日野自動車は7月29日、期初未定とした2021年3月期連結業績見通しを明らかにした。売上高は前期比22.3%減の1兆4100億円、営業利益を同96.4%減の20億円とし、強靭な企業体質づくりの推進と「黒字化する覚悟」(山根健人・専務役員)を示した。ただ経常利益以下の損益については、なお不透明な経営環境にあることから公表を見送った。(佃モビリティ総研・間宮潔)
今期の販売予想は、日野ブランドで14万2500台(前期比21%減)、受注生産するトヨタブランドで8万8800台(同36.3%減)とし、大幅な落ち込みを織り込んだ。
期初の予想に対して、国内販売は5万9000台と据え置いたが、海外販売は回復のスピードが落ちていることから期初の9万1000台から7500台圧縮する8万3500台に下方修正した。
その結果、グローバル販売台数は期初予想の15万台から14万2500台に圧縮、トヨタ分も期初の見通しより減少幅を拡大させた。
日野は販売ボリュームの減少だけでなく、流通段階での在庫調整をすすめ、次なる需要回復に備える。このため今期の生産台数は日野車で12万6400台(同26.2%減)、トヨタ車8万8800台(同39.1%減)を見込んでいる。
29日の2021年3月期第1四半期決算発表会(電話会議)では、中根専務役員に加えて、佐藤真一CFOが出席、4~6月期の業績を明らかにした。
それによると、売上高は3004億円(前年同期比32.7%減)とし、営業利益は前年の136億円から一気に赤字にとなるマイナス106億円、経常利益も118億円の赤字とした。また、当期純利益も前年の66億円から81億円の赤字になった。第1四半期としては2009年のリーマンショック以来の赤字だ。
同第1四半期でのグローバル販売台数は、2万7924台(前年同期比33.7%減)。うち国内販売は1万2516台で同15%減としたが、海外販売がアジアを中心に大きく落ち込み、同43.8%減の1万5408台となった。
地域別では、コロナ渦による影響が想定以上に深刻だったインドネシアで同73.2%減の1498台だった。一方、タイは同31.2%減の2115台となり、「6月単月では1000台に迫るまで回復している」とした。先進国の米国では大都市でのロックダウンの影響もあり、同42.4%減の1991台と停滞している。
同社は、こうした厳しい経営環境の中で原価低減や働き方改革によって、販売面の収益悪化、279億円の赤字を圧縮し、最終81億円の赤字に抑えた。
なお通期では、1000億円の赤字(営業利益段階)が見込んでいる。このうち国内販売で220億円、海外販売で500億円、トヨタ事業で170億円、その他で110億円の赤字を想定しているが、これを固定費の徹底的な圧縮、キメの細かい原価改善努力を推進することによって吸収する方針だ。
中根専務役員は、「来年以降も厳しい環境は続くが、ピンチをチャンスに変えて、チャレンジ2025で目指す姿の実現に向けて取り組んでいく」と語った。
また「市場の変化をきめ細かくとらえ、販売オプチュニティをしっかりとり込んでいく」とも述べた。