループの商用車部門の連携強化に言及した。「あまり公にはなっていないが、トヨタのCVカンパニー・プレジデントだった時から、ダイハツの軽商用車を含めて、一括、連携したビジネス展開を行う議論を始めている」ことを明らかにした。

 

ダイハツの軽商用車、トヨタ車体の商用ワゴン車などと日野のトラック事業を、ケース、MaaSの到来に合わせて、深化、連携させ、人流、物流の最適化に寄与することを目指すものだ。

 

 

今後、ソフトウェアの重要性が増すことから、グループの知見を結集させる方針。ただ、個々の商品については「個性を持たせせればよい」とも述べた。

 

電動化、コネクテッド、自動運転などの先進分野では、中国のBYD(比亜迪)、独VWの商用子会社トレイトン、イスラエルのREEとの協業、さらに日本のいすゞともトヨタを介在して新会社を設立するなど企業間連携が相次ぐ。

 

これについてケース時代に「個社で対応していいてはスピードが足りない。加速が必要だ」とテーマによっては更なる連携、強化があり得るとした一方で、「最終的な(ユーザーとの)接点部分ではメーカー間で競争することも重要」と話した。

 

 

トヨタ時代も担当したFCV分野については「物流用途のFCトラックはインフラ配置を主要な幹線に置けばよく、FCVとの相性が良い」とし、欧米で商用車用のFCV開発が相次いでいることも「追い風」とした。半面で、「大きなクルマにFCスタックなどを搭載する技術」などが課題と述べた。

 

大型トラックの電動化については「重量、質量、さらに走行距離をみても、乗用車とは一桁違う。モーター、インバーター、バッテリーをさらに進化させる必要がある」との見解を示した。

 

小型トラックのEVについては、「日野デュトロZ(ズィー)EV」を開発、発表し、2022年初夏に市場投入する予定だが、物流の「ラストワンマイルに期待できるだろう」と見ている。
 国内市場については「これまでのように大きくは伸びないだろう」としながらも、「まだまだお客様の要望に対応できていないところがある。このところを強化したい」と述べた。

 

 

小木曽聡(おぎそ・さとし)氏 東京工業大学工学部機械工学科卒後、1983年4月にトヨタ自動車に入社。初代の「プリウス」などの開発担当、PHV、FCVの開発担当を経て、2013年常務役員。2015年アドヴィックス社長。2018年トヨタ専務役員・CVカンパニー・プレジデント。 2021年2月日野自動車顧問、同6月社長就任。趣味は、健康のために始めた「ランニング」。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。