2021年3月期業績予想は見送ったが、収益目線としては売上高1兆に
日野自動車が5月11日発表した2020年3月期連結決算(日本基準、2019年4月~2020年3月)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うグローバル販売台数の減少が響き減収減益となった。(佃モビリティ総研・松下次男)
2021年3月期については、不確定要素が多いとして業績予想を見送ったが、下義生社長兼CEO(最高経営責任者)は「売上高1兆5000億円、営業利益100億円」を収益目線に取り組んでいく考えを示した。
また、新型コロナウイルスに関する取り組みとして日野本社を原則、在宅勤務(テレワークを6000人規模で実施)にしたほか、工場でも可能な職場での在宅勤務や時差出勤を実現。さらにマスクを6月から内製化(10万枚/日)し、近隣自治体や医療機関に寄付する。このほか、フェイスシールドを生産し、近隣の医療機関へ寄付するほか、患者搬送用バスの運転席保護シールドの試作などを手掛ける。
2020年3月期の連結業績は売上高が1兆8156億円で前年同期比8・4%減、営業利益が549億円で同36・7%減、当期純利益が315億円で同42・7%減となった。グローバル販売台数は日本、海外とも減少し、18万302台と同11・2%減の実績。内訳は、日本が6万6806台で同6・6%減、海外が11万3496台で同13・8%減だ。
新型コロナウイルス感染拡大が響く。国内外で販売台数が減少し減収減益へ
海外の主要市場をみると、インドネシアは2万7921台で同29・3%減。規制などによる市場様子見に加え、新型コロナ感染拡大の影響が重なった。米国は新型コロナの爆発的な感染拡大前ということもあり、1万4068台とほぼ前期並みを確保。タイについては市場低迷に新型コロナの影響が加わり、1万1581台と同11・2%減となった。
日本の販売については、大中型が3万5914台で同3・1%減、小型が2万7784台で同9・7%減、バスが3108台で同15・8%減の実績。販売シェアは32・4%と前年度から3・1ポイント落としたものの、前年に次ぎ過去2番目の高さだ。
トヨタ向け車両、ユニット販売は、車両が13万9323台で同8・7%減、ユニットが76万6101ユニットで同7・3%減となった。
2020年度の見通しについては、日本はすでに新型コロナ感染拡大の影響が出始めているとし、トラックの販売減速を懸念。とくに第2四半期からの落ち込み幅拡大を予想し、年度内は影響が続くと見ている。バスも観光バスを中心に、年度を通じて大幅減を見込む。
海外市場についても、新型コロナの感染拡大の影響を受け、軒並み主要市場の苦戦を予想。とくに上期、大幅な落ち込みが避けられないとし、下期も低水準の推移を予想した。
2020年度のグローバル販売台数は19年度実績に比べ約3万台低い「15万台」の目標に
これらを背景に、下社長は2020年度のグローバル販売台数を19年度実績に比べ約3万台低い「15万台」の目標に設定するとの意向を示した。国内で5万9千台、海外で9万1千台の販売を目指す。
2020年度の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症の今後の拡大規模や収束の見通しが立っていないことから、現時点では未定として見送り、合理的な算定が可能になった段階で開示する予定。今回はあくまでも収益目線という形で下社長が2020年度の売上高、営業利益の見通しを示した。
しかも2020年度は厳しい環境下が避けられない。このため足元の販売減に対応し、グローバル規模での生産調整、在庫ミニマム化、稼働ロスの最小化に取り組むとともに、固定費の大幅圧縮、投資見直しなどを進める考え。
加えて、新型コロナ収束後を見据えた中長期的な観点からも変動に強い事業構造への転換を加速させるという。具体的には、トータルサポート強化やグローバル最適調達、人事制度改革、デジタル化推進・働き方改革、原価低減活動などを推進する。